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アベル様のことはさておき、その日から同じ教室にステラがいる生活が始まった。
ステラは外見だけでなく、中身もいかにもヒロインという感じの子だった。
明るく元気で、常に表情がくるくる変わる。
美少女で人当たりのいいステラは、あっという間に人気者になった。
最初は孤児院出身の出自のあやふやな子だと警戒していたクラスメイトたちも、ステラの邪気のない態度にどんどん毒気を抜かれていく。
ステラが転校してきてから二週間が経つ頃には、ほとんどのクラスメイトが彼女に陥落していた。
ただし、ニノンとオデットを除いて。
「リリアーヌ様、あの女本当に調子に乗ってますわね。元平民のくせに元から貴族でしたみたいな顔で平然と学園に通ってきて腹立たしいですわ」
「あの媚びた態度、何とかなりませんの? 高位貴族には態度が変わるんですわよ。あさましいですわ」
二人は私の前で、窓のそばで人々に囲まれているステラを見ながら、不快そうに言う。
「いいじゃありませんの。悪いことをしているわけではないのだし」
「でも、見ているだけで不愉快ですわ!」
「リリアーヌ様、ちょっとあの方にわからせてやりません?」
二人は不満そうに言う。
私は青ざめて首をぶんぶん横に振った。
そんな恐ろしいことできるはずがない。ステラに嫌がらせなんてしたら、原作漫画の通り没落一直線だ。
「お二人とも、馬鹿なことを考えてはいけませんよ」
私は内心冷や汗をかきながら釘を刺しておいた。取り巻き二人がステラに何かしたことで、私が命じたのではないかなんてあらぬ疑いをかけられるのは御免だ。
二人は不満顔のままだったけれど、リリアーヌには逆らえないのか渋々と言った様子でうなずいていた。
それからも、ステラが入ってきただけで、特に普段と変わらない平穏な毎日が続いた。
私はステラに極力関わらないように過ごしている。原作漫画のように意地悪をすることもなければ、周りの生徒たちのように彼女と仲良くすることもない。
そのおかげで今のところ私とステラの間には何の問題も起こっていない。
このまま無事に学園を卒業できたらありがたい。




