夢と現の間5
眠るリルの体は懐かしい感覚に包まれる。
それは、この世界の大気であり大地でありそこに暮らす総てのものを形作っている力。魔力の粒子である。
その世界の名前はヒイル・エアリア。
地球のように丸い星などではなく、王の力によってその形を保つ巨大な箱庭のような世界である。そこには竜族と人族が二つの種族が住んでいる。
その世界を支えるのは天王と地王であり、天はドラゴン、地は人の王がそれにあたる。
ここでの王は権力の行使者ではなく、巨大な魔力で世界を守る神に等しい存在である。
だが、神に等といってもやはり元は他と同じで寿命は存在する。ただ膨大な魔力の大きさが寿命に影響を及ぼすために他の数倍は長命であるが、断じて不老不死などではないし病気にもだってかかる。心臓や頭が潰れれば死ぬ。
王が死にその後を継ぐ者がいなければそれは世界の崩壊と同義であることはこの世界の共通の常識で、それを基盤に作られた社会は魔力至上主義である。
それを元に作られた国家法では魔力のない者は生産業を、魔力のあるものは王の守護、または魔力の研究をにない世界の安定を図るものとするということが定められている。
そして政を司っているのは大昔の王の子孫達であり、彼らも相応の魔力を持っている。
魔力のないまたは低いものは優遇されない社会であるが、この世界の成り立ち上、これに対して表立って異を唱える者はいない。というより法律をどうこうできる立場に、魔力のないものは立つことばできない仕組みになっている。
そんな仕組みに中で生きるリルの生まれはそう悪いものではなかった。魔力を持つ研究員の親の間に生まれ、一般的から照らし合わせてみれば優遇されるだけに値する魔力を持って生まれた。
基準値以上の魔力を持つ子ども魔法学校に入り、将来国家を担うための知識や技術を学ぶ。将来を選ぶのに選択肢はいくつかあるが、それでも大部分は能力値や適性検査によってほとんど決まってしまう。
けれどそれが当たり前であり、疑問を持つものなどは殆どいないだろう。
リルも本来であれば当たり前のようにそのレールに乗っていたはずだった。しかしそれは出来なかった。
その要因となるものはいくつかあった。
寿命の近い現地王。
病弱な次期地王エミリア。
リルの先天的に有する特殊な魔法能力。
それらといくつかの小さい要因をもとにリルは物心ついた頃からある使命を与えられた。
その使命というのがまさにエミリアの身代わりになって死ぬことだった。
懐かしく愛おしい、夢が現かわからない世界は再び目の前に姿を現した。
”柚姫”は眠る。魔力に包まれゆらゆらと。
再び目を覚ますその時まで。




