王様と侍女
「ねぇ、ちょっとお前さ、お茶淹れてきてくれない?」
「その書類の山が片付いてからなら構いませんよ」
「え、いや俺今すぐ飲みたいんだけど…」
「終わってからにして下さい。でないと私が宰相閣下に叱られます」
侍女はぴしゃりと言い放ち、泣き泣き書類の山を片付け始める王様を静かに眺めた。今年十八歳になる彼女が王宮で働き始めて六年が経つ。こうして王の近くで働けるのも、兄である宰相のおかげだった。
「なぁ、リリィ。せめて半分まで、」
「駄目です」
「……はい」
リリィはゆっくりとした動作でペンを動かす王を横目で見て、小さく息をつくとその場から離れた。そしてそれをいいことにペン回しを始めた彼のもとに、彼女はすぐに帰ってきた為に彼は慌ててサインを書く。それに気づいた彼女は大袈裟に溜息をついて、淹れてきた紅茶を机の隅へと置いた。
「お遊びになっている暇があったら、きちんとサインを終わらせて下さいね。毎日毎日大量に残った書類の後片付けをしているのは誰だと思っているんですか」
「仰るとおりです…」
「陛下はやればできるお方なんですから」
「…それ、若干俺のこと馬鹿にしてるよね?」
「若干ですけどね」
「……しょっぱい」
綺麗な笑みを見せたリリィに、彼は淹れたての紅茶を口にしたが、涙の味の方が上回ったようだった。リリィはくすくすと笑ってサインが終わった書類をまとめてケースに入れた。
「お前、本当気が利くよなぁ」
「侍女なら当然でしょう」
「…お前が王様だったら、良かったのになあ」
ぽつりと呟かれたその言葉に、リリィは動かしていた手を止めた。彼が王様に向いていないことは、兄より話を聞かされてきただけあって彼女も分かっていた。
「お人好しでちょっぴりお馬鹿さんでやる気のない精神年齢の幼い問題児で、指揮する能力もなければ鈍感で口下手でやっぱりちょっと頭が弱い馬鹿だ」。そう彼女の兄は語っていたが、やめた方がいいとは一度も口にしたことはなかったと思い出す。無論、彼女も六年間側で仕えてきた身だが、そう思ったことはなかった。
「自分を卑下するのは顔だけにして下さい」
「おまっ…人が気にしていることを!」
「…貴方は紛れもなくこの国の王なのですよ。私は王様にはなれませんよ」
「…うん」
「それから、私を絶望させるようなことだけは言わないで下さいね」
彼女は小さな微笑を浮かべて、さっと新しい書類を差し出した。それに「うげ」と顔を歪めた彼は渋々それを受け取ってサインを書いていく。そんな様子をリリィは微笑ましげに見つめていた。
初めて会った十二の頃を彼女は今でも思い出せた。兄に連れられてやってきた王宮の執務室、そこで五つしか違わない王に謁見した。緊張で震えていた自分に「寒いのか」と気遣ってくれたこと、今日からよろしく頼むぞと手を差し出されたこと、温かい笑みで迎えてくれたこと。リリィの目蓋の裏にはっきりと映し出せる。
彼にどういう感情を抱いているのか、リリィは分かっていた。それがいずれ自分を苦しめるということも。それでも側にいる限りは捨てきれない感情だった。
「陛下、シーザー陛下。レスターです」
「おー、入れ」
軽快なノックに答えた彼に、入ってきたのは宰相で彼女の兄、レスターだった。ちなみにシーザーはリリィとレスターが兄妹であるということを王宮内で唯一知らないということさえ分かっていない。それは彼等が此処では兄妹としてではなく、宰相と侍女という立場で接するということもある。
だがしかし、一介の侍女が宰相に向かって「腹黒閣下」などと面と向かって言って言いわけないのだが、それすら気づかない鈍感な王である。これには兄妹も呆れ返って改めて説明することすら面倒と投げやった。
リリィはいつも通り頭を下げて迎えれば、レスターはそれを一瞥して彼の前へと立つ。
「陛下、まだこのように書類を溜めておいでですか」
