第十九話:赤き戦姫の進軍
鉄砦城の、巨大な城門が、ゆっくりと開かれていく。
朝日を背に、その門から現れたのは、もはや、ただの軍隊と呼ぶには、あまりに異質な集団でした。
超人集団へと生まれ変わったツェルバルク軍を率い、イザベラは白氷城へと進軍を開始。
先頭に立つのは、もちろん、このわたくし、イザベラ・フォン・ツェルバルク。その肩には、父上から譲り受けた、巨大な戦斧が、誇らしげに担がれている。
そして、わたくしの後に続くのは、鋼鉄の肉体と、狂信的なまでの忠誠心を宿した、最強の「筋肉信者」たち。
彼らは、重い鎧を身につけながらも、その足取りは、羽のように軽い。その瞳には、これから始まる聖戦への、純粋な喜びと、高揚感が、燃え盛っていた。
「「「ハイル・マッスル! ハイル・マッスル!」」」
彼らは、行軍の歌の代わりに、筋肉への賛歌を、地鳴りのように響かせながら、整然と、しかし、凄まじい速度で、白氷城へと向かう王道を進んでいく。
その、あまりに異様で、そして、圧倒的な光景。
道すがら、その行軍を目撃した農民や、商人たちは、最初、何事かと目を丸くしておりましたが、やがて、その、一点の曇りもない、力強い行進に、畏敬の念を抱き、道端にひざまずいて、こうべを垂れるのでした。
この、ツェルバルク軍の、謎の進軍の報は、瞬く間に、王国全土を駆け巡りました。
その報は王都を震撼させ、諸侯は「ツェルバルク家の反乱か!?」と大混乱に陥る。
王都では、貴族たちが、大混乱に陥っておりました。
「ツェルバルク家が、ついに、反乱を起こしたぞ!」
「いや、あれは、ライネスティア家への、示威行動だ!」
「どちらにせよ、静観が上策だ。あの、赤き戦姫の、今の勢いに、逆らうのは、得策ではない…」
諸侯たちは、ただ、恐怖し、狼狽えるだけ。誰一人として、わたくしたちの、真の目的が、この世界を救うための、気高い「聖戦」であるなどとは、夢にも思っていませんでした。
ふふん。それで、よろしいですわ。
あなた方が、くだらない政治闘争に明け暮れている間に、このわたくしが、さっさと、このゲームを、クリアしてご覧にいれますから。
わたくしたちの、神速の行軍を、止められるものなど、もはや、何もありませんでした。
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次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。
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