表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【祝45000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第一章:悪役令嬢イザベラ、ざまぁ婚約破棄を筋力で踏み潰しますわ!
15/118

第十五話:力の暴走

第十五話:力の暴走

「リョーコ!素晴らしいサポートですわ!今の体勢、わたくしの腹斜筋に、ものすごく効きましたわよ!」


わたくしとリョーコが、東方の国に伝わるという、その、あまりに合理的で、効果的なトレーニングに没頭していた、その時でした。

わたくしの脳内に、一つの、天啓が閃きました。


そうですわ。肉体と、魂核イドから生み出される魔力は、密接に連動している。

ならば、この、完璧な体幹を維持したまま、魔力を解放すれば、その威力と精度は、飛躍的に向上するのではございませんこと?


「素晴らしい…!この調子なら、わたくしの魔力も、さらに高みへと到達できますわ!」


わたくしは、この世紀の大発見を、早速、実践に移すことにいたしました。

「ブリギッテ!リョーコ!ご覧なさいな。これから、この体勢を維持したまま、魔力を練り上げるという、高等技術に挑戦いたします!」


「まあ、お嬢様!なんと素晴らしい探求心でしょう!」とブリギッテは目を輝かせます。

しかし、リョーコは、わたくしの言葉に、初めて、少しだけ、眉をひそめました。彼女は、わたくしの肩を、ポン、と叩くと、静かに首を横に振ります。おそらく、「イザベラ、その力は、危ない」とでも言いたいのでしょう。


ふん、心配には及びませんわ。このわたくしが、自らの魔力を制御できずに、どうするというのです。


「お黙りなさい、リョーコ。わたくしの限界は、わたくし自身が決めますわ!」


わたくしは、再び、リョーコの補助を受けながら、体幹に絶大な負荷のかかるポーズをとります。そして、意識を集中させ、体内の魂核から、マナを練り上げ始めました。

わたくしの手のひらに、灼閃‐レッドの魔力が、小さな太陽のように、収束していく。

完璧ですわ。このまま、出力を安定させれば…


そう、わたくしが、自信を深めた、その、刹那。


ほんの僅かに、足元の小石で、体勢が、ぐらつきました。

その一瞬の隙を、待っていたかのように。わたくしの手のひらにあった魔力の太陽が、制御を失い、牙を剥きました。


「なっ…!?」


ゴオオオッ!


わたくしの手から放たれた灼熱の閃光は、もはや、ただの魔法ではございません。それは、純粋な、破壊の奔流。

狙いも定めず、暴れ狂う魔力は、訓練場の石畳を、まるで飴細工のように融解させ、10メートスほど先にあった、休憩用の石のベンチを、一瞬で、蒸発させました。

熱波が吹き荒れ、クレメンティーナとダフネの美しい髪の毛先が、チリチリと焦げる匂いがいたします。


「きゃああああ!」

「お嬢様!」


嵐は、ほんの数秒で、過ぎ去りました。

後に残ったのは、焼け爛れ、ひび割れた大地と、凍りついたような静寂。


わたくしは、片膝をつき、ぜえ、ぜえ、と激しく肩で息をしておりました。全身から、滝のような汗が流れ落ちます。

魔力を使った疲労感とは違う。まるで、猛獣に振り回された後のような、魂の消耗。


「(今の、は…?わたくしの魔力が…?)」


わたくしは、自らの、震える手のひらを見つめました。

「(違う、これは…わたくしの意志に、逆らって…?そんな、馬鹿な…力が、足りないというのですか…?いいえ、逆…?力が、ありすぎる、と…?)」


リョーコが、駆け寄ってきます。その瞳には、いつもの敬意ではなく、明らかな、心配の色が浮かんでいた。彼女は、わたくしの肩に、そっと手を置くと、もう一度、静かに、しかし、強く、首を横に振りました。その瞳は、「だから、言ったのに」と、そう、語っておりました。


わたくしは、初めて、自らの力の底に潜む、暗い淵を、垣間見たような気がいたしました。

筋肉だけでは、解決できない、問題。

その、不吉な予感に、わたくしの背筋を、冷たい汗が、つう、と流れていったのでございます。

ご覧いただきありがとうございました。感想・評価・ブックマークで応援いただけますと幸いです。

次話は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話を更新中です。(Xアカウント:@tukimatirefrain)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