「だってサインだけとかつまんなくない?」
「つまらなくなどありません。その方がどんなに楽か陛下はお分かりでしょうか」
「だってお前達、俺にサイン以外の仕事させてくれないだろ」
「当たり前です。陛下が真面目に執務に取り組むわけがありません。三秒で投げ出すのを分かって我々もサインだけにおさめるよう対処しているのですよ。なのに貴方ときたら…」
「わ、わかってますよ…書けばいいんだろ書けば」
真っ向から否定されたシーザーはわなわなと肩を震わせてペンを握るが、その先は中々書類に滑ることはない。その様子に面と向かって大袈裟に溜息をついて、レスターは腕に抱えていた書類を彼の前にドスンと音を立てて置いた。
「いっ……これも、か?」
「当たり前でしょう。なに顔を歪めておられるのです。ああ、それとこれは今日中にサインをお願いしますね。あとが詰まっているんです」
「そっ…それを俺にやらせるのか」
「貴方の筆跡を真似できる人間がどこにいるというのですか。貴方以外いないでしょう。ああ、リリィ。今日はこれを書き終わるまで夕食はお預けにして下さい」
「承知致しました」
颯爽と身を翻して出ていくレスターにお辞儀するリリィを、交互に見やって顔を青くするシーザー。
「ちょっ、レスター、え、リリィもなに頭下げてんの!? 俺お前の主だよね!?」
「鬼宰相閣下に逆らうなど恐ろしい真似を出来る方がいるならお伺いしたいくらいです陛下」
「つかこれ、ええええぇぇぇえええっ!!」
「二時間で終わる量でしょう。なに悲鳴をあげてるんですか。さ、さっさと終わらせて下さいね」
机に顔を突っ伏して項垂れるシーザーを無理矢理叩き起こしたリリィは、鬼宰相閣下と見間違えるほど世にも恐ろしい笑みを浮かべていた。それにシーザーはひぃぃっと悲鳴を上げて急いで書面に取り掛かるが、やはり三分もしない内に飽きてしまい彼女は呆れと怒りを通り越して感動すら覚えてしまった。
「ああ、陛下。忘れていました」
音もなくひょっこりと戻ってきたレスターにシーザーは吃驚してぴしっと背筋を伸ばした。リリィも流石にそれには驚いたものの、苦笑を浮かべて様子を見守っていた。彼は懐から折り畳まれた書類を取り出すと彼の前へと差し出した。
「後宮にお招きする令嬢達のリストです」
「…は?」
阿呆面になったシーザーに、レスターは真面目に答えた。
「は?ではありません。お世継ぎの関係上、いつまでも後宮を空にしてはおけませんよ」
「いや、空って…。一人いるだろ、ほら、兄上の妃候補だった…えーと」
「クリスティーナ様です」
「そう、それ」
「ではクリスティーナ様をお妃様にするということでよろしいのですか?」
「えっ…や、俺にあの人は…ちょっと…眩しすぎて、釣り合わないじゃん」
頬を掻きつつぶつぶつと呟くシーザーに、レスターは益々呆れ返ってしまった。
シーザーは元より王になる人ではなかった。彼の上には兄が一人いたのだ。しかしその兄が落馬事故により体が不自由となった為に、彼が仕方なしに王の座に就く羽目になったのだ。
王としての教養は兄だけが身につけており、彼は生来のさぼり癖と逃げ足の速さから一切の教養を振り切っていた。だからこんなちゃらんぽらんになったのだ、とレスターは頭を抱える。
そして彼の兄の為に後宮入りした令嬢達は、クリスティーナ侯爵令嬢を除いてみな生家へと帰ってしまった。人望が厚く、またハンサムでルックスが良い兄に比べて、シーザーは先にも述べたような性格であり、ルックスも悪くはないのだ、悪くないのだが…うーんな顔なのだった。
そんな彼が国一の美女と名高いゴードン侯爵夫人の一人娘、クリスティーナを自分に釣り合わないと称するのも納得がいく。だが納得はいっても、いつまでも独身を貫かれては困るレスターにしてみれば誰でもいいから早く結婚しろ、と痺れを切らしていた。
