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「ニノンに、オデット……」
「ええ、そうですが、どうかなさいました?」
思わず二人を凝視してしまった。
この二人は、『星姫のミラージュ』で、悪役令嬢リリアーヌの取り巻きだった子達だ。
入学当初から綺麗なものが大好きなリリアーヌが気に入って、そばに置いていた。
ニノンとオデットは、いつもリリアーヌの後ろからヒロインのステラを攻撃していた。
しかし、リリアーヌを常に持ち上げ、何かとおだてては媚びを売っていたこの二人が、漫画の終盤であっさりとリリアーヌを裏切ってステラの味方につくことを、私は知っている。
最初からリリアーヌ様なんて嫌いだったんです、なんて捨て台詞を吐いて。
「リリアーヌ様、大丈夫ですか? もしや、まだ体調が悪いのでは」
「なんだか昨日から様子がおかしくありませんか? 午後に登校してきたと思ったら、私たちに視線も向けずに帰ってしまいますし」
「え、ええ。大丈夫よ! 体調の方ももう平気!」
私はどうにか落ち着きを取り戻して言った。
二人はそれならよかったです、なんて、しらじらしく言ってくる。
それからニノンとオデットは、にこやかに自分の席に戻っていった。
私はとりあえず二人から離れられて安堵の息を吐く。
それから動揺を抑えて、再び教科書に目を移した。
あの二人とのつき合い方も、今後は考えなければならない。
***
「あー、疲れたぁ」
昼休み、校庭に出てきた私は思わず大きく伸びをした。
午前中の授業はとても大変だった。
いつもは適当にしか聞いていない授業を頭をフル回転して聞いていたせいで、まだ頭がぐるぐるしている。
私が真面目に授業を聞いているのを見て、先生やクラスメイトがいちいち驚きの表情を向けてくるのにも疲れた。
ようやく休み時間になり、肩から力が抜ける。
「どこか座れるところはないかしら」
私は校庭をきょろきょろ見回した。
リリアーヌはいつも取り巻きの二人と食堂でお昼を食べていた。
けれど、前世で読んだ漫画の展開を思い出した私は、二人と一緒に食事をするのが気が進まなかった。
笑顔の裏で、きっとリリアーヌを馬鹿な令嬢だと蔑んでいるんだろうと思うと、嫌な気分になる。
それで理由をつけて、一人で校庭に出てきてしまったのだ。