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日常の一歩横3

「ごめんなさい。叔母は寝てるみたいで。これどうぞ」


「いや、器取りに来ただけだし。昼間出前に来たとき散々絡んできたから寝かしといていいよ」


 柚姫が謝りながら器を渡すと、吉村はそう言って小さく息を吐いた。どうやら利保はしつこかったらしい。

 家に帰ってきて玄関を開けた柚姫はまず利保を呼んだ。だが、帰ってくる声がなかったので吉村を待たせてリビングに向かうとソファに寝そべる利保を見つけた。一応ゆすって起こしてみたものの、まるで起きる気配がなかったので台所に置きっぱなしの器だけ渡すことにしたのである。

 おかもちの中に器を入れる吉村を見ながら柚姫はふと疑問に思い問いかけた。


「そういえば今の時間まだ営業時間ですよね?」


「ん、ああ今日は早仕舞いなんだ。明日、店を貸切にするから夕方から準備するらしいから」


「らしい?」


 吉村の微妙な言い回しに柚姫は首をかしげる。


「何か練習をするとか言ってたから。多分、明日何か余興でもするんだと思うよ。あ、これ神崎には秘密にしておいて」


「ええと、なぜですか?」


 またして不可解な言葉に柚姫はまた問いかける。すると吉村が少し考えるような仕草をして今度は柚姫に問いかけた。


「神崎から聞いてない?明日店を貸切りにする客は神崎の高校の同級生達なんだよ。なんでも遅くなった結婚祝いをするそうでね」


「あ、だから内緒なんですね。分かりました。言いません」


 どうやら利保は友達とは連絡を取っていたらしい。連絡一つなかったのは身内としては少し寂しいが、吉村にそれを問うことに意味はないので少し笑ってそう答えた。すると吉村も微かに笑みを浮かべた。表情の動きの少なさについては人のことを言えない柚姫であるが、今まで殆ど無表情だっただけに印象的である。


「そうしてくれると助かるよ。じゃあこれで」


「ありがとうございました」


 吉村はおかもちを持ち上げてその場を去っていった。

 そして、残された柚姫は静かに玄関の扉を締めた。


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