ちらりと自身の妹へと視線をやれば彼女は平然と佇んでいる。しかしその内心が穏やかでないことをレスターは分かっていた。妹の初恋の相手がこんなちゃらんぽらんだということが気に食わず、何度も釘を刺してはいるものの効果は薄い。
出来るなら自分だって妹の恋を応援してやりたい。だが相手が相手で、性格があれだ。できれば妹が生活に困らない程度裕福で、家庭環境も整っていて幸せに暮らせる所に嫁がせてやりたいという親馬鹿ならぬ兄馬鹿な気持ちでいっぱいだった。そして困ったことにそんな思いに気づくことのない目の前の男が腹立たしかった、むしろ何度か殺意を抱いた。こんな男のどこが良いんだと尋ねたくらいだ。返ってきた言葉は「少し、兄様に似ていますよね」でそれには何も言うことが出来なかった。
とりあえず何でもいいから世継ぎの為に結婚しろ。あとちょっとは妹の気持ちに気づいてやれ。と思うレスターであったが、彼も公爵家の跡取りだというのに三十代になった今でも恋人の一つを作らずにいるので人のことを言えた義理ではないのだ。
「とりあえず目を通すだけお通し下さい。御正室でなくとも、側室の一人や二人なくては周囲から咎められます」
「わかったよ!」
「では、仕事も恙無く行って下さいね。手抜きなどしたら…分かっておりますね」
「あい、わかって、ます…」
ぷるぷると震えるシーザーにふんと鼻で笑ってレスターは退室する。静まり返った室内に「はあ」という重い溜息がやけに大きく聞こえた。リリィは横目で彼を見やり「仕事」と目で促した。しかし彼はそれに気づく様子もなく、名簿リストをぼうっと眺めていた。
「…なあ、リリィ」
「はい、なんでしょう」
「…やっぱ、イケメンムカつく…!」
「…そうですか」
ぎりぎりとリストの端を握って今にも破けそうな書類を見やり、リリィは淡々と相槌を打った。レスターの部類は完ぺきにイケメンだ。実の兄だと思えないくらい、彼女は彼と似ておらず特別美しい訳でもなければ悪い訳でもない。言うなれば悪くない顔立ちなのだ。国内三指のイケメンと云われる兄と比べてしまえばそれまでだ。
「なんなのあいつ本当腹立つ! 俺だって一応立場ってものは分かってますよ。ええ、わかってますー。なのにそんな急かさなくたっていいじゃん! なにがいけないの!?」
リリィはちくりとした痛みと同時に申し訳ない気持ちになった。自分が嫁ぎ遅れにならないよう早く諦めさせようとして、八つ当たり半分兄がシーザーへ急かしているのだと気づいているからだ。
「そうですね…まあ、とりあえず入れるだけ入れてしまえばいいのではありませんか」
「なんか投げやりだな」
「私の問題じゃありませんから」
「なんで俺の周りはこんなに冷たいの…」
はあああと深い溜息をついて頭を抱えるシーザーに、リリィは前で合わせていた掌の指先をきゅっと握った。
それから程無くして後宮に令嬢達が入り、別段荒れる様子もない話を侍女仲間から聞き、変わらない日々を送っていたリリィの耳に飛び込んできた嬉々とした速報は、彼女の心にナイフを突き立てたようなものだった。
「正室を迎えることになったんだ」
照れたように頭を掻いたシーザーに、リリィは壊れた何かに気づかぬふりをして、いつもと変わりない口調で言った。
「おめでとう御座います。お相手はどちら様で?」
「それがさ、クリスティーナ嬢」
「…それは」
「驚きだろ? 俺も吃驚した。まだあんまり話したことないしさ、それに兄上の妃候補だったから気が引けてんだけど…」
ちょっとなぁ、と話す内容とは裏腹に、声がとても嬉しそうに弾んでいることにリリィは更に心を痛めた。そうとは知らずシーザーは心配だとかどう思うだとか彼女に語っていく。
「挙式は早い方が良いだろうってみんな言うんだ。俺もそう思うけど、準備とか時間がかかるだろ? レスターの奴は異様なまでに急かすんだけどさ」
