泉の女神は寛大なはずなのに、俺が斧を取ろうとして怒らせた件 ~触らぬ神に祟(たた)りなし~
俺は神秘の泉の周りで木を切っていた。予想外に堅い木に思い切って斧を振り下ろすと、手からすっぽ抜けた。
斧はくるくる回りながら、泉の中にすごい勢いで飛んで行った。俺は、泉の前で、手持ちの唯一の斧がなくなったことを嘆き悲しんでいた。斧がないと、明日から木を伐ることが出来ない。
すると、泉の上に斧が浮き上がってくるではないか。俺は、これはどうしたことかと訝っていると、斧の下から泉の女神さまの顔が現れた。斧は、女神さまの頭に突き刺さっていたのである。
女神は泉の上に立つと、俺に優しく尋ねた。
「この斧はお前の物か?」
俺は恐縮して、地面にひざまずきながらも、斧がないと明日から仕事が出来なくなるので思い切って本当のことを言った。
「女神様、その頭の斧は私の物です。その斧がないと私は、明日からおまんまの食い上げです。なにとぞ、斧を返してもらえませんでしょうか」
「よい、よい、わらわは寛大な神じゃ。このくらい、どうという事はない。自らの手で斧を取るがよい」
何と優しい神様だろう。俺は感動し、立ち上がって手を伸ばしたが、斧には手が届かなかった。
「女神様、恐れながら申し上げます。斧に手が届きません。なにとぞ、今少し頭を下げて頂けませんでしょうか」
「それは悪かった、こうか?」
女神は頭を俺の方に上げた。しかし、斧の握りには手が届かなかった。
「恐れ入ります。もう少し頭を下げてください」
「むっ、こうか?」女神はもう少し、頭を下げた。
俺は、斧を取ろうと見上げた視線をふと、前に戻した。
そこには、ふくよかな女神の胸の谷間が見えた。
俺は思わず、手を伸ばして女神の胸に触れた。
その途端、女神の左フックが俺のテンプルに直撃した。
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