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【祝45000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第一章:悪役令嬢イザベラ、ざまぁ婚約破棄を筋力で踏み潰しますわ!
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第十八話:駒の造反

「そうですわ、シルヴィア様。この、フォークを持つ指の角度。これが、有事の際に、相手の急所を、深さ3センチスまで正確に貫くための、黄金比率ですのよ」

「まあ!なんて、人間工学に基づいた、合理的な作法なのでしょう!」


わたくしとシルヴィア様が、熱心に、茶器の戦術的活用法について議論していた、その時でした。

温室の入り口から、温度のない、しかし、明確な苛立ちを含んだ声が、響きました。


「――ずいぶんと、楽しそうではないか、イザベラ」


そこに立っていたのは、ラザルス・フォン・ライネスティア。

彼は、柱に寄りかかることもなく、ただ、まっすぐに、わたくしを射抜くように見つめております。その表情は、普段の嘲るような笑みではなく、言うことを聞かない駒を、叱責するような、冷たい怒りに満ちておりました。


「君には、もう少し…慎重に行動するよう、伝えておいたはずだが?」

その言葉には、わたくしと彼が、ただのライバルではない、過去の繋がりがあったことを、明確に示しておりました。


ええ、そうですわ。

わたくしは、記憶を取り戻す前、反セレスティーナという、ただ一つの目的のために、この男と、協力関係にありました。彼の知略と、わたくしの(当時は未熟でしたが)行動力。それは、あの氷の令嬢を追い詰めるための、完璧な連携のはずでした。


しかし、今のわたくしには、もはや、彼の計画など、どうでもよいこと。

わたくしの目的は、ただ一つ。破滅フラグの完全粉砕、それだけですわ。


「慎重?何のことですの?わたくしは、わたくしのやり方で、破滅フラグを回避しているだけですわ」

「その、行き当たりばったりの『脳筋』な行動が、我々の計画全体を、どれだけ危険に晒しているか、理解しているのか?」


ラザルスの声に、苛立ちの色が、さらに濃くなります。

「君が訓練場を半壊させたせいで、クロイツェル教授が余計な興味を示した。君があの平民エリアーナに絡んだせいで、エドワード王子の注意が不必要に散漫になっている。そして今度は、中立派のドルヴァーン嬢と無意味な接触…。君は、駒としての自分の役割を、忘れたのか?」


駒、ですって?

わたくしが、誰の駒だと、おっしゃるのですか。


「我々の計画?知りませんわね。わたくしには、わたくしの計画がございますの。あなたの、回りくどいやり方では、破滅は避けられませんわ!」

「…そうか」


ラザルスは、ふっ、と息を吐くと、その表情から、全ての感情を消し去りました。まるで、壊れた道具を見るような、無機質な瞳。

「ならば、もう、君には何も期待しない。君は、もはや、制御不能だ。だが、これだけは、言っておく」


彼は、わたくしたちのテーブルへと、一歩、近づきました。

その場の空気が、一気に、凍てつきます。


「近々、学園対抗の『魔獣討伐演習』が開催される。これは、各家の力が試される、重要な場だ。これ以上、私の計算を狂わせるような、愚かな真似だけはするな」


彼の声は、静かでしたが、その一言一句に、刃のような鋭さが込められておりました。

「もし、この演習で、君が、我々の邪魔をするようなことがあれば――その時は、君を、正式に『敵』と見なし、排除する」


それは、かつての協力者からの、明確な、決別の言葉。そして、宣戦布告。

彼は、それだけを言い残すと、わたくしたちに背を向け、静かに、去っていきました。


後に残されたのは、重い、沈黙。

クレメンティーナとダフネは、ラザルスの圧倒的な威圧感に、完全に、怯えております。

シルヴィア様だけが、心配そうな顔で、わたくしのことを見つめておりました。


しかし、わたくしの心は、恐怖とは、全く、無縁でございました。

むしろ、逆ですわ。


「(敵…?上等ですわ!)」


わたくしは、思わず、笑みを浮かべておりました。

そうですわ、それでこそ、悪役令嬢!敵は、多ければ多いほど、燃えるというものです!


「あなたごと、その計画とやらも、このわたくしの筋肉で、粉砕してさしあげますわ!」


わたくしの、新たな決意。

それは、この学園に、さらなる、混沌の嵐を呼び込む、序曲となったのでございます。

ご覧いただきありがとうございました。感想や評価、ブックマークで応援いただけますと幸いです。また、世界観を共有する作品もあるので、そちらもご覧いただけるとお楽しみいただけるかと存じます。HTMLリンクも貼ってあります。

次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話を更新しています。(Xアカウント:@tukimatirefrain)

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