第10話 ★
「はあっ、はあっ、大丈夫?まだ走れる?」
「う、うん、大丈夫……」
あ~なんでこんな必死で走っているんだろう。
高校が終わって家に帰って、お兄ちゃんからのお願いで駅から家までの道のりを動画で撮っていたんだ。
そうしたら急に緊急魔獣速報が鳴りだして。でも大体1週間に1度は鳴るもんで慣れているから、落ち着いて避難しようと思ったら路地の角を曲がったところでちっちゃい子が狼の魔獣に襲われていて、さすがに見逃せなくて石ぶん投げて一緒に逃げて。
最初は十分にあった距離も流石に狼の脚には勝てなくてかなり縮まっているし、もう10分もしたら捕まっちゃいそう。
魔法少女はまだ来ないのか。
魔獣ってもとになった生物の特徴を引き継いでいるから、あの狼の魔獣は鼻がいいんだよね。だからどこかに隠れることもできなくて、仕方なくずっと走っている。
けどもうそろそろ限界だ。私はそこまで運動が得意な方ではないし、女の子の方もすでに体力の限界。大丈夫なんて言っているけど、正直もう気力だけで走っているような状況だ。
「おい君たち、大丈夫か!」
あ、自衛隊の人がいる。良かった、この子だけでも逃がしてあげられる。
でも魔法少女以内や。じゃあどうしようもないし、まだ走るか……。
「すいません、この子連れて逃げてください!私たちもう追われてるんで!」
「君は⁉」
「まだ走れるんで!お願いします!」
「あ、ち、ちょっと!」
一緒に逃げたところで魔法少女がいないなら追いつかれて食べられるだけだし、それなら私が魔獣を連れて逃げたほうがまだあの子が逃げられる可能性があるよね。
最悪私が喰われている時間でも時間を稼げるし。
さっき石を投げられたことを覚えているからか、あいつは私の方ばっかり見ているし大丈夫。絶対こっちを追いかけてくる。
ほらやっぱり。一瞬あの子たちのことを見たけど、知らんぷりしてすぐに私の方を向いてまた走り始めた。
「はあっはあっ」
せめてあの子たちがシェルターに逃げ込める時間くらいは、と思ってまた走っているけど失敗したなぁ。そんな体力残ってなかったや。
「うあっ…」
もう無理。自分でも気が付かないうちに足がパンパンになっている。もう一歩も動けない。
ちらりと後ろを向けば、もうあと一歩で届くくらいの距離に魔獣がいた。大きく口を開けて、もう数秒で私はあいつの胃の中か。
「ッ……」
あ~、無理。やっぱ怖い。喰われている時間であの子が逃げられたらなんて思っていても、怖いものは怖い。死にたくない。まだ15年しか生きていないんだよ私は。
楽しみな映画とかあったし、友達と遊ぶ約束もあるし、珍しい苗字の友達も最近できたのに。
「死にたくない……いや、やめて……」
魔獣の顔が笑っているように見える。そんなに私を殺したいのか。私は死にたくないのに。
「誰か……誰か、助け」
「どけええええええっ!!」
恐怖で目を瞑ろうとした瞬間、空から緑色の人が叫びながら持っていたもので魔獣を吹き飛ばした。魔獣に抵抗できる存在、魔法少女だ。
ほとんど諦めていたからとても驚いたのだけど、それと同じくらい驚いたことがもう一つ。
「心愛……?なんで魔法少女……」
「それは後でお願い。……間に合ってよかった」
私を助けてくれた魔法少女は、最近友達になった同い年の人だった。