「…はい」
「あ、そうだ。あいつがお前の願いを叶えてやれって言ってたな」
「…え……?」
「今まで散々迷惑かけた分の詫びを今しなくていつするんですって言われたんだよ。まあ、一応俺もそうだなぁって思って……だから、まあ、さ…願いがあるなら言えよ」
そんなの、叶えられない。思わず口に出しそうになった言葉をリリィは飲み込んだ。今からでもいい、結婚を取りやめにしてなどと口に出せはしなかった。彼の嬉しそうな表情を見て、そんな残酷なことを言えるほど彼女は冷たい心の持ち主じゃない。だからといって代わりに自分をと言えるわけでもない。だが兄がくれた折角のチャンスを無駄にはできない。リリィは胸の内が締め付けられると渦巻く思いと葛藤して、急かすシーザーに漸く答えを出した。
「…やめさせて、ください」
「ん?」
「…辞職願を、聞き入れて貰いとう御座います」
「………はっ?」
思ってもみないリリィの願いごとに、シーザーは頬杖をついていた手から顎が滑り落ちた。どんな冗談だと笑い飛ばせればそれで良かった、だが彼女の表情を見て彼は戸惑ってしまった。今にも泣き出しそうな顔をしていたからだった。彼はそんな顔をする理由が分からず、困ったように彼女に質問した。
「な、なにかあったのか…? 虐められでもしたのか?」
「いいえ」
「じゃ…じゃあ、レスターの奴になんか言われたのか?」
「いいえ…」
「なら…なんで辞めたいんだよ」
困り果てた彼は眉尻を下げた。彼女はただ首を横に振るしかできず「お願いします」と俯いてか細い声で懇願した。そこまで言われては流石の彼も折れそうになるが、ここでなぜか心を鬼にした。
「駄目だ」
「…なぜですか」
「だって、その……なんてーか……お前の淹れる紅茶、美味いし」
「…し?」
「……し」
「………」
「とっ、とにかく! 駄目なもんは駄目!」
その言葉に彼女はぐっと唇を噛み締めて、熱くなった目頭から涙が零れないように堪えた。そんなことすら気づかない彼は黙りこくってしまった彼女に他の願いはないのかと尋ねた。
「給料上げろとか…休日増やせとか…あと、なんかあるだろ」
「…いいえ……」
「な、ないの…?」
涙声になっているリリィに気づいたシーザーは、ぎょっと目を剥いてあたふたし始めた。声だけでそれを判断できたリリィはぎゅっと指を強く握ると、堪らなくなって「もう、いいです」と告げて退室を試みた。そうでもしなれければ、折れた心がこの場で泣き出してしまいそうだった。しかしその退室は彼の手によってかなわないものなってしまった。
「ちょ、待った待った! …そんなに、嫌、なのか?」
「……辛いのです」
「なら、もっと仕事量を減らすように、」
「違うっ……違い、ます」
「どういう…」
「陛下の、お側にいるのが私には苦しくて堪りません…」
それに「えっ」と目を丸くしたシーザーに、リリィは観念したように振り返った。そして泣き笑いを浮かべて嗚咽交じりに言った。
「正直に申し上げます…。…私は、陛下をずっと、お慕いしておりました」
「………は…え……えええええぇぇぇええ!?」
彼女からの驚きの証言に、彼は思わず叫んでしまった。硬直し顔を紅潮させて言葉を探しているシーザーの掴む手の力が緩んだことに気付いたリリィは、するりとその腕から逃げて早足で退室する。ああ、ほらやっぱり。本当に鈍いお方と彼女は内心で自分を嘲笑った。その場から動けずにいた彼はその背に向かって声をかけることしかできなかった。
「りっ、リリィ!」
呼びとめられた彼女は開いた扉の前で立ち止まると、振り返らずに告げた。
「…今の失言は、どうぞ早々にお忘れ下さい」
ぱたん、と閉じられた扉の音が、シーザーにはやけに大きく聞こえた。
彼はその場にしゃがみ込むと頭を抱えて唸り声をあげた。
