第十五話:天災は、最高のトレーニングステージですわ!
わたくしの、あまりに突拍子もない「腕相撲による神明裁判」の提案に、貴族議会の大広間が、まさに、カオスと化しておりました。
父上と兄様は、もはや、怒りを通り越して、無の境地に達しておられる。ライネスティア家の当主は、顔を真っ赤にして、わたくしを「不敬である!」と罵り、議場は、賛成派と反対派の怒号で、満たされております。
(ふふん。よろしい。もっと、熱くなるがよろしいですわ。議論とは、本来、これほどまでに、情熱的であるべきもの!)
わたくしが、その、混沌とした状況を、満足げに、見守っておりますと。
突如、一人の、伝令兵が、血相を変えて、大広間に、駆け込んできたのです。
「き、緊急報告! 王都近郊の、グラン鉱山にて、大規模な、落盤事故が発生! 多数の、坑夫たちが、生き埋めになっている模様!」
その、絶望的な報告に、議場の喧騒が、ぴたり、と、止まりました。
グラン鉱山。それは、王国の経済を支える、重要な、鉱脈の一つ。そこでの、大事故。
その、あまりの、衝撃的なニュースに、誰もが、言葉を失っておりました。
その、重苦しい沈黙を、破ったのは、ライネスティア家の当主でした。
彼は、まるで、鬼の首でも取ったかのように、わたくしを、指差して、叫びました。
「見たか! これぞ、天罰だ! ツェルバルク家の、その、不敬な振る舞いが、天の怒りを買ったのだ!」
その、あまりに、短絡的で、愚かな、発言。
ですが、動揺した貴族たちの中には、その言葉に、同調する者も、少なくありませんでした。
その時でした。
わたくしは、ゆっくりと、前に、進み出ました。
そして、その、静まり返った、大広間に、わたくしの、力強い声が、響き渡ったのです。
「言葉は、無力ですわ!」
わたくしは、その場にいる、全ての貴族たちを、見渡して、宣言いたしました。
「我が軍の『力』が、王国への貢献という形で、真実を、証明いたしますわ!」
「これより、わたくしたちは、この天災を、『神判』の場と心得、民を救って、ご覧にいれます!」
わたくしは、被告の身でありながら、踵を返し、大広間を、後にしようとしました。
兄様が、慌てて、わたくしの腕を、掴みます。
「待て、イザベラ!お前、正気か!?」
わたくしは、そんな、兄様の手を、優しく、振り払うと、絶対的な、自信に満ちた笑みで、言い放ったのです。
「兄様。天災は、最高の、トレーニングステージですわよ」
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