表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【祝45000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第一章:悪役令嬢イザベラ、ざまぁ婚約破棄を筋力で踏み潰しますわ!
46/118

第四十六話:悪役令嬢、ドレスを捨てる

絶体絶命。

その言葉が、これほどまでにしっくりくる光景があったでしょうか。

退路を断たれ、伝説の魔獣に追い詰められる王子とヒロイン。わたくしの脳裏に、前世で見た乙女ゲームの「バッドエンド」の文字が、赤黒く点滅します。


(冗談では、ありませんわ…!)


このわたくしが、どれほどの努力を重ねてきたと思っているのですか。

毎日の地獄のトレーニング、筋肉との対話、そして、ようやく掴みかけた「制御」への道。その全てが、この一瞬で、水泡に帰そうとしている。


わたくしが、このまま恐怖に竦み、力を振るうことを躊躇すれば、待っているのは確実な「ゲームオーバー」。

ですが、また力を暴走させ、仲間を傷つけてしまったら…?その恐怖が、鉛のようにわたくしの足を縫い付けます。


どうすればいい。

どうすれば、守れる。


その、刹那。

わたくしの視界の端に、必死に剣を構える王子殿下の、震える背中が映りました。

そして、その後ろで、恐怖に顔を歪ませながらも、王子を案じるエリアーナの姿が。


わたくしは、思い出していました。

この学園に来てからの、短いけれど、濃密な日々を。


「筋肉」という万国共通言語で心を通わせた、リョーコ殿。

わたくしを「イザベラ様!」と慕ってくれる、クレメンティーナとダフネ。

わたくしの無茶な指導に、泣きながらもついてきてくれた、エリアーナ。

そして、わたくしの戦いを、その意味不明な理屈ごと、認めようとしてくれた、兄様。


守るべきもの。

父上が言っていた、「力は、守るべきもののために振るえ」という言葉が、脳裏に雷鳴のように響き渡りました。


そうだ。

わたくしは、もう一人ではない。

わたくしには、守りたいと、心からそう思える仲間がいる。


迷いは、消えました。


「――ふふっ」


わたくしは、笑っていました。

恐怖のあまり、ではありません。覚悟を決めた、戦士の笑みです。


「悪役令嬢には、悪役令嬢なりの、戦い方というものがありますのよ」


わたくしは、まず、身にまとっていた学園の制服――その動きにくくて仕方なかった、華美な上着を、自らの手で引き裂きました。


ビリビリッ、という派手な音と共に、窮屈だった肩周りが解放されます。


次に、優雅なスカート。これも、足の動きを阻害する邪魔な布ですわ。わたくしは、その裾を掴むと、太腿のあたりまで、力任せに引き裂き、動きやすいように調整しました。


最後に、髪を留めていたリボンを解き、それで、邪魔になる長い髪を、うなじのあたりで、きつく、きつく結び上げます。


もはや、そこに立っていたのは、ツェルバルク家の令嬢ではありません。

ただの、一人の戦士。

仲間を、そして、自らの運命を守るため、全てを捨てる覚悟を決めた、一匹の猛獣。


わたくしは、大戦斧を拾い上げ、その冷たい鉄の感触を確かめます。


(待っていてくださいまし、みなさん)


わたくしは、グリフォンに向かって、ゆっくりと歩き出しました。


(今から、このわたくしが、破滅という名のシナリオを、根こそぎ、粉砕してご覧にいれますわ!)


わたくしの体から、今までにないほど、膨大で、そして、静かな魔力が、溢れ出し始めていました。

それは、もはや暴走する灼熱の奔流ではない。

確固たる「意志」によって制御された、蒼く燃える、闘志の炎でした。

ご覧いただきありがとうございました。感想や評価、ブックマークで応援いただけますと幸いです。また、世界観を共有する作品もあるので、そちらもご覧いただけるとお楽しみいただけるかと存じます。HTMLリンクも貼ってあります。

次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話を更新しています。(Xアカウント:@tukimatirefrain)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