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【祝45000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第一章:悪役令嬢イザベラ、ざまぁ婚約破棄を筋力で踏み潰しますわ!
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第四十七話:覚醒!制御された破壊

わたくしは、大地を蹴りました。

狙うはただ一つ、天に座すあの忌々しい翼を持つ獅子。

もはや、わたくしの動きを阻むものは何もありません。引き裂いたドレスは風をはらみ、わたくしの闘志を加速させる翼となりました。


「おおおおおっ!」


雄叫びと共に、わたくしはグリフォンの懐へと飛び込みます。ですが、その巨体から放たれる混沌のオーラは、まるで分厚い壁のようにわたくしの行く手を阻む。大戦斧を振るっても、その手応えは鈍く、まるで粘度の高い水の中を掻き回しているかのようでした。


「クァァッ!」


グリフォンは、わたくしの抵抗をあざ笑うかのように、その鋭い爪を振り下ろしました。

わたくしは咄嗟に斧を盾にしてそれを受け止めますが、凄まじい衝撃に体ごと数メートスも吹き飛ばされてしまいます。


「ぐっ…!」


受け身を取って体勢を立て直すも、体は既に悲鳴を上げていました。強い。あまりにも、強すぎる。これが、伝説級の魔獣。わたくしの筋力も、技も、その圧倒的な存在の前では、まるで子供の戯れのようです。


絶望的な戦力差。

じりじりと、しかし確実に、わたくしは追い詰められていきました。


(このままでは…!)


焦りが、恐怖を呼び覚まします。また、あの時のように、力が暴走してしまうかもしれない。その危惧が、わたくしの動きを、ほんのわずかに、しかし致命的に鈍らせました。


その、一瞬の隙。

グリフォンは見逃しませんでした。

翼を広げ、混沌の魔力を凝縮させた黒いブレスを、わたくしに向かって放ったのです。


(――避けられない!)


死を覚悟した、その刹那。

わたくしの脳裏に、二つの声が響き渡りました。


――力は、悪くない。イザベラの、心が、決める。


――『心の中の猛獣は、檻ではなく、意志でこそ乗りこなせ』


リョーコ殿の、静かな眼差し。

父上の、厳しくも温かい教え。


そうだ。わたくしは、間違っていた。

この力を恐れ、檻に閉じ込めようとしていた。違う。わたくしがすべきことは、この荒れ狂う猛獣の背に跨り、手綱を握ること。


わたくしは、迫りくる死のブレスを前に、目を閉じました。

そして、意識を、自らの内側――魂核イドへと深く、深く沈めていきます。


そこには、いました。灼熱の魔力となって荒れ狂う、わたくしの「心の中の猛獣」が。

ですが、もう、わたくしは逃げません。


(来なさい。あなたを、乗りこなしてあげますわ)


わたくしは、その猛獣に向かって、揺るぎない「意志」の手綱を伸ばしました。

心臓の鼓動ビートを、リズムに変える。

呼吸ブレスを、循環ループの起点とする。


吸って――溜めて――吐き出す。

その循環の中で、荒れ狂う魔力は、徐々に、しかし確実に、わたくしの意志に従い始めました。


目を開けた時、目の前には、黒い破滅の光が迫っていました。


ですが、もう、遅くはありません。


わたくしは、大戦斧を構え、その切っ先に、制御下に置いた全ての魔力を、一点へと集束させました。


それは、もはや暴走する拡散の熱波ではない。

破壊のためではない、「守る」ための、完璧に制御された一撃。


「これが――わたくしの『意志』ですわッ!」


わたくしが放ったのは、灼熱の光線でした。

それは、黒いブレスを正面から貫き、霧散させ、一切の勢いを衰えさせることなく、一直線に、天に座すグリフォンの胸元へと突き刺さったのです。


轟音も、爆発もありません。

ただ、静かに。

光が、闇を貫いただけ。


ですが、その一撃は、確かに、混沌の王の動きを、完全に止めていました。

ご覧いただきありがとうございました。感想や評価、ブックマークで応援いただけますと幸いです。また、世界観を共有する作品もあるので、そちらもご覧いただけるとお楽しみいただけるかと存じます。HTMLリンクも貼ってあります。

次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話を更新しています。(Xアカウント:@tukimatirefrain)

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