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下剋上転生  作者: 社不帝
幼年期 平穏編
3/22

万変球

父が多分、戦争?から帰ってきた。


帰ってきた父は大きな怪我などなくかすり傷くらいがあっただけで大きな戦争ではなかったのだろうと思う。

母は父が無事に帰ってきたことが嬉しかったのか父と一時間ほど抱き合い泣いていた。

途中から俺もその抱き合いに入れられ父と母の鼻水と涙で俺の服はすごいことになった。


抱き合いが終わり俺が外を見ていると村の大人の男達が50人ほどが村に帰ってきた。みんな外で抱き合っており村は戦争から全員が帰ってきたことで小さなお祭りをやるようだ。


(異世界だからか知らないけど外でみんなチュッチュチュッチュするのはやめて欲しい。遠くから子供見てるから。)

そんな思いとは裏腹に一番大きな集落では裸になってお祭りが始まる。


俺は窓を締めて真面目に考える。


(この世界の戦争の徴兵は強制なのか?)

戦争が強制でないのなら村に最低限の守りの男たちを置いておくはずだし全員が居なくなっていたということは強制かも。


(戦争とか行ったら絶対俺すぐ死ぬ自信ある。)

どうにか俺は戦争に行かない方法を考えるしかないようだ。




さらに半年ほどが経った。


俺も流石に外を見るのは飽き、なにかしよう、なにかしようと考えていたが思いつかないある日だ。


この村の近くにある森からイノシシが村に侵入し運悪くうちの家の扉を壊して家の中に入ってきたのだ。

この世界の家の扉には鍵のようなものはないため横スライドの扉があるだけであまり厚さはないためイノシシが少し勢いをつけて突進すればすぐに壊して入ってこれてしまった。


ちょうど俺は外を見ていて一階の窓の近くにいたから侵入してきたイノシシと数メートルしか離れていない。

こんな子供の体で体長一メートルほどのイノシシに突進されたらヤバいと命の危機を感じた。


イノシシの目はぐるっと家の中を見て俺とイノシシの目と俺の目はバッチリ目が合う。俺は発見されたのかノッソリノッソリとイノシシが近づいてくる。


二階にいる母を呼ぼうと声を出そうとするが恐怖で喉が閉まって声が出ない。


そんなことをしているうちにイノシシが突進するために構えを取る。そして鼻の上にある角を突き出し俺に突進してくる。

(あ、死んだ。)

と思い目を瞑って数秒ほどしても体に痛みがない。

なぜだと思い恐る恐る目を開けると目の前にいたイノシシは原型がないほどに血を流し倒れていた。

イノシシの後ろ足の方はほとんど原型がないほどで真っ赤な血がこちらに流れてくる。イノシシの目は未だにこちらを見続けており俺は漏らしてしまった。


血の溜まりを見てみるといつも父が使っている矢が落ちている。どうやら父が助けてくれたのだと思い安心した。


数分後父が家に

「大丈夫か!!?」

と言って帰ってきた。


母に「怖かったね。ごめんね。」と言われながら父が撃った矢の向きを見て何処から撃ったのだろうと撃った方向を見ると家の壁に穴が空いておりどうやら父は家の壁を貫通して撃ち抜きイノシシを原型がないほどにしたのだ。

ちなみに家の壁はレンガで出来ている。

(人間に出来ることじゃない。)

そう思うが目の前でやられてしまってはどうしようもない。


恐らく異世界だからか俺の知らない力のようなものがあるのだろうと思う。


俺は戦争や生き物から自分の身を守るため力が必要だと強く確信した。


その次の日。


「父樣」

俺はこの半年でゆっくりと話し始め、周りにおかしいと思われることはないと思う。

俺はこの世界での言語を日本語に当てはめて英語のように覚えた。高校生だった俺は英語がすこぶる苦手だったのにこの世界の言語は意外とすんなり習得出来た。


(この体は何故か物覚えが良い。日本にいた頃の苦労は何だったんだろうか。)


「なんだ?アルテナート」

アルテナートは俺のこの世界での名前だ。


「どうやったら矢であんな事ができるの?」


「そうかそうか。さすが俺の子だな!!やっぱり狩人の血が流れているということか。だがまだ早い。お前はまだ生まれてから一年半しか経っていないし矢を射ろうにも力も足りていなければ意味がない。だから今から何かをやるのも難しいだろう。」


(やはりそう言われるか。俺が親でも生後一年半の子供に戦う術なんて教えないもんな。)


だが、このままではいつ命を奪われるかわからない。

この世界での俺のアドバンテージは普通の人よりも早くこの世界を理解し成長出来るということだ。

どうにかして考えなければ。


「万変球を渡してみたら?」

と母が助け舟を出してくれる。

「母樣、その、、、、万変、球?ってなに?」

「万変球は生まれてから死ぬまで一つだけ使えて最初はただの球体なんだけど自分の側においておくだけで自分の望んだ武器とか日用品とかになるの。基本は生死球を三年ほど自分の近くにおいておけば形にはなるわ。でも長く近くにあればあるほど性能は上がっていくらしいわ。」

「じゃあ、おじいさんとかが一番その万変球が強いの?」


「長く使えば使うほど強く使いやすくなっていくらしいって言われてるわ。でもなんで子供にはあまり万変球を渡さないかと言うと昔、長く近くにおいておいた方が良いなら生まれて間もない子に万変球を渡したらいいんじゃないか?ってことになって渡したら何故か死んでしまうことがあるらしいの。だからみんな六歳ぐらいにならないと渡さないのよ。」


