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【祝45000PV】転生悪役令嬢イザベラ、婚約破棄も魔法も筋肉で粉砕します!  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第一章:悪役令嬢イザベラ、ざまぁ婚約破棄を筋力で踏み潰しますわ!
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第十三話:脳筋、国境を越える

エドワード殿下との、あの白熱した追いかけっこから数日が経ちました。

殿下は、あれ以来、わたくしを見るたびに、何か言いたげな、しかし、どこか熱っぽい視線を送ってくるようになりました。ふん、わたくしの圧倒的な身体能力の前に、己の無力さを悟り、迂闊に手出しできなくなったのでしょう。ええ、全ては計画通りですわ。


わたくしの学園生活は、盤石なものとなりつつあります。

「イザベラ様!本日も、腕の筋肉の仕上がりが完璧ですわ!」

「背中の広背筋が、芸術品のようです!」

弟子となったクレメンティーナとダフネも、当初の弱音はどこへやら、今ではすっかり、わたくしの肉体を賛美することが日課となっておりました。実に良い傾向ですわ。


その日の午後、わたくしは、弟子二人を伴い、騎士団の訓練場を間借りしておりました。

目的は、もちろん、トレーニング。

「よいですか、二人とも。今日は、この訓練用のゴーレムを、魔法を使わずに、物理的に、行動不能にしてみせますわ。力の正しい使い方というものを、その目に焼き付けなさい」


わたくしが、重さ500キログアはあろうかという訓練用ゴーレムの前に立った、その時でした。

ふと、訓練場の隅から、強い視線を感じたのです。


そこに立っていたのは、小柄な、しかし、全身からただならぬ覇気を放つ、一人の女子生徒でした。

艶やかな黒髪を、高い位置でポニーテールに結い上げ、わたくしたちとは少し意匠の違う、動きやすそうな制服を着こなしております。彼女は、我が国とは海の向こうにある、海洋州からの留学生だと、噂で聞いたことがございますわね。


彼女は、わたくしがゴーレムの腕を掴み、力任せにその体勢を崩す一連の動きを、食い入るような、真剣な眼差しで見つめておりました。

その瞳には、他の生徒たちのような、恐怖や侮蔑の色は一切ございません。

あるのは、ただ、純粋な、憧れと、敬意。


わたくしが、ゴーレムを地面に組み伏せると、その留学生は、ゆっくりと、こちらへ歩み寄ってきました。

そして、わたくしの目の前で、ぴたり、と足を止めると、東方の国独特の、深く、美しいお辞儀をしてみせたのです。


わたくしが、眉をひそめて、その意図を測りかねていると、彼女は、すっ、と顔を上げました。

そして、言葉を発することなく、わたくしの、たくましい上腕二頭筋を、その細い指で、くい、と指し示し――


親指を、ぐっと、立ててみせました。


「…………!」


わたくしは、衝撃に、言葉を失いました。

こ、この女…分かっておりますわ…!わたくしの、この、完璧に鍛え上げられた肉体の、その価値を!


留学生は、にこり、と笑うと、今度は、わたくしたちに見せつけるように、その場で、ふわり、と宙を舞いました。

小柄な体は、まるで重力など存在しないかのように、高さ5メートスはあろうかという訓練場の壁の頂上まで、軽々と駆け上がり、トン、と静かに着地してみせたのです。


その、人間離れした身体能力。

わたくしの口元に、自然と、獰猛な笑みが浮かびました。


「ほう…!あなた、なかなか、やりますわね!」


彼女は、壁の上から、再び、わたくしに、にこりと笑いかけます。

ああ、なんと、なんと、素晴らしい!

言葉など、不要!思想も、文化も、関係ありませんわ!

この世で、ただ一つ、信じるに足るもの。それは、国境を越え、全ての人々を繋ぐ、共通言語!


そうですわ…!


「――筋肉に、国"境は、ございませんことよ!」


わたくしは、天に向かって、高らかに叫びました。

壁から飛び降りてきた留学生の手を、わたくしは、がしりと、力強く握ります。


「気に入りましたわ!あなた、お名前は?」

彼女は、首を傾げながら、「りょーこ…しらぬい」と、たどたどしく、そう名乗りました。


「リョーコ!結構ですわ!あなたも、今日から、わたくしの弟子です!共に、至高の肉体を目指し、この軟弱な学園に、革命を起こしましょう!」


わたくしの言葉に、リョーコは、満面の笑みで、力強く、何度も頷いております。

ああ、なんと、素晴らしい出会いでしょう!

わたくしの、輝かしい破滅フラグ回避計画に、また一人、頼もしい仲間が加わった、記念すべき瞬間でございました。


その後ろで、クレメンティーナとダフネが、「わたくしたちのトレーニングが、さらに過酷になるのでは…」と、顔面蒼白になっていることなど、今のわたくしには、些細なことでした。

ご覧いただきありがとうございました。感想・評価・ブックマークで応援いただけますと幸いです。

次話は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話を更新中です。(Xアカウント:@tukimatirefrain)

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