第三十四話:チーム結成ですわ!
学園祭の門が、その雄大な姿を現しつつありました。わたくしの完璧な構造計算と、兄様の(渋々ながらも)的確な補佐により、作業は最終段階に入っております。物理的な準備が整った今、次に行うべきは組織的な準備に他なりませんわ。
わたくしは、門の建設を手伝ってくれていた者たち――わたくしの地獄の特訓を乗り越え、今や忠実なる舎弟となったクレメンティーナとダフネ、そして「筋肉」という万国共通言語で心を通わせた留学生のリョーコ・シラヌイ――を呼び集めました。
「みなさん、ご苦労様ですわ。門の完成も目前。ですが、我々の戦いはまだ始まったばかりです」
わたくしは、足場の上に仁王立ちし、三人に力強く告げました。彼女たちは、キラキラとした尊敬の眼差しをわたくしに向けております。ええ、ええ、実に良い顔つきになりましたわね。
「本日は、来る魔獣討伐演習に臨む、わたくしのチームの正式メンバーを発表いたします!」
わたくしは最後に、近くのベンチで休んでいたエリアーナを手招きしました。彼女は、先日の一件以来、少しだけわたくしへの恐怖が薄れたのか、おずおずとではありますが、こちらへやってきました。
さて、役者は揃いましたわ。
「静粛に!これより、わたくしイザベラ・フォン・ツェルバルクが率いる最強チームの布陣を発表します!」
わたくしは、まず、隣に立つリョーコ殿の肩を力強く叩きました。
「一人目!我がチームの切り込み隊長!その刃は鋼を断ち、その精神は水鏡の如し!東方の国より来たりし沈黙の戦士、リョーコ・シラヌイ!」
リョーコ殿は、こくり、と静かに頷きました。その瞳には、戦いへの渇望が宿っております。素晴らしいですわ。
「二人目、三人目!」
わたくしは、クレメンティーナとダフネに向き直ります。
「わたくしの地獄の訓練を生き延び、鋼の肉体と不屈の精神を手に入れた忠実なる翼!クレメンティーナ、そしてダフネ!」
「「はっ!イザベラ様のためならば、この身、いつでも捧げます!」」
二人は、美しい角度で一礼しました。ええ、完璧な返事ですわ。
そして、わたくしは最後に、状況が飲み込めずにおろおろしているエリアーナを指し示しました。
「そして、最後のメンバーは!我がチームの戦術を支える頭脳!あらゆる情報を分析し、勝利への道を照らし出す後方支援の要!エリアーナ、あなたですわ!」
「え…?えええええっ!?」
エリアーナが、素っ頓狂な声を上げました。
「む、無理です!わたくし、戦うことなんてできません!足手まといになるだけですわ!」
彼女は必死に首を横に振りますが、わたくしはその小さな頭を優しく撫でて差し上げました。
「ご心配なく。あなたに戦闘は求めませんわ。先日、あなたが重い教科書の束を運べたように、あなたの基礎ステータスは着実に向上しています」
「ですが!」
「あなたの役目は、わたくしが手に入れたこの『攻略本(石版の欠片)』を分析し、後方でわたくしたちに的確な指示を出すこと。すなわち、頭脳労働ですの。筋肉担当のわたくしたちが、あなたを完璧に守りますから、あなたは安心して頭脳を使いなさい。これは、リーダーであるわたくしの、絶対なる命令ですわ!」
わたくしの有無を言わさぬ迫力と、リョーコ殿たちの「決定事項です」という無言の圧力に、エリアーナは「ひっ…」と涙目になりながらも、こくこくと頷くしかありませんでした。
「よろしい!」
わたくしは、集った四人の顔を見渡し、満足げに宣言しました。
「最強の布陣が整いましたわね!これより、チーム・イザベラ、最初の合同訓練を開始します!まずは、連帯感を高めるためのシンクロナイズド・スクワット千回からですわ!さあ、みなさん、ご一緒に!」
わたくしの号令一下、クレメンティーナとダフネが喜び勇んで腰を落とし、リョーコ殿が静かにそれに続く中、エリアーナだけがその場でがくがくと膝を震わせているのでした。
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