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「まぁ、監禁されたらその時はその時ですわね。もしアベル様がいなくなったら捜索して差し上げますわ」
「そんなあっさり……」
アベル様は恨めしげに私を見る。
それからふと思い出したように言った。
「……そういえば、この前リリアーヌの教室に来たとき、ステラ嬢がリリアーヌの机をじっと睨みつけていたことがあったな」
「え、私の机ですか?」
「うん。見た感じ睨みつける以上のことはしてないみたいだったけど。最近何かおかしなことはなかった? 物がなくなったりとか」
「いいえ、特に。教科書もノートも全て持ち帰っておりますから」
「そっか、それはよかった。でも、リリアーヌも気を付けておいたほうがいいかも。あの子、リリアーヌにもなんだか思うところがありそうだから」
アベル様は真面目な顔で言った。
私はちょっと寒気がしながらも、その言葉にうなずいた。
***
そうしてついにテスト当日。
私ははりきって学園に向かった。
(今回はいける気がするわ! 全体で10位以内に入れる気がする!)
今回は前回以上に頑張った。それに前世の記憶を取り戻したばかりの前回と違い、二回目の今回はこの世界のテストにも慣れているから、うまくいく気がする。
そんなことを考えながら、教室まで歩いていく。
教室につくと、早速最後のおさらいをするために鞄から教科書を取り出した。ちょっとあやふやな箇所があるから今のうちに見ておかないと。
すると、机の中から何かが滑り落ちる。
「何かしら?」
私は首を傾げてそれを拾った。
「『リリアーヌ、テスト期間中にごめん。ちょっと困っていることがあるんだ。どうしても今相談したいから、西側の倉庫まで来てほしい。 アベル』……まぁ、なんですの、これ! ごめんじゃないですわ。私は最後のおさらいで大忙しなのですわ!」
私は手紙を読んで顔を顰めた。
テスト当日の私が切羽詰まっていることは予想できるだろうに、なぜわざわざ今呼び出してくるのか。しかし、こんな手紙まで用意して頼んでくるということは、よほど深刻な悩みなのかもしれない。
テスト期間中、ずっと親身になって勉強につき合ってくれたアベル様のことを思い出すと、放っておけない気分になる。
「……仕方ないですわね。さっさと行って戻って来ましょう」
私は急いで教室を飛び出した。それから駆け足で校庭の端にある倉庫まで向かう。
(それにしてもなんで倉庫なのかしら……?)
なぜわざわざそんな場所に呼び出すのか疑問だったけれど、深く考えず急いでそちらへ向かった。




