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そう考えていたある日のこと。少々気になる出来事が起こった。
それは学園で全校集会が開かれた日のこと。
私たち生徒は学園のホールに向かい、席に座って学園長先生の話を聞いていた。
この学園には集会を行うホールにも席があるので座って聞けてありがたい。ホールはコンサートホールのような造りになっているのだ。
前世で体育館の床に体育座りさせられていた集会とは大違いだ。
私がふかふかの座椅子に改めて感動していると、壇上にジェラール様の姿が見えた。
第一王子であるジェラール様は、集会等で挨拶する機会も多い。
彼の姿が見えた途端、女子生徒たちが途端に色めき立つ。
私は特に興味もなく、壇上で話すジェラール様を眺めていた。
集会が終わり、ニノンとオデットに挟まれて廊下を歩いていると、横から賑やかな声が聞こえてきた。
視線を向けると、ステラと、ステラが特に仲良くなったらしい子爵家と男爵家のご令嬢たちが話している。
「あれがジェラール王子殿下なのですね! この学園にいらっしゃるとは聞いておりましたが、実際にお姿を見ると衝撃でした!」
「ステラさんはまだジェラール殿下にお会いしたことがなかったのですね」
「ステラさんも、そのうち合同授業か何かで間近に見られることがあると思いますわよ」
興奮気味に話すステラに、周りの子たちが微笑ましげにジェラール様のことを話している。
「会えるでしょうか。ぜひ近くで拝見してみたいです」
「きっと会えますわ。ステラさんは可愛らしいから、ジェラール様も気に入ってしまわれるのではないかしら」
「ジェラール様とステラさんが並んだら、美男美女でよく似合いそうね」
「そ、そんなこと! 恐れ多いです!」
ステラは両手を振って恐縮している。
私の横にいたニノンとオデットが、不機嫌そうに「何馬鹿なことを言ってるのかしら」とぶつぶつ文句を言うのが聞こえた。
すると、廊下の向こうが突然何やら騒がしくなった。
視線を向けると、そこには周囲のざわめきを気にも留めない様子でつかつか歩くジェラール様がいた。
「ステラさん、ジェラール殿下よ!」
「話していたそばからご本人を間近で見られるなんてラッキーね!」
ステラの横にいた子たちが興奮気味に言う。ステラはこくこくうなずいて、うっとりした眼差しでジェラール様を見た。
私はそんな光景を特に興味もなく眺める。
すると、周りに一切関心を払う様子なく歩いていたジェラール様が、突然私の前で足を止めた。
何事かと私は固まる。
「リリアーヌ。以前言っていた勉強のほうはうまく進んでいるのか?」
ジェラール様は表情を変えないままそう尋ねてきた。
周囲のざわめきが大きくなる。
私は困惑しつつ口を開いた。
「ええ……。順調に進んでおりますわ」
「そうか。それはよかった」
ジェラール様はそう言って微笑む。その笑顔に周りが騒ぎ出す声が聞こえてきた。




