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【祝18000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン
第一章:悪役令嬢イザベラ、ざまぁ婚約破棄を筋力で踏み潰しますわ!
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第二話:このゲーム、バグだらけですわ!

わたくしが医務室で「筋肉が足りない」という、この世の真理にたどり着いた翌朝。

兄ヴォルフは、それはもう、見たこともないほど深いため息をついておりました。


「イザベラ。お前、本当に自分が何を言っているのか分かっているのか?決闘に負けたのは、お前の魔力制御が雑だからだ。筋肉ではない」

「まあ兄上、まだそのようなことを。繊細なだけの魔力など、飾り羽と同じですわ。それを支える強靭な肉体があってこそのパワー。ツェルバルク家の基本理念ではございませんか」

「それは戦闘の話だ! 日常から脳みそまで筋肉にするなと父上も言っておられただろうが!」


兄の的確なツッコミも、今のわたくしの耳には馬の耳に念仏、いえ、獅子の耳に小鳥のさえずりですわ。

なぜなら、わたくしの頭の中は、前世の記憶――乙女ゲーム『白亜の塔のエトワール』のシナリオを思い出すことで、いっぱいですもの。


「お嬢様、お目覚めのハーブティーでございます」

忠実なる侍女ブリギッテが、わたくしの言葉を微塵も疑うことなく、湯気の立つカップを差し出してくれます。その上腕二頭筋は、今日も完璧な仕上がりですわね。よろしい。


「ブリギッテ。わたくし、決心いたしましたの。今日から生まれ変わりますわ」

「まあ! さすがはお嬢様! さらなる高みへお進みになるのですね!」

「ええ。手始めに、朝食はプロテインのみ。それから、わたくしの部屋にある装飾品は全て撤去なさい。鍛錬の邪魔ですわ」

「かしこまりました!」

「待てブリギッテ! やめろイザベラ! お前は公爵令嬢だろうが!」


兄の悲鳴をBGMに、わたくしは自室へと戻ると、記憶の整理を始めました。

そうですわ、このゲームの攻略対象は、わたくしの婚約者であるエドワード第二王子を始めとする、きらびやかな殿方たち。

そして、ゲームのヒロインは、平民上がりの特待生、エリアーナ。彼女が様々な困難を乗り越え、殿方たちと恋を育んでいく、王道ストーリー。


その中で、わたくしイザベラの役割は…


序盤: 家柄を盾に、ヒロインであるエリアーナに陰湿ないじめを繰り返す。


中盤: 王子の気を引こうと、ライバル令嬢のセレスティーナに突っかかるも、軽くあしらわれる。


終盤: 王子とヒロインの仲を引き裂こうと実力行使に出るが失敗。学園祭で大失態を演じ、卒業パーティーで過去の悪事を全て暴露され、断罪。家からも追放される。


「…完璧なまでの、破滅ルートですわね」


わたくしは、思わず乾いた笑いを漏らします。

ですが、まあ、悪役令嬢への転生は、今やテンプレ。やるべきことは一つ。この破滅フラグを、片っ端からへし折っていくだけですわ。


…そう、思っていたのですが。


「(それにしても、おかしいですわ…)」


わたくしは、記憶の中のシナリオと、現実の齟齬に首を傾げます。

兄の話によれば、わたくしが眠っている間、婚約者であるエドワード王子が、何度も見舞いに来ていたとか。

おかしいですわね。ゲームの彼は、この時期、すでにヒロインのエリアーナに興味を持ち始めているはず。悪役令嬢であるわたくしなど、体裁のために一度顔を出す程度のはずなのに。


「…ふふ。なるほど、ハニートラップですわね」


そうですわ、きっとそうに違いない。優しさを見せてわたくしを油断させ、破滅への道へと誘い込む、新たなイベント! 姑息な手を!


さらにおかしいのは、ライバルであるセレスティーナ様の動向。

彼女は休む間もなく何かの研究に没頭しているとか。聞けば、ライネスティア家という、これまた厄介な貴族から、何やら陰謀を仕掛けられているご様子。


「ヒロインをいじめている場合ではなさそうですわね…?いえ、これも演技!か弱い令嬢を演じて、わたくしの同情を誘う作戦ですわね!見え透いておりますわ!」


そして、極めつけは、肝心のヒロイン、エリアーナの姿が、どこにも見当たらないこと。

まさか、わたくしが知らない間に、もう退学させられてしまったとでも…?


「シナリオが! シナリオが崩壊しすぎておりますわ!」


わたくしは、思わず叫びました。

これでは、どのイベントが破滅フラグなのか、見当もつきません。


ですが。


「…よろしい」


わたくしの唇に、不敵な笑みが浮かびます。

バグだらけのクソゲーならば、もはや正攻法(シナリオ準拠)など無意味。


「わたくしは、わたくしのやり方で、全ての破滅フラグを叩き折るまでですわ!」


そうですわ。わたくしには、この鍛え上げられた肉体と、ツェルバルク家に伝わる、圧倒的な火力がございますもの。

まずは、敵情視察。そして、怪しいフラグは、芽吹く前に、物理的に、叩き潰す!


「ブリギッテ! ついてきなさい! 学園の視察パトロールに出かけますわよ!」

「はい、お嬢様!」


こうして、わたくしの、全く新しい、脳筋による破滅フラグ回避生活が、本格的に始まったのでございます。

ご覧いただきありがとうございました。感想・評価・ブックマークで応援いただけますと幸いです。

次話は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話を更新中です。(Xアカウント:@tukimatirefrain)

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