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それから私たちは、ほかのアクセサリー店を回ったり、お洒落なカフェに行ったり、新鮮な食材の並ぶマーケットを歩いたりと、市場の色んなお店を見て回った。
普段はなかなかできない体験にわくわくしてしまう。
通りには冒険者用の魔道具店なんてものもあった。随分と賑わっていたので気になって入ってみると、小さなナイフや、丈夫な鞄、携帯用ランプなんてものが売っている。
興味津々でランプを手に取ってみたら、やけにちゃちな造りで、ただ触っていただけなのに持ち手がパキリと折れてしまった。一応弁償して出てきたけれど、質の悪さに呆れてしまった。
庶民のお店には色々あるのだなと思い知る。
いいものから粗悪なものまでたくさんあるけれど、普段見られない商品を見るのはなかなか楽しい。
「あー、楽しいですわ! 庶民の娯楽も悪くありませんわね!」
「リリアーヌ、また高慢な言い方になってるよ!」
「ええっと、……こういう素朴な場所も悪くありませんわね! 貴重な体験ができて勉強になりますわ!」
私は慌てて言い換える。
どうも私の言葉には、ナチュラルに高慢お嬢様風の嫌味っぽさが混じってしまうようだ。
漫画で悪役令嬢役のキャラとして作られたせいだろうかと、原作漫画のせいにしてみる。
将来破滅するのを防ぐためにも、言動にも気をつけたほうがいいかもしれない。
「それにしても、同じような値段の店でも色々ありますのねー」
私は今日見てきたお店を思い浮かべながら呟く。
たとえば、最初のアクセサリー店は安価で質のいいものを売っていたけれど、先ほど入った魔道具店では値段相応どころか値段よりもちゃちな商品を売っていた。
そしてものがよければ売れるわけではないらしいことも不思議だった。最初のアクセサリー店より魔道具店の方がずっと賑わっていたのだ。
そう話してみると、アベル様はうなずく。
「そうだね。あの魔道具店は宣伝がうまいよね。試供品を配ったり、一度買い物したお客さんには割引する代わりに住所を聞いて宣伝の手紙を送ったり」
「なるほど、宣伝の違いですのね。あんな壊れやすい商品を売ってる店が繁盛して、値段以上のアクセサリーを売ってる店が閑散としてるなんて世知辛いですわねー」
「あはは、でもあの魔道具店、冒険者たちには重宝されてるんだよ。冒険者が必要なものを常に一定量取り揃えているし、系列の店が色んな街にあるし。そもそも冒険者は旅の過程で一度しか使わない物が必要になることも多いから、商品の作りがそれなりでも大きな問題はないんだ」
「まぁ……。そう言われると悪くない店に思えてきましたわ……。むしろ、最初のアクセサリー店の営業努力が足りない気もしてきました。店員も不愛想でしたし!」
「リリアーヌ、影響されやすすぎない?」
アベル様はけらけら笑いながら言う。




