電装1 電脳界の救世主
リアルワールドでは、仮想空間のバースシステム、バースプログラムを組み込んだバーチャル内に自身のアバターを進入する事が可能な電子科学時代である。
某者製、某バースの仮想空間体験がブームの世の中――。
日本に最新鋭電子プログラムを開発した企業団体『ソルデラ』。
ZORDELAコーポレーションは、電子開発の新ナノマシン構成体『ジェニリウム』を発表。
新物質から人工細胞との集合体ジェニロンをニューマテリアルとして導入した。
その結果、ジェニバース空間の開設に成功。海外メディアにもその新物質とジェニバースの存在を告示したのだった。
子供たちのGW、夏期休暇、冬期休暇をねらって、ジェニバース体験パビリオンを建造、そのアトラクションパークの開園を試みたのである。
欧州、ロンドンバース開発企画班、日本チーム『イレフス』。地球全域に流行したジェニバースやソルデラの株式市場が上っていることから日本チームは、気持ちが不安定になった。
「ソルデラCEOの真壁径孝。奴は許せぬ。イレフスが他企業バース潜入の開発を急がねはな。そして、バース制圧後にはイレフスの超巨大パビリオン、『イレフス・フロンティア』の建造へと変換してみせよう」
イレフス日本チーム代表『グレイヴァー獅子山』は、早速バース制圧のため、電子プログラム潜入のソリッドを組み込む作業を急がせた。
日本チームの企業を構えるイギリスは日本電子企業よりも開発後進国なので、ロンドン本部も日本支部を応援しつつ、グレイヴァーに肩入れしたのだった。
ロンドンバース開発の一歩は、日本の第一位企業ソルデラのメインコンピューターの制圧だった。そこまでして日本の第一位を手にしようと必死でいた。
ロンドンバースCEO、ドアルグ・ファリワスがグレイヴァーに勅命した。
「グレイヴァー・獅子山。お主は、これより敵企業のソルデラを落とすのだ。第二位になるのは落ちこぼれの企業に過ぎぬ。どんな手を使ってもいい。とにかく日本を落とす事に集中せよ」
「はい、仰せのままに」
ロンドンバースが用意した潜入可能な武装勢力ドアルグアーマーをバーチャル内に組み込む作業に集中した。
グレイヴァーは、これを成功させる事が愉快に思えた。
真壁一閃。径孝の甥っ子。バース内緊急アバタリングチームのスタッフ。
アバタリングとはバーチャル内でのアクシデントやエラー箇所を潜入補修する事。補修社員はパビリオン施設スタッフとして電脳界管理しているのだ。
「一閃チーフ、トーイキューブのモニュメントに迷子のような児童を発見。キューブは異変を反応してませんから、アバタ―がこのまま動かなければ安全確保できます」
「キミはそのモニターを離さず索敵にかかれ。ひとまず、キューブアドレスに潜入してみよう」
「チーフ自らですか?」
「この部屋は今は我々二人だけだろ? なら行くしかないさ」
「チーフ」
「案ずるな。この仕事終わったら横浜のシウマイをおごってやるさ」
「あたしの好物をなぜ?」
「話は後回しだ。仕事を続行しろ」
一閃は、スタッフ用アバターブースに入り、自身のアバターリンク先へと意識をジャンプさせてみた。
そんな時だった。神奈川県に震度5強の地震が発生、耐震に弱いアバターブースが物凄く激震した。
「うわああああ!!」
5強の揺れは、1分40秒は続いた。それからは微震になり次第に弱まってきた。
「チーフ、大丈夫ですか?」
そのブースは透明ガラス張りのカプセル型なのだが、激震後のそれは、完全密閉容器のようなシェルターが被さっていて、中の人間の安否確認は不可能だった。
『いっせん……一閃よ。よく聞け。わたしだ。径孝だ。お前は、これより、ロンドンバースの潜入という野望を阻止する為、バース空域で救世主に変身して、バースを乱す不届き者を排除するのだ。今からその変身プロセスを脳に送り込む。さぁ、戦士ジェナヴァーダへと覚醒せよ!!』
シェルター化したカプセルの中の声を聞いた一閃。叔父の声がやんだ後、青年は脳内学習された意味不明的な知識通りに実践する事にしたのだった。
「電装、ジェニフォーム!! とぅあー!!」
トーイキューブのあるキューブアドレスには、既に児童がドアルグアーマーという鉄甲兵士に捕まってしまっていた。
「た、た……たすけてーー!!」
「叫んでも無駄だ。助けなんて来るものか〜。ましてこのジェニバースではアバター個体を接触して護衛するのは不可能かもしれんからなぁ」
「そいつはどうかな?」
「ん? 何奴? 誰だ、お前は」
「俺は鉄甲電神ジェナヴァーダ とぉっ!!」
高台的な高所から地平面に着地した戦士。
これから、ジェナヴァーダによる潜入分子排除の戦いが始まろうとしていた。