「どうしようどうしようどうしよう…え、つかリリィ俺のこといつから好きだったわけ? ずっとってかなり前から? なにそれ初耳なんだけど、じゃなくて! 専属侍女どうすんのマジでリリィしかいないのに辞められたら困る俺の味方が減る…じゃないっつの! 好きになってくれた子の前で結婚の話とか…絶対キツいだろ…いや、嫌われたリリィに嫌われた、うわーどうしよう俺本当どうしたらいいのよマジで」
「ほんっと駄目人間ですねその脳内には一体何が詰まってるんですか」
「そんなの決まってんだろーが。毎日毎日サインだけ書いている退屈さをどう紛らわすか………ってええええええ!? なんでお前いんの!? つかいつからいたの!?」
「俺の味方が減る…の所からですかね」
「中途半端!」
「それは貴方のことでしょう」
「仰る通りです…」
レスターはやれやれと彼の目の前で大袈裟に溜息をついてみせると、シーザーもつられて溜息をつく。そして項垂れたまま両手で顔を覆うと不甲斐ないと呟いた。
「俺ほんとどーしたらいいのよ」
「御正室にクリスティーナ様を迎えればよいだけです」
「でもそしたらリリィが…」
「馬鹿ですか貴方は。正室とたかが一人の侍女、どっちが大切なんです」
「………じ、侍女?」
「正室に決まっているでしょう」
「だってクリス嬢が俺の味方になってくれるかわかんないじゃん!」
「それは貴方の努力次第でしょうが!」
珍しく声を荒げたレスターにシーザーはびくりと肩を震わせて、恐る恐る顔をあげてみればそこには冷笑を浮かべた鬼宰相閣下が彼を見下ろしていた。いや、見下していたという表現のほうが正しかったかもしれない。実際彼もそう感じていた。
「でも、だって…リリィは六年間ずっと側で仕えてくれていたんだぞ。今まで一年も仕えてくれた奴が俺のそばにいたか?」
「いませんね。ですから妹のあの精神には呆れを通り越して惚れ惚れしましたよ」
「だろう………今、お前なんて言った? 妹…? はあああ!? ちょっ、まじ…えええええっ。だって、それじゃお前知って…」
「知っていましたよ、勿論。ですが、こんなちゃらんぽらんなど諦めなさいと何度も忠告しました。無理でしたがね」
「ちゃ、ちゃらんぽら……ま、まあいい。レスター、お前がどうにかしてリリィを連れ戻「しませんよ、私は。一切協力する気はありません」…ちょ、なんでだよ」
「妹の幸せの為に私は、貴方より顔も性格もいい奴の所に嫁がせるつもりですから。家柄は、そりゃ王家には劣りますが悪くない所に。もう条件が揃っているところは何件か上がっているので、至急仕事を辞めさせて家に戻し嫁がせますよ。世間より嫁ぎ遅れなど言われては困りますしね。それでも貴方は妹を手元に置いておきたいのいうのなら自力で頑張ってください。では」
それだけ言い残してレスターは颯爽と退出していった。
そしてこの後シーザーは三日三晩悩み抜いた末に結婚を破棄し、レスターに土下座をしてまでリリィを連れ戻すように頼みこみ、結果協力得られず渋々自分で公爵家まで彼女を迎えに行き、「俺はリリィなら何も問題ないから」とわけのわからないことをほざいて王宮に連れ戻すと、今までに見たことがないレベルの恐怖の笑顔を浮かべた宰相閣下に出迎えられ、恐れをなして「妹さんを絶対に幸せにして見せます。ですから僕に妹さんをください」と連続三十回ほど唱えた所で堪え切れなくなったリリィが笑いだし、そんな様子を見た宰相閣下が渋々許しをだしたというおはなしは、また別のおはなしである。
クリスティーナ様は宰相閣下の相談役で二人の恋を応援していたとかなんとか…。
短編を書くのはものすごく苦手です……。
思いついたものをざざっと書き殴ったのが、これでした。
普段の傾向とは違った作品になったので、新鮮な感じがしました。
その後的なものを、いつかは書こうと思います。