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【祝45000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第二章:悪役令嬢イザベラ、メインクエストも筋力で踏み潰しますわ!
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第二十一話:ヒロインからの手紙

 わたくしたちの、筋肉と賛歌に満ちた進軍は、順調そのものでした。

 兄ヴォルフ様の胃痛や、王都の混乱など、わたくしの知るところではありません。わたくしの頭の中にあるのは、ただ一つ。白氷城にいるであろう「バグ(世界の危機)」を、いかにして、最も効率的に、粉砕するか、ということだけ。


 その日も、わたくしたちは、野営の準備を進めておりました。兵士たちは、巨大な丸太を軽々と運び、薪を集めています。その、引き締まった上腕二頭筋の美しいこと!


 そんな、充実したトレーニング(行軍)の最中、一羽の、伝書鳩が、わたくしの元へと舞い降りてきました。

 その足に結び付けられていたのは、一通の、小さな手紙。封蝋には、見覚えがありません。


「なんですの、これは?」


 わたくしが、いぶかしんでいると、手紙の、可憐な文字が、目に留まりました。

 それは、エリアーナからの、手紙でした。


 わたくしは、封を切り、その、拙いながらも、丁寧な文字で書かれた手紙に、目を通します。

 そこに書かれていたのは、わたくしの意表を突く、内容でした。


『――前略、イザベラ様。貴女様の、突然の、ご出征を、遠い王都の空の下より、案じております。わたくしには、イザベラ様のような、お力はございませんが、せめて、何か、お役に立てればと、思いまして…』


 手紙の前半には、彼女なりに、図書館で必死に調べたのであろう、「長距離行軍における、効率的な栄養補給と、疲労回復法」に関する情報が、びっしりと、書き連ねられておりました。 月芋と岩塩を組み合わせることで、消耗したミネラルを補給できる、など、なかなか、どうして、的を射た内容です。


 そして、手紙の、最後は、こう、結ばれていました。


『…どうか、ご無事で、お戻りください。わたくし、イザベラ様からいただいた、あの、小さな一歩を、もっと、大きなものにできるよう、毎日、ストレッチを、続けております。貴女様の、ご帰還を、心より、お待ち申し上げております』


 その、たどたどしいながらも、心からの応援の言葉。

 わたくしは、ふん、と、鼻を鳴らしました。


「わたくしの保護対象も、少しは成長したようですわね」


 口では、そう、素っ気なく、呟きながらも。

 わたくしは、その、小さな手紙を、破り捨てたりはしませんでした。

 そっと、丁寧に折り畳むと、鎧の下、心臓に最も近い、内ポケットへと、大切に、しまい込んだのです。


 夕日に照らされた、わたくしの横顔が、ほんの少しだけ、いつもより、優しく見えたことを。

 もちろん、筋肉一筋の兵士たちは、誰も、気づいてはいませんでした。

ご覧いただきありがとうございました。感想や評価、ブックマークで応援いただけますと幸いです。また、世界観を共有する作品もあるので、そちらもご覧いただけるとお楽しみいただけるかと存じます。HTMLリンクも貼ってあります。

次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話を更新しています。(Xアカウント:@tukimatirefrain)

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