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6-3

***


 馬車に揺られること約一時間。私たちは、無事シャリルの市場に到着した。


「まぁ、随分と明るい場所ですのね!」


 私は目の前に広がる光景を見て声を上げた。


 シャリルの市場はとても広くて、親子連れから老人まで幅広い種類の人がいて、大変明るい場所だった。


 市場があること自体は知っていたけれど、公爵令嬢の私が自分でこのような場所に買い物に来ることなんてないので、実際に見るのは初めてだ。


 私は興味津々で辺りを眺める。



「リリアーヌ、まずはどこへ行く?」


「じゃあ、あのお店に入ってみたいですわ!」


 私はすぐさま前方に見える小さなお店を指さした。


 薄茶色の壁にくすんだ赤い屋根の簡素な店だ。看板にはアクセサリーの販売店と書かれている。


 私が普段利用する高級店とは違う、庶民のお店。どんなものを売っているのか気になる。


「やっぱりリリアーヌはアクセサリーが気になるんだね。じゃあ、最初はあの店に行ってみようか」


 アベル様はそう同意してくれた。


 私はわくわくしながら、その店に足を踏み入れる。



「たくさんありますのねー」


 お店の中には、青い魔石の埋め込まれたブレスレットや星の形のイヤリングなど、たくさんのアクセサリーが並んでいた。


 その中にはイミテーションジュエリーのネックレスもあって、シルヴィが言っていたやつだわ、と妙に感動してしまった。


 祭典の日はこのお店のイミテーションジュエリーもよく売れるのだろうか。



 手に取ってじっくり眺めてみる。


 庶民の店だからそんなにいいものは売っていないだろうと思っていたのに、手に取ったネックレスは、意外なほど良質に作られていた。


 ほかの商品も手に取って眺めてみるが、どれも同じようにきちんと作られている。素材は安い魔石や偽物の宝石を使っているようだけれど、丁寧な造りのせいか高級感を纏っている。



「庶民のお店ですからたいしたものは売ってないと思いましたのに、意外と悪くない商品も売っているのですわね! 質素な外観からは想像できない商品で驚いてしまいましたわ!」


「ちょ、ちょっとリリアーヌ、声が大きいよ!」


 私が精巧に作られたブローチを眺めながら感心して言うと、アベル様に慌て顔で咎められた。


 店番をしているお店の人から、微妙な視線を向けられる。


 ……何かまずいことを言ったかしら。


 アベル様に手を引っ張られ、私たちは早足でお店を後にした。



「リリアーヌ、もうちょっと言葉を選ばなきゃだめだよ」


「私、何かまずいことを言いました? 褒めたつもりでしたのに」


 アベル様の言葉に首を傾げる。


 質素な外観からは想像できないほどいい商品だと思ったから口に出しただけなのに、いけなかったのかしら。



「質素な外観とか、たいしたものを売ってなさそうだとかは褒めてないって。平民に上から目線な発言をする貴族なんて一番反感を持たれるんだから、誤解されるような言動は避けないと」


「そ、そうですの……? まぁ、言われてみればそうですわね……。わかりましたわ、気をつけます」


 言われてみれば、確かにあの言い方はまずかったかもしれない。


 私は年下のアベル様に注意されたことに若干ふてくされながら謝る。


 アベル様は素直に謝る私を、生意気にも偉い偉いと褒めてきた。


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