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【祝22000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン
第一章:悪役令嬢イザベラ、ざまぁ婚約破棄を筋力で踏み潰しますわ!
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第七話:ヒロインは保護対象ですわ!

わたくしが二人の令嬢を弟子としてから数日が経ちました。

早朝の学園に、今や三人の悲鳴がこだまするのが日常の風景となっております。


「い、一キロスも走り続けるなど、もう無理ですわ、イザベラ様!」

「わたくしの教科書、全部で10キログアはございますのに…!」

「弱音を吐く暇があるなら、足を動かしなさい!あなたたちを、わたくしの威光にふさわしい、屈強な側近へと鍛え上げてやるのですから!」


そうですわ。わたくしの指導の甲斐あって、クレメンティーナとダフネは、以前のようないじめなど考えもつかないほど、日々のトレーニングで満身創痍。実に健全なことです。

この調子でいけば、彼女たちが原因でわたくしが断罪されるという破滅フラグは、完全に回避できることでしょう。ふふふ、計画通りですわ。


わたくしが、そんな手応えに満足していた、ある日の昼下がり。

中庭をトレーニングコースとして走り込んでいると、前方に人だかりができておりました。


中心にいるのは、数人の下級貴族の令嬢たち。そして、彼女たちに取り囲まれているのは…小柄で、亜麻色の髪をした、そばかすの目立つ、いかにも気弱そうな平民の少女。


(…! あの少女は…!)


わたくしの脳内に、前世の記憶が稲妻のように閃きます。

そうですわ、彼女こそが、この乙女ゲーム『白亜の塔のエトワール』の主人公、エリアーナ!

そして、あの状況は、間違いなくゲーム序盤のイベント、『地味なヒロイン、貴族たちに絡まれる』ですわ!


「まあ、平民の特待生さん。その教科書、とても重そうですわね。わたくしたちが持って差し上げましょうか?」

「い、いえ、大丈夫です…!」

「遠慮なさらないで。あら、手が滑ってしまいましたわ」


バサバサ、と教科書が地面に散らばる。典型的な、実に古典的で、陰湿な嫌がらせ。

それを見て、わたくしは、血の気が引くのを感じました。


(まずいですわ…!非常にまずいですわ!)


これは、ただのいじめではございません。

ヒロインの心がここで折れてしまえば、彼女はどの攻略対象とも結ばれず、物語はバッドエンドへ直行。そして、ゲームのシナリオが破綻した時、悪役令嬢であるわたくしに、どんな災厄が降りかかるか、想像もつきません!

そうですわ、ヒロインのメンタルコンディションは、わたくしの生存に直結する、最重要課題なのです!


「あなたたち、そこで何をしておりますの」


わたくしは、地を這うような低い声で、その輪に割って入りました。

いじめを行っていた令嬢たちが、わたくしの姿を認め、サッと顔色を変えます。

しかし、わたくしは、彼女たちなど眼中にございません。


わたくしは、まっすぐにエリアーナの前へと進み出ると、その貧相な体を、上から下まで、じろりと検分いたしました。


「あなた、お名前は?」

「え、あ、エリアーナ、です…」

「ふん。弱々しいお名前ですこと。見たところ、あなたの腕の周囲は20セン チスにも満たないのではなくて?これでは、重さ1キログアの教科書を持つことすら、ままなりますまい」


わたくしは、大きくため息をつきました。

「これはいけませんわ。ヒロインが、これほどまでに脆弱では。物語が始まる前に、倒れてしまいます」


「へ?ひ、ひろいん…?」

エリアーナが、小さな鳥のように首を傾げます。


わたくしは、いじめていた令嬢たちと、後ろで控えていたクレメンティーナとダフネに向かって、高らかに宣言いたしました。


「お聞きなさい、あなたたち!このエリアーナは、この世界の安定――ひいては、わたくしの平穏な学園生活の根幹をなす、最重要人物ですの!本日この瞬間より、彼女は、わたくしツェルバルク家の保護対象といたします!」


食堂が、水を打ったように静まり返ります。


「そして、エリアーナ。あなたも、よろしいですわね?」

わたくしは、怯える子犬のようなヒロインの腕を、がしりと掴みました。

「あなたを、誰にも負けない、最強のヒロインへと、このわたくしが、直々に鍛え上げてさしあげますわ!」

「えええええええっ!?」


「返事は『はい』か『イエス』ですの!まずは、あなたの基礎体力を測定します!わたくしについてきなさい!手始めに、5キロスほど、走りましょうか!」


わたくしは、絶叫するヒロインを引きずるようにして、その場を後にしました。

残された生徒たちが、何が起こったのか理解できないという顔で、ただ呆然と立ち尽くしている。

その中には、婚約者であるエドワード王子の、驚きに見開かれた顔もあったような気がいたしますが、今は些細なことですわ。


ふふふ、これでヒロインの安全は確保されました。

また一つ、破滅フラグを、完璧にへし折ってやりましたわ!

ご覧いただきありがとうございました。感想・評価・ブックマークで応援いただけますと幸いです。

次話は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話を更新中です。(Xアカウント:@tukimatirefrain)

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