11-7
エトワールの建物を出ると、私たちは再び馬車に乗り込んだ。窓の外を眺めながら、ジェラール様が口を開く。
「リリアーヌ、次は魔獣園に行ってみないか。あそこは女性に人気だと聞いた」
「まぁ、魔獣園! 最近ドラゴンの赤ちゃんが生まれて話題になっていたところですわね! ぜひ行ってみたいですわ」
思わずはしゃいだ声を上げてしまった。魔獣園とは、前世の日本の動物園みたいなもので、動物の代わりにドラゴンやユニコーン、ケルベロスなど、珍しい生き物がたくさんいる施設だ。
最近、そこでドラゴンの赤ちゃんが生まれたことが話題になっていた。
話を聞いたときから、ドラゴンの赤ちゃんなんてぜひ見てみたいと思っていた。まさかジェラール様が提案してくれると思わなかったけれど、誘ってくれるなら遠慮なく行かせてもらいたい。
「よかった。なら、早速行こう」
ジェラール様は微笑んでそう言った。
再びわくわくした気分が戻ってくる。私は魔獣園に着くのを楽しみに馬車に揺られた。
しばらくすると、馬車は魔獣園の前に到着した。
「リリアーヌ、こっちだ」
「はい!」
私はジェラール様に続いて施設の中へ足を踏み入れる。一歩門をくぐると、早速いくつもの魔獣の檻が目に飛び込んできた。
あの檻に寄りかかって眠っているのはケルベロスで、大きな檻の上空を勢いよく飛び回っているのはワイバーンだろうか。
珍しい生き物たちに心が躍る。私はわくわくしながら言った。
「すごいところですわね! ドラゴンの赤ちゃんも早く見てみたいです。一体どんな風なんでしょうね? 小さくてもやっぱり強いのかしら。楽しみですわ!」
「ああ、そうだな」
「ドラゴンのほかにも、ユニコーンやグリフォンなんかもいるんですってね。全部見てみたいですわ。……あら? ジェラール様、こちらで道はあってます?」
ジェラール様は魔獣園の入り口ではなく、裏の方へ進んでいるように見えた。不思議に思って尋ねると、ジェラール様は言う。
「今日は裏から通してもらう予定なんだ。私たちが一般客に混じって回るのはまずいだろう」
「確かにそうですわね」
言われてみれば、王子殿下やら公爵令嬢やらが一般客と同じように魔獣園を歩いていたら騒ぎになりそうだ。私は納得して彼の後に続いた。
ついたのは、魔獣園の中にある事務所のような場所だった。
中に入ると、スタッフが応接室のような場所へ案内してくれる。
そこにはスーツを着た白髪交じりの男性と、数人のスタッフらしき人がかしこまった様子で並んでいた。
部屋の真ん中にあるテーブルの上には、大きな木箱のようなものが置いてある。
「あの、ジェラール様、これは……?」
「私たちが来ると聞いて準備しておいてくれたらしい」
「準備?」
私は不思議に思いながら彼らを見つめる。すると、白髪交じりのスーツの男性がこちらへ近づいてきた。