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【祝45000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第一章:悪役令嬢イザベラ、ざまぁ婚約破棄を筋力で踏み潰しますわ!
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第四十二話:ラザルスの陰謀、発動

鬱蒼とした森の中、ほとんどの生徒たちが魔獣の気配を探してさまよっている頃。

一人の男が、その喧騒から隔絶された、古代遺跡の最深部に立っていた。


「……あの、脳筋女が…っ!」


ラザルスは、目の前の祭壇に鎮座する巨大な石版を見つめ、歯ぎしりをした。その中央には、まるで巨大な拳で殴り抜かれたかのような、完璧な円形の穴が、ぽっかりと口を開けていた。


彼の部下たちが、恐る恐る尋ねる。

「ラザルス様…これでは、封印の解除は…」

「やるのだ。少々手順が増え、余計な魔力が必要になるだけだ」


ラザルスは、冷静さを装いながらも、その瞳の奥に、煮え滾るような怒りの炎を宿していた。

あのイザベラ・フォン・ツェルバルク。あの女、自分が何を持ち去ったのか、全く理解していないのだろう。あれを魔獣の弱点図などと、本気で信じているに違いない。その底なしの愚かさが、彼の緻密な計画を、根底から揺るがしたのだ。


だが、ここで止まるわけにはいかない。


「詠唱を始めろ。穴の空いた部分は、我々の魔力で無理やり繋ぎ、循環を成立させるのだ」


ラザルスの号令一下、黒装束の部下たちが祭壇を取り囲み、不気味な詠唱を開始した。


彼の狙いは、この演習そのものではない。ましてや、イザベラへの復讐など、些事に過ぎない。

彼の真の目的は、この遺跡に太古の昔より封印されし、伝説級の魔獣「カオス・グリフォン」を復活させること。


そして、その罪を、一人の令嬢に着せること。


(待っていろ、セレスティーナ・フォン・ヴァイスハルト…)


ラザルスの脳裏に、銀髪の美しき令嬢の姿が浮かぶ。

王侯五侯筆頭、ヴァイスハルト家が抱える最大の秘密――その血筋に稀に発現する、規格外の力を持つ存在、「災厄の器」。


カオス・グリフォンが放つ混沌の魔力は、同じく不安定な魂核を持つ「銀髪」のセレスティーナと共鳴するはずだ。演習中に突如として現れた伝説の魔獣と、その傍にいる銀髪の公爵令嬢。誰もが、彼女がその力を暴走させ、魔獣を呼び出したのだと信じるだろう。


そうなれば、ヴァイスハルト家の権威は失墜し、彼の望む新たな秩序への道が開かれるのだ。


「おお、古き混沌の王よ!その枷を解き放ち、今こそ、その翼を天に広げよ!」


ラザルスの詠唱が頂点に達した瞬間、石版が禍々しい光を放った。円形の穴から漏れ出した闇が渦を巻き、祭壇全体が、まるで地震のように激しく揺れ動く。


ゴゴゴゴゴゴゴ……!


やがて、凄まじい破壊音と共に、祭壇の床そのものが砕け散った。

そして、その下にある奈落の闇から、二つの、燃えるような紅い光が、浮かび上がった。


それは、巨大な鷲の上半身と、獅子の下半身を持つ、伝説の魔獣。その体からは、空間そのものを歪ませるほどの、混沌とした魔力が絶えず溢れ出している。


「クァァァァァァァァァァッ!!」


カオス・グリフォンが、天を衝くほどの咆哮を上げた。それは、ただの鳴き声ではない。周囲のエーテルを乱し、森の理を狂わせる、混沌の波動そのものだった。


ラザルスは、自らが解き放った厄災を前に、恍惚とした笑みを浮かべた。


「行け、カオス・グリフォン。お前のための舞台は整えてやった。存分に、暴れるがいい!」


伝説の魔獣は、主の言葉に応えるかのように翼を広げ、遺跡の天井を突き破り、空へと舞い上がった。

平穏だった魔獣討伐演習が、真の地獄へと変わるまで、あと、わずか。




ご覧いただきありがとうございました。感想や評価、ブックマークで応援いただけますと幸いです。また、世界観を共有する作品もあるので、そちらもご覧いただけるとお楽しみいただけるかと存じます。HTMLリンクも貼ってあります。

次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話を更新しています。(Xアカウント:@tukimatirefrain)

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