第二十五話:白氷城の邂逅
最後の妨害を完璧にクリアしたわたくしたちの目の前に、ついに、目的地である白氷城が、その姿を現しました。
雪と氷に覆われた山脈を背に、まるで巨大な氷の結晶そのものが城となったかのような、壮麗で、美しい城塞都市。
ですが、その美しさとは裏腹に、城は、今、まさに、戦火に包まれておりました。
城壁には、黒いローブをまとった「律章復興派」の残党たちが、蟻のように群がり、魔法や攻城兵器で、必死の攻撃を繰り返している。城の守備兵たちは、数で劣り、明らかに、追い詰められておりました。
「ふん。城の入り口を守っている、ザコモンスターですわね」
わたくしは、馬上で、静かに、そう呟きました。
そして、背後に控える、わたくしの、完璧なる「筋肉信者」たちへと、振り返ります。
彼らの瞳には、もはや、問いかけも、迷いもありません。ただ、わたくしの、次の一言を、待っているだけ。
「皆々様、最終決戦前の、最後のウォーミングアップですわよ」
わたくしは、大戦斧を、肩に担ぎ直すと、にやり、と笑いました。
「――殲滅なさい」
「「「ハイル・マッスル!!」」」
地鳴りのような雄叫びと共に、わたくしたち、ツェルバルク軍は、雪崩のように、丘を駆け下りました。
城攻めに集中していた敵の背後から、突如として現れた、鋼鉄の軍勢。
攻守は、一瞬で、逆転しました。
もはや、それは、戦いと呼べるものではありませんでした。
ただの、蹂躙。
わたくしたちの軍勢は、瞬く間に、城を包囲していた律章復興派の残党を、完全に、一蹴したのです。
静けさを取り戻した城門の前で、わたくしは、馬を降りました。
兵たちの見回すと苦しそうにしてますわね。なるほど、やはり。
「あなた方は、ここで待機なさい。ボスとの対面は、パーティーリーダーである、わたくしの役目ですわ」
わたくしは、一人、ゆっくりと、城の中へと、足を踏み入れました。
城内は、静まり返っている。ですが、その奥から、尋常ではない、強大な魔力が、溢れ出ているのを、肌で感じました。
そして、玉座の間で、わたくしは、それと、対峙したのです。
玉座の前で、銀色の髪を振り乱し、その身から、絶対零度の、凄まじい魔力を放ち続ける、セレスティーナ・フォン・ヴァイスハルト。
そして、その、暴走する彼女を、庇うように、立ちはだかる、一人のメイド。
(あのメイド…どこかで…?)
わたくしの、鍛え上げられた記憶力が、その顔を、正確に、捉えました。
以前、食堂で出会ったセレスティーナ様のメイド。
そうですわ。それ以前にも、王都での観閲式。暴走した軍馬から、セレスティーナ様を、身を挺して庇った、あの、無謀で、しかし、驚くほど芯の強そうな瞳をしていた、メイド、名はリリアと言いましたか、ですわね。
わたくしは、その光景を、ただ、静かに、見つめておりました。
ああ、やはり、わたくしの、読み通り。
ラスボスと、それを守る、最後のイベントNPC。
役者は、全て、揃いましたわね。
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