第十七話:筋肉による神判、その結末
わたくしたちの、筋肉による、人命救助と、災害復旧が、完了した時。
グラン鉱山の空には、美しい、夕焼けが、広がっておりました。
あれほど、絶望に満ちていた災害現場は、今や、見る影もございません。鉱山の入り口を塞いでいた岩盤は、綺麗さっぱりと、取り除かれ、倒壊した家屋や橋は、以前よりも、むしろ、頑丈に、再建されている。
そして、わたくしたちの前には、救出された坑夫たちと、その家族たちが、ひざまずき、祈りを捧げておりました。
彼らが、熱狂的に、叫んでいるのは、ただ、一つの名。
「イザベラ様!」「我らが、救世主、イザベラ様!」
(ふふん。ええ、ええ。よろしい。もっと、わたくしの筋肉を、崇め称えるが、よろしいですわ!)
わたくしが、その、心地よい賞賛の声に、浸っておりますと。
そこに、一団の、馬に乗った、貴族たちが、現れました。今回の、弾劾裁判を、主導した、ライネスティア派の方々ですわ。
彼らは、わたくしが、任務に失敗し、民衆の、恨みを、買っている、無様な姿を、見届けにきたのでしょう。その顔には、意地の悪い、笑みが、浮かんでおりました。
ですが、彼らは、目の前の光景を、目にした、瞬間。
その、嫌らしい笑みを、顔に、貼り付けたまま、凍りつきました。
災害が、完全に、復旧している、という、信じがたい事実。
そして、民衆が、わたくしを、まるで、神のように、崇めている、という、ありえない光景。
「な…、こ、これは…一体、どういう、ことですの…?」
ライネスティア派の方が、震える声で、そう、呟いた、その時。
さらに、その後方から、国王陛下が、兄様と父上を伴って、静かに、姿を、現されました。
国王陛下は、馬を降りると、その、全てを、見通すかのような、鋭い瞳で、現場を、ゆっくりと、見渡されました。
再建された、村。安堵の涙を流す、民衆。そして、汗と、土にまみれながらも、誇らしげに、胸を張る、わたくしと、わたくしの、筋肉信者たち。
やがて、国王陛下は、満足げに、頷くと、その場にいる、全ての者に、聞こえるように、はっきりと、宣言されたのです。
「民を救う軍が、反乱軍であるはずがない」
その、一言は、絶対的な、重みを持って、その場に、響き渡りました。
「よって、ここに、宣言する。イザベラ・フォン・ツェルバルクの、無罪を、確定する!」
うおおおおお!と、民衆の、大歓声が、天を衝く。
その、歓声の中で、ライネスティア派の貴族たちは、顔面蒼白のまま、崩れ落ちるように、馬から、降りるのでした。
ええ、ええ。当然の結果ですわ。
わたくしの筋肉が、正義であることは、この世の、自明の理なのですから。
さあ、皆さん!勝利の、プロテインの時間ですわよ!
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