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【祝45000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第一章:悪役令嬢イザベラ、ざまぁ婚約破棄を筋力で踏み潰しますわ!
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第四十九話:それぞれの思惑

戦いが終わり、あたりを支配していた混沌の気配は、きらきらと舞う光の粒子と共に、完全に消え去りました。静寂の中、わたくしがその場に膝をつくと同時に、チームの仲間たちが駆け寄ってきます。


「イザベラ様!」

「大丈夫か、イザベラ!」


クレメンティーナとダフネがわたくしの体を支え、リョーコ殿が警戒を解かずに周囲を窺う。そして、エリアーナは――ただ、言葉もなく、わたくしのことを見つめていました。


やがて、遠巻きに見ていた生徒や教官たちが、恐る恐る、この場所へと戻ってきました。そして、彼らが見たのは、完全に消滅した伝説の魔獣と、その中心に立つ、ボロボロの姿のわたくし。

誰からともなく、まず、小さな拍手が起こりました。それは、やがて、地鳴りのような喝采へと変わっていきます。


「す、すごい…!あの魔獣を、一人で…!」

「彼女が、学園を救ったんだ…!」


わたくしは、学園を救った英雄となりました。





___


エリアーナは、人々の歓声の輪の中心にいるイザベラを、ただ、見つめていました。

怖かった。あの魔獣も、そして、それを超えるほどの力を振るうイザベラ様も。

でも、それ以上に、エリアーナの脳裏に焼き付いていたのは、全く違う光景でした。


自分と王子が追い詰められた、あの絶体絶命の瞬間。

皆が逃げ惑う中、ただ一人、敢然と魔獣に立ち向かっていった、彼女の背中。

仲間を守るため、自らの制服を引き裂き、戦士へと姿を変えた、あの覚悟。

そして、最後に放たれた、恐ろしいけれど、どこまでも気高く、美しい一撃。


物語に出てくる、どんな王子様よりも、どんな英雄よりも、イザベラ様は、ずっと、ずっと、輝いて見えた。

自分の全てを懸けて、守ってくれた。


その事実が、エリアーナの心の中で、恐怖や戸惑いを、全く別の、熱い感情へと変えていきました。

憧れ。そして――。


(ああ、わたくし…)


自分の頬が、急速に熱を帯びていくのが分かります。心臓が、今まで感じたことのない速さで、高鳴っている。

エリアーナは、その瞬間、確かに恋に落ちたのです。

この世界で最も強く、気高く、そして、不器用で優しい、「王子様」に。


___






その歓声の輪をかき分けるようにして、エドワード王子がわたくしの元へと駆け寄ってきました。その顔は、興奮と情熱で赤く染まっています。


「イザベラ!」


彼は、わたくしの手を、力強く両手で握りしめました。


「君のその気高い魂!誰かを守るために全てを懸ける、その強さ!僕は、生まれて初めて、これほどまでに心を揺さぶられた!イザベラ、愛しています!どうか、僕の想いを受け取ってほしい!」


それは、実に情熱的な愛の告白でした。ですが、極度の疲労状態にあったわたくしの脳は、その言葉を「ボス討伐後のボーナスイベント」としか認識できませんでした。


「はあ…どうも、ありがとうございます、殿下。戦闘中のご支援、感謝いたしますわ」


「違う、そうじゃない!僕の愛は!」


その光景を、遠く離れた場所で、一体の魔術的な鏡を通して見ていたラザルスは、戦慄に体を震わせていました。


「ありえない…ありえない…!なぜだ!なぜ、あの脳筋女が、カオス・グリフォンを…!」


彼の計画は、めちゃくちゃになりました。 ヴァイスハルト家を失脚させるどころか、結果として、ツェルバルク家のイザベラを、学園の英雄へと押し上げてしまったのですから。

理解できない。あの女の、あの常識外れの行動の、一体どこに、これほどの結末を導く要因があったというのか。ラザルスは、理解不能な恐怖に、ただ歯を食いしばることしかできませんでした。


騒ぎを聞きつけ、現場に駆けつけた兄、ヴォルフは、人垣の向こうに、ボロボロになりながらも、仲間たちに囲まれて立つ妹の姿を見つけました。


彼は、静かに群衆を抜け、わたくしの元へやってくると、その大きな手で、わたくしの頭を、少しだけ乱暴に、わしゃわしゃと撫でました。


そして、ただ一言。


「――よくやった」


兄様の、そのぶっきらぼうな言葉が、誰からのどんな賛辞よりも、温かく、わたくしの心に染み渡るのでした。

ご覧いただきありがとうございました。感想や評価、ブックマークで応援いただけますと幸いです。また、世界観を共有する作品もあるので、そちらもご覧いただけるとお楽しみいただけるかと存じます。HTMLリンクも貼ってあります。

次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話を更新しています。(Xアカウント:@tukimatirefrain)

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