(うーん。その万変球と言うのは聞く限り人間の生命力か、なにかを吸って形にしていると思われる。おそらくこの小さな体で生命力を吸われれば命に関わるということだろう。)


「じゃあ、僕やってみたい。」

「本当はやめてほしいけど仕方ないわね。」


俺はその5日後に万変球を貰った。



俺はやっとやることができたと思い貰った万変球を持っていつもの定位置である一階の窓の前に置き見つめる。

眼の前の球は真っ黒い球体でソフトボールくらいの大きさがある。

重さはどうやら今は一切ない、が形になれば重さも出てくるようだ。

触ってみる。

表面はツルツルしていてこれが変形するとは到底思えない。


俺がコロコロ転がして遊んでいると

「あれ?」

急に身体に力が入らなくなってきた。

(おそらくこの球は俺の生命力を吸っている。子供が死んじゃったのは恐らくまだ子供は生命が安定していないからだろう。)


俺は急いで家の違う部屋に走っていくと身体に少しずつ力が戻ってくる。


それから俺は球を転がして身体の力が抜けてくれば一旦家の違う部屋に行き身体を回復させまた球を転がしに行くのを繰り返す。


そうしているとだんだん俺の体から抜けていっている感覚がわかるようになってくる。

目では見えないし匂い、音は一切無いが体の中心、お腹の下の確か丹田と呼ばれる場所から全身に流れていき指の先まで来てそこから抜けていき空中に出たところで黒い球に引っ張られ吸収されている。


俺はこの吸収されている力をなんとか止めようと指先に力を入れるが一向に止まらない。


球から離れれば抜けていくのが収まるかと思ったがどうやら球関係なく普段から微量にその力は空気中に放出しているようだ。


逆に普段より多く放出は出来るのか?俺は球の前でお腹に力を入れ、胸に力を入れ、頭に力を入れ、腕に力を入れ、手に力を入れ、指に力を入れるといつもより一気に体の怠さが来て力が抜ける。




そして三ヶ月毎日力を注ぎ続けた結果今では一回三時間ずっと力を吸収されていても大丈夫になった。

そして俺はこの常に体から出ている力を流点気と名付けた。

最初はこの万変球は生命力を吸収しているのかと思ったがそれならよりこの球を近くに長く置いている人ほど早く死ぬはずだが六歳からずっと球を触っているお爺さんも長生きしている。

ということは生命力とは別の力でありこの力は身体の点から流れ全身から気のように発せられているから流点気だ。





更に二年半が経ち四歳になった。


最近の俺には大きな問題がある。

それは両親が友達の一人でも作って来いというのだ。


「アルテナート、友達は出来たか?」

最近は夜のご飯のとき毎日のように言われる。

友達は何故作らないといけないのか?を母に聞いたらご近所付き合いというのはこの田舎村においては必須でうちの猟師という仕事を継ぐにしても取ってきた獲物を売るのはご近所の精肉屋だし友達を作っておけば横の繋がりができ村でより生きやすくなるというのだ。

父も小さい頃から村守備の男の人とか村長の息子と仲が良かったようだ。


「そ、そんなことより母様のお腹にいる妹のほうが気になるよ。」

母のお腹には一ヶ月前に発覚したのだが妹がいるようだ。


(こう言っては何だがこの家の経済状況を見るに4人家族になれば食事なども色々と経済的に削る必要が出てくるだろう。

だが、妹が出来るというのは良いものだ。うん、良い。

姉がいるよりもすごく良い。前世でも妹はずっと可愛かったし、、、、あ、、、、泣けてきた。)



「あら、アルちゃんは妹が大好きね~。」

「アルちゃんはやめて母様。」

「アルちゃんは可愛いわねー。」

「前から思ってたんだがアリット、アルテナートを甘やかさないでくれ。」


俺の父の名前はルーラー。

母の名前はアリット。

俺の名前はアルテナート。

この世界での名前は基本3種類ある。


1つ目は平民と言われる農民や商人たちは名前のみ。だからこそ家名などを持たず遠い親戚なんかは分からない。

2つ目は貴族たち。貴族は名前の後に家名をつける。それによって本家と分家などの繋がりを強くしている。

3つ目は王族。王族は名前の後に自分達が王族の国の名前をつける。だから名前の後に国の名前が来たら王族ということだ。



「え?なに?貴方は私の可愛いアルちゃんに厳しくするって言うの?」

「い、いやそのアルテナートも男だしな厳しく育てないと良い男にならないと思ってな。」

「言っておきますけどアルちゃんは将来貴方より圧倒的にかっこよくなるから大丈夫よ。さすが私の血だわ。」


(俺は生まれてから自分の顔は見ないようにしている。生まれ変わったら凄く嫌な顔だったらあまりい気はしない。だから分かるのは身長と髪色だけなのだが母にかっこいいと言われると見たくもなるが我慢だ。)


「だ、だがな男というのは見た目だけじゃなく中身も重要でな、、、、」

「なに?貴方がなぜ男について語っているの?私は村から出ていろんな街で男を見てきたけれど男の中身に必要なのは優しさ、気遣いよ。肉体的な強さ、礼儀なんかよりも必要!!今日だって私のお腹を気遣って私の代わりに井戸から水を汲んできてくれたんだから。気を配れなかった貴方よりももういい男よ。」


うん、我家の母は強いな。

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