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【祝45000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第二章:悪役令嬢イザベラ、メインクエストも筋力で踏み潰しますわ!
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第二十話:兄ヴォルフの、増え続ける胃薬

 その頃、王都にあるツェルバルク家の本邸では。

 わたくしの兄、ヴォルフガング・フォン・ツェルバルクが、頭を抱えておりました。


場面は王都へ。 彼の目の前には、王都の騎士団から派遣された伝令が、次々と、信じがたい報告を、もたらしていたのです。


「申し上げます! イザベラ様率いるツェルバルク軍、王都を出発して、わずか三日にて、既に全行程の半分を走破した模様!」

「馬鹿な! 全軍、完全武装のはずだぞ! 我が騎士団の、最速の騎馬隊ですら、倍はかかる距離だ!」


 ヴォルフは、こめかみを押さえ、呻くように言いました。

 ですが、地獄は、それで終わりません。別の伝令が、真っ青な顔で、駆け込んできます。


「も、申し上げます! ツェルバルク軍の、驚異的な進軍速度の、理由が判明いたしました!」

「何だと!?言ってみろ!」

「は、はい! 斥候の報告によりますと…兵士たちが皆、巨大な丸太を担いで、歌いながら、行進しているとのことにございます!」

「…………は?」


 ヴォルフの思考が、完全に停止しました。

 丸太を? 担いで? 歌いながら? それで、騎馬隊より速い?

 意味が、分かりません。


「その…歌とは、なんだ」

「はっ! 『大胸筋に、栄光あれ!』という、歌詞であったと…!」


 ヴォルフは、静かに、懐から胃薬の小瓶を取り出すと、その中身を、全て、口の中に流し込みました。


(イザベラ…お前は、一体、何を、しているんだ…!)


 彼の苦悩が、イザベラの異常さを、客観的に描き出すのです。

 妹が、突如として「聖戦」を宣言し、軍の全権を掌握し、そして、今、王国史上、最も、意味不明で、そして、最も、不気味な軍隊を作り上げ、北へと向かっている。

 王城では、連日、緊急の会議が開かれ、「ツェルバルク家の反乱」を、どう鎮圧すべきか、という議論が、真剣に行われている。


 その、全ての元凶である、わたくしの兄、ヴォルフ。

 彼の、心労と、胃痛は、もはや、限界に達しておりました。


「ああ、父上…なぜ、あいつを、止めてくださらなかったのですか…」


 彼は、誰にも聞こえない声で、そう呟くと、ぐったりと、椅子に、沈み込む。

 そして、侍従に、こう命じるのでした。


「…胃薬の、一番、強力なやつを、樽で、持ってきてくれ…」


 赤き戦姫の伝説が、進むほどに。

 その兄の、胃痛の伝説もまた、新たなページを、刻み続けていたのです。

ご覧いただきありがとうございました。感想や評価、ブックマークで応援いただけますと幸いです。また、世界観を共有する作品もあるので、そちらもご覧いただけるとお楽しみいただけるかと存じます。HTMLリンクも貼ってあります。

次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話を更新しています。(Xアカウント:@tukimatirefrain)

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