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【祝45000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第二章:悪役令嬢イザベラ、メインクエストも筋力で踏み潰しますわ!
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第八話:ヒロインの小さな一歩

 イザベラ様が、その圧倒的な力で王都の悪意を平定した、あの日。

 わたくし、エリアーナは、闘技場の観客席の片隅で、ただ、呆然とその光景を見つめていました。


 あの日、初めてお会いした時のイザベラ様は、ただただ、恐ろしい方でした。わたくしを「保護対象」だと一方的に宣言し、常識では考えられないような、地獄のトレーニングを強要しようとした、赤い髪の悪魔。

 わたくしは、あの方の強さを、ただ「暴力」としてしか、認識できていなかったのです。


 でも、違いました。

 今日、わたくしが見たのは、ただの暴力ではありませんでした。

 兄君の名誉を守るため、たった一人で、全ての悪意に立ち向かう、気高い戦士の姿。

 倒した相手にさえ、敬意を払い、その手を差し伸べる、正々堂々とした誇り。

 そして、民衆が、彼女の名を熱狂的に叫ぶ、あの光景。


 わたくしは、学園の自室に戻っても、ずっと、そのことを考えていました。

 エドワード殿下は、いつも、わたくしを守ろうとしてくださいます。でも、わたくしは、いつも、ただ、その背中の後ろで、震えているだけ。

 教科書の束を運べるようになった、あの、ささやかな成功。あれも、元をたどれば、イザベラ様が、無理やり教えてくださった、あの、トレーニングのおかげなのかもしれない。


 窓の外から、イザベラ様の勝利を祝う、人々の陽気な声が聞こえてきます。

 わたくしは、窓ガラスに映る、自分の姿を見つめました。

 か弱くて、頼りなくて、いつも誰かに守られてばかりの、みすぼらしい、平民の娘。


 その時、わたくしの心の中に、今まで感じたことのない、小さな、しかし、確かな想いが、芽生えたのです。



「あの人のようにはなれなくても、少しでも、強く…」


 わたくしは、ゆっくりと、部屋の扉に鍵をかけました。

 そして、記憶の底から、あの日の、イザベラ様の言葉を、必死に、手繰り寄せます。


「背筋を伸ばし、尻を突き出す! 膝がつま先より前に出てはいけません!」


 あの、恐ろしかった熱血指導。

 わたくしは、おそるおそる、その、スクワットの姿勢を真似てみました。ですが、すぐに、足がぷるぷると震え、尻餅をついてしまいます。

 やっぱり、無理。

 そう、諦めかけた時、別の言葉が、よみがえりました。


「全ての基本は、柔軟性からですわ! 筋肉が固まっていては、正しいフォームは身につきません!」


 そうだ、ストレッチなら。

 わたくしは、床に座り、ぎこちない動きで、足を伸ばし始めました。

 イザベラ様のように、完璧な開脚など、夢のまた夢。ですが、ほんの少し、ほんの少しだけ、昨日より、前に進めたような気がしました。


 じわり、と汗が滲む。息が、少しだけ、弾む。

 それは、誰にも知られることのない、わたくしだけの、秘密の鍛錬。

 あの、気高き「赤き戦姫」の背中に、ほんの少しでも、近づくための。

 ヒロインの、あまりに、ささやかな、最初の一歩でした。

ご覧いただきありがとうございました。感想や評価、ブックマークで応援いただけますと幸いです。また、世界観を共有する作品もあるので、そちらもご覧いただけるとお楽しみいただけるかと存じます。HTMLリンクも貼ってあります。

次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話を更新しています。(Xアカウント:@tukimatirefrain)

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