第十九話:学園フィットネス・クラブ誕生
「さあ、一緒に、この歴史書で、大胸筋を鍛えましょう!」
エリアーナの、その、あまりに真剣で、情熱的な瞳に。
ルームメイトの令嬢は、最初こそ、目を白黒させておりましたが、やがて、その固い決意に、心を打たれました 。
(確かに、わたくしたち令嬢は、あまりに、無力だわ…)
そう思った時、彼女の口から、こぼれ落ちたのは、驚くべき、言葉でした。
「わ、わたしも、やりますわ!自分の身くらい、自分で、守れるようになりたいですもの!」
記念すべき、弟子(犠牲者)第二号の、誕生ですわ。
その、小さな、しかし、熱い、反乱の炎は、瞬く間に、学園の、か弱き乙女たちの間に、燃え広がっていきました。
エリアーナと、ルームメイトが、二人で、中庭の片隅で、歴史書を、上げ下げしている、その、異様な光景は、すぐに、他の令嬢たちの、知るところとなったのです。
初めは、遠巻きに、見ていた彼女たちも。
エリアーナの、その、真摯な想いと、「自分の身は、自分で守る」という、新しい、思想に、次々と、感化されていきました 。
「わたくしも、入れてくださる?」
「痴漢に、遭遇した時、悲鳴を上げるしかできないなんて、もう、嫌ですわ!」
一人、また、一人と、仲間は、増えていき。
ついに、彼女たちは、学園史上、最も異色なクラブの設立を宣言するに至ったのです。
その名も、『学園フィットネス・クラブ』 。
当然、初代部長に、就任したのは、このムーブメントの火付け役である、エリアーナでした 。
彼女は、皆の前に立つと、イザベラ様直伝の、と言っても、彼女が、噂や新聞記事から、必死で推測し、そして、彼女なりに、最大限、安全にアレンジしたトレーニングメニューを、発表いたしました 。
「ええと、まずは、準備運動です!イザベラ様なら、城壁を、逆立ちで、歩かれるそうですが、わたくしたちは、まず、廊下を、スキップすることから、始めましょう!」
かくして。
王都の、清らかなる、乙女の園に。
わたくしの、筋肉理論の、最初の支部が、産声を上げたのでございます。
ええ、ええ。実に、素晴らしいことですわ!
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