ひとつの現実2
王宮の一室に住むリルはワインレッドの制服を着て部屋をあとにした。その肩にはウィルが乗っている。
リルは王宮に隣接する王立魔法研究院の繋がる転移装置の上に乗り装置に魔力を込める。
この転送装置には個々の魔力を認識して動く仕掛けなので登録されている人間しか動かすことはできない。リル自身に肩書きはないが、その貴重な能力故この王宮と王立魔法研究院を自由に行き来することを許されていた。
今リルが向かっているなは王立魔法研究院の高等研究員である父とその助手である母のもとである。
王立魔法研究院というのはこの王都にある世界最大の魔法研究施設であり、そこには知識だけでなく魔法の腕も一流の人材が揃っている。魔法学院ではここの研究員が講師として招かれることが非常に多い。
リルの父もその一人であり、今日も講師として魔法学院に出向くことになっている。
リルはそんな父と一緒に登校する為に研究室に向かっていた。
目的地に近づくほどに心臓がバクバクと音を立てる。思考が多少冷静なだけに、エミリアやフレイルたちと会った時とはまた違い、会いたいと思いに反し緊張に手足が震えうまく進めない。
『大丈夫ですか?』
ふと声をかけてきたのは肩にとまっていたウィルだった。はっとしたリルは弱々しく笑った。
「大丈夫よ。ちょっとぼんやりしていただけだから」
『ではあと45分です』
心配してくれたと思いきや次に出たのはそんな言葉である。リルはなんだかおかしくなって声に出して笑った。
「ふふ、あなたは相変わらずね」
そんなリルに首をかしげるウィルを指先で撫ぜる。そして再び歩きだす。目的地までは後数メートル。心臓はまだ強く脈打つが。それでも、先程までの苦しさは少し和らいでいだ。




