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【祝45000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第一章:悪役令嬢イザベラ、ざまぁ婚約破棄を筋力で踏み潰しますわ!
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第十九話:父からの贈り物

ラザルス様が、その氷のような捨て台詞と共に、温室を去っていきました。

後に残されたのは、彼の放った強烈な威圧感と、気まずい沈黙。クレメンティーナとダフネは、小鳥のように震え、完全に戦意を喪失しております。


しかし、わたくしの心は、驚くほど、晴れやかでございました。


「ふふ…ふふふふ。あはははははは!」


わたくしは、思わず、声を上げて笑ってしまいました。

「イ、イザベラ様…?お気を確かに…」

シルヴィア様が、心配そうにわたくしの顔を覗き込みます。


「心配には及びませんわ、シルヴィア様。むしろ、わたくし、今、最高に気分が高揚しておりますの!」

そうですわ!敵!排除!なんと、シンプルで、分かりやすい!

回りくどい言葉の応酬や、腹の探り合いなど、性に合いません。ええ、やはり、こうでなくては。


「魔獣討伐演習、ですって?上等ではございませんか!」


わたくしは、ガタリ、と音を立てて椅子から立ち上がりました。

「ラザルス様が、その自慢の『知略』とやらで、魔獣の群れを指揮なさるというのなら、わたくしは、この『暴力』で、魔獣ごと、彼の計画を粉砕してさしあげるまでですわ!」


その、あまりに物騒な宣言に、クレメンティーナとダフネの顔から、さらに血の気が引いていきます。


「あなたたち、聞いておりますの?」

わたくしが、弟子たちに視線を向けると、二人は「は、はいぃ!」と、裏返った声を上げました。

「この演習は、ただの演習ではございません。わたくしたちツェルバルク派閥の、いえ、わたくしの破滅フラグ回避計画の、雌雄を決する、決戦ですのよ!あなたたちにも、わたくしのチームの一員として、死ぬ気で戦っていただきますわ!」

「「し、死ぬ気で!?」」

「当然ですわ。わたくしの弟子を名乗るからには、巨大な魔獣の一匹や二匹、10メートス先まで殴り飛ばせるくらいでなくては、話になりません」


わたくしが、今後の過酷なトレーニング計画を思い描き、にやりと笑った、その時でした。

温室の入り口に、一人の使用人が、息を切らして立っておりました。


「イザベラお嬢様!お屋敷から、お届け物でございます!」


彼が差し出したのは、ツェルバルク家の紋章が刻まれた、巨大な木箱。大きさは、縦1メートス、横2メートスはございましょうか。

「父上からですの?」


わたくしが、その木箱の蓋を、素手で、バキリと破壊して開けると、中から現れたのは――


鈍い、黒光りする、巨大な鉄の塊。

わたくしの背丈ほどもある、両刃の、巨大な戦斧でございました。


「おお…!」

わたくしは、思わず、感嘆の声を漏らしました。

添えられていた手紙には、父ゴードリィの、力強い文字で、こう記されておりました。


『イザベラへ。

近々、魔獣討伐演習があると聞いた。お前が、学園の備品ばかりを破壊していると、ヴォルフから泣きつかれてな。

これを使え。お前が赤子の頃から、枕元に置いてやった、愛用の戦斧(訓練用)だ。

ツェルバルクの名を、その一振りで、学園に刻みつけてこい。

追伸:最近、プロテインの量を増やしたか?筋肉は裏切らんぞ。

父より』


「父上…!わたくしのことを、分かってくださっているのは、やはり、あなただけですわ…!」


わたくしは、その手紙を胸に抱き、感涙いたしました。

そして、重さ80キロ グアはあろうかという、その愛用の戦斧を、片手で、軽々と持ち上げます。

手に、しっくりと馴染む、この重み。ええ、これこそが、わたくしの魂。


「ご覧なさいな、シルヴィア様。これこそが、わたくしの『論文』。わたくしの『知性』の、結晶ですのよ」


わたくしが、戦斧を、ブン、と一振りすると、風を切る音と共に、近くにあった観葉植物の鉢が、綺麗に真っ二つになりました。


その、あまりに、説得力のある光景に。

シルヴィア様は、ただ、にこにこと、しかし、少しだけ引きつった笑みを浮かべて、こう、おっしゃるのでした。


「まあ…とても、説得力のある、『論文』ですこと…」


ええ、そうですわ。

これで、役者は、揃いました。

待っていなさいな、ラザルス様。

あなたのその、ひ弱な戦略、この一振りで、塵も残さず、粉砕してさしあげますわ!

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