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3-2

 ジェラール様の横では、メイドたちが少々固くなって並んでいた。


 それもそのはずだ。ジェラール様が自らこのお屋敷に来られたことなんて、数えるほどしかないのだから。



「一体何のご用ですか?」


 怪訝に思いながら尋ねると、ジェラール様はソファから立ち上がった。


 そしてこちらへつかつか歩いてきて、私の腕を掴む。


「君がこの前言っていた婚約解消の件だ。ひとまず王宮へ来てくれ。そこで話し合おう」


「え……っ」


 ジェラール様はそう言ったかと思うと、返事も聞かないうちに応接室から私を引っ張り出した。


 後ろでメイドたちが困惑する声が聞こえてくるけれど、彼女たちも王子殿下のすることに口出しできないようで、止めてはくれない。


 私はジェラール様に引っ張られていく。



「あっ、ちょっと! ジェラール殿下、リリアーヌお嬢様を離してください!」


 唯一、廊下で待機していたシルヴィがそう叫んでいたけれど、隣にいたレノーに慌て顔で止められていた。


 そうして私は、あっという間に馬車に乗せられ、王宮に運ばれることとなった。



***


 王宮に着くと、公爵邸の広い応接室よりもさらに豪奢な王宮の応接室に連れていかれた。


 ジェラール様は席に着くなり、早速話を切り出す。



「それでリリアーヌ。突然婚約解消したいなんて、私の何が不満なんだ?」


 ジェラール様は眉間に皺寄せてこちらを見ている。


 私は淡々と答えた。


「ジェラール様に不満があるわけではございません。ただ、冷静に自分を鑑みて、私には王子妃の適性がないと考えただけです」


「今さらか? 今までも散々そう言われてきたにも関わらず聞き入れようとしなかったのに。なぜ急にそんな心境になったんだ」


「先日、頭を打って長く寝込むことになったとき、起き上がれないのでずっと自分自身について考えておりました。冷静になって考えると、私のような者が王子殿下の婚約者でいるより、誰かほかのご令嬢に立場をお譲りした方が、殿下にとってもこの国とってもいいのではないかと思えてきたのですわ」


 前世の記憶が甦ったことは話せないので、伝えられることだけ口にする。


 本当はジェラール様の今までのリリアーヌに対する扱いにも色々と不満はあったけれど、そこは大人になって黙っておくことにした。


 ジェラール様の眉間の皺が深くなる。



「君の場合は王子妃として適性がないというよりやる気がないだけだろう。これから努力するという考えはないのか。今からではどうにもならないことはないと思うが」


 ジェラール様の言葉に首を傾げた。


 今からいい王子妃になれるよう励めとでもいうことだろうか。

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