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4-3

「王宮の馬車ならもう学園に来てるから、リリアーヌも一緒に乗って帰ろうよ」


「え、別にいいですわ。うちの馬車がすぐ来てくれますし」


「いいじゃん、せっかくの機会だし! 一緒に帰ろうよ」


「なにがせっかくなんですか。アベル様が勝手に教室に来ただけなのに。……でも、そんなに言うなら乗ってあげても構いませんわ」


「本当? じゃあ今すぐ行こう、リリィ!」


 アベル様は嬉しそうな顔をして私の手を取る。


 そうして私はアベル様にひっぱられるような形で、王宮の馬車のところまで連れていかれた。



 御者が扉を開けてくれたので、私は馬車の中に乗り込んだ。


 シャリエ公爵家の馬車も大きいけれど、王宮用馬車はさらに大きくて、椅子もふかふかと柔らかい。


 やっぱり乗せてもらってよかったかも、なんて現金なことを思いながら深くソファに腰掛ける。



 アベル様は、馬車に乗っている間中ずっと、楽しそうにこちらへ話しかけてきた。


 私はなんだか眠かったので、適当にしか聞いていなかったけれど。


 アベル様の声を聞き流しつつ、気持ちよく馬車に揺られていると、あっという間にシャリエのお屋敷に到着した。



***


「リリアーヌ、じゃあまた学校で! 来週も高等部の校舎まで会いに行くね!」


「来なくていいですわ」


 私はご機嫌な顔で手を振ってくるアベル様に、淡々と言葉を返す。


 アベル様はこちらの態度なんて気にも留めずに、笑顔で帰っていった。


 馬車の中でもずっと適当にあしらっていただけなのに、なんであんなに嬉しそうなんだろう。


 私は首を傾げながら、シャリエ公爵邸の門をくぐる。




 お屋敷に帰り自室へ戻ると、私は早速アベル様に言われたことを考えてみることにした。


 机の上には、各教科の教科書が並んでいる。


 私の通うソヴェレーヌ王立学園には、さまざまな教科がある。


 国語や数学と言った日本の高校と同じような科目もあれば、経済学や法学といった大学の授業のような科目もある。


 さらには魔法薬学や魔法戦闘学といったいかにもファンタジー世界らしい教科もあり、覚えることに際限がなかった。


 私は並んだ教科書の表紙を眺めながら、実際に領地経営に使うとして、一番役立つものはどれだろうと考える。



「やっぱり、経営学とか経済学、法学あたりかしら」


 領地経営というくらいだし、一番関わりのありそうなものはそれらだろう。


 その中でも一番関連の深そうな、経営学の教科書を手に取ってみる。



「っていっても、経営学が一番ちんぷんかんぷんだったのよね……」


 前世では十六歳の平凡な高校生だった私は、経営学なんて触れたこともなかった。


 一方、リリアーヌの人生では幼い頃からそういった学問にも触れてきたはずなのに、さっぱり記憶がない。まともに授業を聞いていなかったせいだろう。


 私は早くも憂鬱になりながら、ぱらぱらと教科書をめくる。

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