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そんな風に問題と格闘しているうちに、その日のテストは全て終了した。
私はぐったりと机に上半身を倒す。
「つ、疲れた……!」
頭をたくさん使ったので本当に疲れた。
けれどその分達成感もある。リリアーヌの人生でこんなに努力したのは初めてなんじゃないだろうか。
まだテストは数日間残っているけれど、明日以降もがんばろう。
私はそんなことを考えながら体を起こす。
すると、予想外の声が飛んできた。
「リリアーヌ! テスト終わった? お疲れ様!」
「ちょっとアベル様! なんでここにいるんですの!」
達成感に浸っていたところで、急に廊下側の窓の向こうからアベル様に声をかけられた。
なぜ中等部のアベル様がまた高等部校舎にいるのだ。
突然現れた第二王子に、周りの生徒たち、主に女子生徒たちがきゃあきゃあ騒ぎ始める。
「リリアーヌに会いに来たに決まってるじゃん。中等部のテストは早めに終わったから、高等部の方が終わるのを待ってたんだ」
「待たなくていいのに……。何か用でもあるんですか?」
「ううん。ただリリィに会いたかっただけ」
アベル様は少し首を傾げて、甘ったるい笑みを浮かべながら言う。
後ろで女子生徒たちが黄色い悲鳴を上げるのが聞こえてきた。
「そうですか。私は明日からのテスト勉強があるので、失礼させていただきますわ」
「えっ、一緒に帰ろうよ! 今日も馬車に乗せてあげるよ? この間、王宮の馬車を椅子がふかふかだって気に入ってたじゃん。僕の方に寄りかかって眠りこけるくらい寛いで!」
アベル様は不満そうに言う。
私はこの前馬車で寝ていたのだろうか。うとうとした覚えはあるけれど、眠っていた自覚はなかった。
周りできゃっきゃと騒いでいた女生徒たちが、「どういうことかしら」「リリアーヌ様、まさかアベル様に心変わりを……?」なんてざわめき出す。
私はその声をかき消すようにアベル様に向かって言った。
「いりませんわ! 今日は一人で帰ります!」
「えー! 待ってよ、リリィ!」
私は鞄に荷物を詰めて席を立った。
アベル様が後ろから追いかけてきたけれど、今日は振り切ってそのまま自分の家の馬車に乗り込んだ。
***
そんな風にして、ニノンやオデットに勉強の邪魔をされたり、アベル様に放課後待ち構えられたりと色々あったけれど、どうにか無事にテスト期間を終えた。
今日はテストの返却日だ。
どきどきしながら、結果が返されるのを待つ。
王立学園のテストは、全ての答案用紙と、全教科の得点と順位の書かれた票が封筒に入れられて、まとめて返されるようになっている。
私は担任教師から封筒を受け取った。
大きく深呼吸してから封筒を開ける。
それから得点表を取り出して、順位を確認した。




