表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【祝45000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第一章:悪役令嬢イザベラ、ざまぁ婚約破棄を筋力で踏み潰しますわ!
16/118

第十六話:恐怖のお茶会への招待状

あの、魔力の暴走事件から数時間。夜の帳が、王立天媒院を静かに包み込んでおりました。

わたくしは、自室の窓辺に立ち、己の、その手のひらを、じっと見つめておりました。この手が、ほんの数時間前、あの破壊の奔流を生み出した。わたくしの意志とは裏腹に。


「…わたくしの力が、暴走…?」


いいえ、そんなはずはございません。

きっと、そうですわ。昨日のプロテインの調合が悪かったのです。ええ、タンパク質とビタミンの配合比率が、ほんの少し、黄金律からずれていたに違いありませんわ。あるいは、睡眠時間が10分ほど足りなかったか。

そうよ、原因は、コンディションの調整不足。わたくしの力が、未熟なわけでは、決して…。


わたくしは、そう、自分に言い聞かせました。

ですが、一度、心の奥底に芽生えた、小さな不安の種は、そう簡単には、消えてはくれません。まるで、トレーニング後の筋肉痛のように、じくじくと、わたくしの自信を蝕むのでございます。


わたくしが、そんならしくない感傷に浸っておりますと、コンコン、と扉がノックされました。

「お嬢様、お手紙が届いております」

侍女ブリギッテの声でした。彼女が、銀の盆に載せて差し出したのは、一枚の、優雅な封筒。封蝋には、ドルヴァーン公爵家の紋章である、世界樹の枝が刻まれております 。


「シルヴィア様から、ですの…?」


わたくしは、その手紙を開封いたしました。

使われている羊皮紙は、1枚あたり20グラムアはありそうな、極上の品。そこに、流れるような美しい文字で、こう、綴られておりました。


『親愛なるイザベラ様へ

秋風の心地よい季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

つきましては、ささやかではございますが、お茶会を催したく存じます。

イザベラ様の、勇壮なるお話も、ぜひ、お聞かせくださいませ。

ささやかな友情を育む、良い機会となりますことを願って。

シルヴィア・フォン・ドルヴァーン』


「…………」


わたくしは、その手紙を、三度、読み返しました。

そして、先程までの感傷に満ちたわたくしの顔が、瞬時に、戦場に立つ将軍のそれへと、切り替わります。


「(お茶会…! 来ましたわね、中盤の最重要イベント、『淑女の腹の探り合い』が!)」


そうですわ、これこそが、乙女ゲームにおける、中盤の山場!

言葉と視線、そして、テーブルマナーを武器に戦う、高度な情報戦!ここで失敗すれば、わたくしの学園内での社会的地位は失墜し、破滅フラグが、雨後の筍のように乱立することになる!


シルヴィア様は、中立派の筆頭 。彼女を味方につけるか、あるいは、敵に回すかで、今後の展開は、大きく変わってまいります。



これは、ただのお茶会ではございません。わたくしの生存を賭けた、静かなる、戦場なのです!


「お嬢様…?その、鬼のような形相は…」

「ブリギッテ!感傷に浸っている場合ではございませんでしたわ!」


わたくしは、ベッドから、勢いよく立ち上がりました。

「お茶会ですわ!戦の準備をいたします!」

「はっ!かしこまりました!」


ブリギッテは、さすがですわね。わたくしの意図を、瞬時に理解しております。


「まずは、わたくしの戦闘用ドレス(一番動きやすいもの)を用意なさい!それから、護身用に、ティーカップに偽装したナックルダスターと、長さ10センチスの、フォークに見せかけた投擲用のダーツも忘れずに!」

「承知いたしました!すぐに、武器庫へ!」

「待ちなさい、ブリギッテ。武器庫にはございません。わたくしの、裁縫箱に入っておりますわ」

「まあ!さすがはお嬢様!社交の場すらも戦場と捉える、その慧眼!感服いたしました!」


そうですわ。わたくしとしたことが、少し、感傷的になりすぎておりました。

悩んでいる暇があるなら、筋肉を動かせ。それが、ツェルバルク家の教え。

不安があるなら、その原因を、物理的に、粉砕すればよいのです。


ふふふ。シルヴィア様、あなたのお茶会、謹んで、お受けいたしますわ。

このイザベラ・フォン・ツェルバルクが、ツェルバルク流のテーブルマナー(物理)で、あなたを、完膚なきまでに、もてなしてさしあげますことよ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