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5-7

「ろ、65位……!」


 出てきた順位にがっくり肩を落とした。


 結果は92人中65位。前回は84位だったので上がっていることは上がっている。


 けれど、10位以内には程遠い数字だ。


 あんなに勉強した結果がこれだと思うと落ち込んでしまう。


 涙目で票を見ていると、一つの教科が目に留まった。



「あれ……? 10位のがある……」


 私はその項目を凝視した。


 低い順位の並んでいる中で、経営学の順位だけが異様によかった。


 私は慌てて答案用紙を封筒から出した。


 ほとんどの問題が正解になっている。名前もちゃんと自分のものだ。間違いではないみたい。


 私は両手で口元を押さえ、感動に打ち震えた。


 なんだろう、これ。すごく嬉しい。


 結果が出るって楽しい……!!



「リリアーヌ様、結果どうでした? 私はいつも通り中途半端な順位でしたわー」


「私もです。でも、私たち貴族令嬢はどうせ卒業後はどこかに嫁入りしますし、こんなの適当でいいですわよね」


 休み時間になるとニノンとオデットが私の机のそばまで来て、気の抜けた声で話しだした。


 私は二人に適当に返事をすると、封筒を持って駆け出す。



 廊下を駆け抜けて、中等部校舎まで向かった。


 こちらの校舎へ来るのは、中等部を卒業して以来初めてだ。


 休み時間中の中等部の生徒たちは、高等部の制服を着た私が廊下を駆けていくのを不思議そうに見ている。


 人々の視線を気にせず走り、中等部三年生の教室まで向かった。



「アベル様っ!」


「え、リリアーヌ?」


 教室の前に着くと、アベル様が男子生徒たちに囲まれて笑顔で話していた。


 私が呼びかけると、アベル様は驚いたようにこちらを見て、私の方まで駆けてくる。



「リリアーヌ? 中等部校舎まで来るなんて一体どうし……」


「やりましたわ、私! 10位以内に入れました!!」


 私はあまりに嬉しくて、こちらに駆けてきたアベル様に無意識のうちに抱き着いた。


 アベル様の体がびくりと動き、こちらへよろめく。



「アベル様のおかげですわ! アベル様にもらった本に書いてあったところがたくさん問題が出たんですの! 本当に嬉しいですわ!」


 私はアベル様に抱き着いたまま、興奮気味に報告する。


 しかし、アベル様はなかなか返事をしてくれなかった。体は硬直したように動かない。


「アベル様?」


「リ、リリアーヌ……」


 不思議に思って顔を覗き込むと、アベル様は顔を真っ赤にしていた。


 目をじっと見つめると、慌てたようにぱっと逸らされる。



「えっ、何を赤くなってらっしゃるんですの。婚約しようだとかリリィには僕が合ってるだとか散々言ってきたくせに」


「だ、だって、自分から行く分には恥ずかしくないけど、リリアーヌから来られると照れる……」


「なんですの、それ」


 私は顔を手で覆って動揺しているアベル様を見て呆れてしまった。


 一体どういう心理なのだ。

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