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日常の一歩横2

「妹じゃなくて姪だったのか」


 いくらか会話を交わした後、納得した様子でとなりを歩く吉村に柚姫も頷く。向かっている先はもちろん柚姫の家である。


「年があまりに近いのでよく姉妹と勘違いされるんです。でも、感覚的にはそう変わらないと思います」


「そうか。小学校の頃一緒にいるのを度か見かけたが、神崎は身内と言っていたからてっきり姉妹だと思っていたよ」


 神崎とは当然利保のことである。

 柚姫と利保の歳は近いが住んでいる区域が違ったので小学校は違うところに通っていた。故に柚姫と吉村に直接の面識はない。同じ学校であれば、苗字が違うので姉妹でないとわかるが、本人が言わない限り誰も叔母と姪などとは思わないだろう。

 ちなみに利保のことをおば様と呼び出したのは柚姫が小学校高学年の時で、きっかけはとある少女漫画にはまった利保がそう呼んでと言ったことからである。

 柚姫も読まされたがそれに出てくる登場人物“おば様”は大変爽快で豪胆な性格でどこか利保に似ていたように思う。


「叔母は私のことは何も言っていなかったんですか?」


 特の他意なく柚姫はそう問う。

 利保は吉村の事をかなり良く知っていることは彼女の話でよくわかっている。だからその反対に自身のことも吉村に話しているのだろうと思ったからだ。

 子どものころの利保は暇さえあれば相川家に入り浸り柚姫とばかり遊んでいたので話題に上りやすいはずである。すると、吉村は肩をすくめた。


「俺が言うのもなんだが、君の叔母さんはおしゃべりだけど話す内容と人間は選んでるからね」


 吉村の返答に柚姫は再び首をかしげる。柚姫も人のことを言えないが、吉村の表情に乏しいので表情から言葉の意味を察することはできない。ただ、言い方には利保に対する気やすさが窺える。


「えっと、つまり?」


「俺には話したくなかったってことだよ」


 ますますよく分からないことを言う吉村に柚姫はまた問う。


「まぁ、要は特に聞いていないってことだ。着いたよ。どうぞ」


 柚姫の戸惑いに対して特の気にした様子もなくそう言って門を開けた。気づかないうちに自宅の門の前に来ていたらしい。お礼を言って開けてもらった門の内側に入ったところで柚姫ははっと思い立ち吉村を振り返った。


「そうだ。あのさっき倒れかけたことは叔母には言わないでもらえますか?」


「ん?ああさっきのこと。まぁ妊婦に心配させるのもなんだしね。いいよ。黙っとく。今度から気をつけな」


「ありがとうございます」


 吉村の返答にホッと息を吐いたものの、よく分からないわだかまりを残したまま玄関の扉を開くことになった。


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