姫の護り神
荒れ果てた広大な大地に一人の少年が立っていた。
髪はきれいな漆黒で顔立ちもよく、優しい印象を抱かせる。
それに、見える肌は陶磁器のように白く、細い体をしている。
眼は澄んだ空色をして少年の纏う雰囲気に似合っている。
着ている物は黒の半袖トレーナーに黒のズボン、そして紅いマントだ。
ただ、異質なのは少年の足下に転がっている数々の肉片と少年の手に握られている返り血を浴びた深紅の刀だけだろう。
少年はすべて終わったと思って気を抜き、刀についた返り血を拭った。
だが、実はまだ終わっていなかった。
グギャアアァァァァァァアア
そんなウザったい鳴き声をあげて、地面から大きなムカデが出て来た。
「まだ生きてる奴がいたのか」
少年はそう呟いた後、刀を構えた。
大ムカデは未だ地面に潜ませている尾を使って背後から串刺しにしようとした。
少年は大ムカデの攻撃をわざと見逃し、ギリギリのところで避けた。
大ムカデの尾は避けられたせいで醜い体に直撃し、僅かに怯んだ。
その隙を逃さず刀で切りつけ、危険な尾を胴体から切り離す。
その時に緑の血が吹き出したが下級魔法で血ごと攻撃した。
グギャアアァァァァァァアア
炎に焼かれて大ムカデは悲鳴を上げる。
だが、その悲鳴さえもすぐに消えた。
「これが最後の一匹か?」
少年はきれいに左右に分かれた大ムカデを見ながら独り言を呟いた。
そして、気を緩めたフリをしてしばらく立ってみたが動く気配は欠片も感じない。
じゃあギルドに帰るか。