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【祝45000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第二章:悪役令嬢イザベラ、メインクエストも筋力で踏み潰しますわ!
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第十二話:最強のやり込み要素

 どれくらいの時間、そうしていたのでしょうか。

 わたくしは、ただ、自室の床にうずくまり、震えておりました。脳裏に焼き付いて離れない、兄ヴォルフ様の、あの最期の光景。これまで経験したことのない、リアルな「喪失」の恐怖が、わたくしの魂を、芯から凍てつかせていました。


(怖い…怖い…怖い…!兄様が、死んでしまう…!)


 この世界が「ゲーム」であるという、わたくしの、絶対的な前提が、ガラガラと音を立てて崩れていく。もし、これが、ただのゲームではないとしたら?もし、本当に、やり直しのきかない、一度きりの現実だとしたら?

 その、あまりに重い可能性に、わたくしは、押し潰されそうになっていました。


 その、時でした。

 わたくしの脳裏に、ふと、別の記憶が、よみがえったのです。

 それは、わたくしが、まだ、この世界に来たばかりの頃の、遠い記憶。


 ツェルバルク家の家訓、その第一条。

『迷ったら、殴れ』


 そして、父ゴードリィが、幼いわたくしたちに、いつも語って聞かせてくれた言葉。

『力とは、守るべきもののために振るえ』


 そうだ。

 わたくしは、何を、忘れていたのでしょう。

 恐怖に、震えているだけで、何かが変わるのですか?

 迷っているだけで、誰かを、守れるのですか?


 違う。

 断じて、違いますわ。


 わたくしは、ゆっくりと、立ち上がりました。

 その、震える足に、ぐっと、力を込めて。

 涙で濡れた頬を、ドレスの袖で、乱暴に拭う。

 そして、鏡に映る、自分の顔を、真っ直ぐに、睨みつけました。


 そこに映っていたのは、もう、怯えるだけの、か弱き少女ではありませんでした。

 その瞳に、再び、灼熱の、不屈の闘志を宿した、ツェルバルク家の令嬢。

 悪役令嬢、イザベラ・フォン・ツェルバルクの顔でした。


「そうですわ!この最悪の未来を回避してこそ、真のハッピーエンド!」


 わたくしは、鏡の中の自分に向かって、力強く、宣言しました。

 恐怖と迷いを、振り払うように。


「兄様が死ぬ? わたくしの家族が、不幸になる? そんな結末、このわたくしが、絶対に、認めませんわ!」


 そうだ。これが、ゲームであろうと、現実であろうと、わたくしのやるべきことは、ただ一つ。

 目の前に立ちはだかる、理不尽な運命を、この、鍛え上げた、完璧な肉体で、粉砕する。ただ、それだけ。


 わたくしは、恐怖を、怒りへと、そして、怒りを、闘志へと、昇華させました。

 この、世界の危機は、もはや、ただの「バッドエンド」ではない。


「最高のやり込み要素ですわ!」


 わたくしは、完全に、再起動しました。

 この、あまりに難易度の高いメインクエストを、完璧にクリアし、誰一人、死なせることなく、最高のエンディングを迎えてみせる。

 その、ゲーマーとしての、そして、一人の戦士としての、新たな決意が、わたくしの魂を、これまでにないほど、強く、そして、熱く、燃え上がらせていたのです。


 わたくしは、部屋の隅に置いてあった、愛用の大戦斧を、手に取りました。

 ずしりとした、慣れ親しんだ重み。

 さあ、始めましょうか。

 この、クソゲーの、本当の攻略を。

ご覧いただきありがとうございました。感想や評価、ブックマークで応援いただけますと幸いです。また、世界観を共有する作品もあるので、そちらもご覧いただけるとお楽しみいただけるかと存じます。HTMLリンクも貼ってあります。

次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話を更新しています。(Xアカウント:@tukimatirefrain)

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