情報屋
俺達は冒険者協会での騒動から2ヶ月ほど冒険者としてお金を稼ぎなんとかネオンの街に行くために乗る馬車のお金が貯まった。
その間に俺とルシアは1歳年を取り6歳と2歳になった。相変わらず俺は同世代と比べて小さく素の力ではルークにスピード、パワー、ともに負けている。ルシアはもう2歳になって立って歩き出している。以前と違って行動範囲も広がりディオナが宿から絶対に出さないようにするのも難しくなってくる。その為カラーコンタクトのようなものをつけて両目の色がおなじになるようにしたいのだが異世界でカラーコンタクトが無い。
カラーコンタクトを手に入れるためがどこで売っているのか聞こうにもカラーコンタクトを探しているという時点で少し怪しまれる。
人間の世界でカラーコンタクトをしなくては生きていけないのはオッドアイの人と眼の色が真っ赤であるヴァンパイア、魔族くらいだろう。だからあからさまにコンタクトレンズを探していると言うとオッドアイの人が俺の知り合いにいるのではないか?吸血鬼、魔族を街に入れたのではないか?と邪推される。
だから俺は情報屋と呼ばれる情報を提供する代わりに金銭、もしくは新たな情報を代わりに売ることを仕事にしている人たちに接触を試みる。
俺はギアンの街の冒険者がよく集る酒場に来ている。
酒場の名前は兜割り酒場と言う名前だ。
この酒場は引退した冒険者がやっていて兜割りという名前は店長の冒険者時代の2つ名だ。
店に入りすぐにこの店に呼ばれた理由がわかる。引退した冒険者がやっている酒場だからか多少の喧嘩、言い争いが絶えないし皆がそういとう酔っ払って大きな声で話しているため隣のテーブルの人の声も聞こえないだろう。さらに冒険者に聞かれたとしても冒険者はその日1日1日を堅実に戦い生き残らなくてはいけないのでそんな本当か嘘かもわからないような情報では動かない。情報を提供するにしても、もし情報が本当だったら自分たちで捕まえて売りたいと思うので情報を知られてもリスクは低い。
店内の奥、店内の中心から左斜に進んだところで情報屋の服装にマッチする剣を持った赤い髪の中年の男剣士の格好をした男のテーブルにつく。
「こりゃあ驚いた。チビッコさんが来るとは。」
俺は椅子を男の近くに置き直し座る。
「なんで近づく?」
「ここはあまり子供の来る場所ではない。だが1つ例外がある。それは師と弟子という関係であり冒険者としての生き方、剣の使い方を教わっている者達だ。奇遇にも同じ剣士、得物は違うが十分師弟関係であると伝わるだろう。」
「なるほど。嫌な大人の使いっぱしりかと思ったがお前さんでいいようだな。仲介人の紹介は。」
仲介人、情報屋と会うために情報屋の見た目、年齢、服装、出現場所を教えてくれる人。この人にたどり着くまでに最低1ヶ月半はかかった。
「で、何を知りたい?ちなみにルールは知ってるよな。」
「ああ、ギブアンドテイク。知りたい情報によって値段、交換に出す情報の質も変わる。」
「OK。、で聞きたいことは何だ?」
といったところで
「ハイお待ちー」と酒場の店員が酒1つとつまみ、骨付き肉のこんがり焼きを持ってくる。
「ゾッシュさん、あんた子供なんか連れてきてどうしたの?」
「こんな時代だ。このくらいの世代の子が冒険者をやっているのを見て少しでも長生きさせてやれればなと思って、剣の扱いとか教えてるんだ。」
「確かにねー。平民街でも素人が無茶して死んじまったって言うしね。」
「ああ、その影響もあるな。教えてやるなんて程、俺は冒険者として成功しちゃいないが死なないためにどうするか?くらいだったら教えられそうだろ。」
「確かにね、悪い。時間を取らせちまった。」
そう言って店員は俺達から離れていく。
「で、何を聞きたい?」
「、、、、、コンタクトレンズ、目の色を変えられる魔道具、もしくはそれに近いものはどうすれば手に入る?」
「なるほど、その情報はかなりお高くつくな。先にテイクを貰おうか。先に情報を渡してテイクが帰って来なければこの情報を聞きに来たという情報を流さざるを得ない。」
「どういった情報がいい?」
「聞きたいことと同レベルなら裏組織のリーダーの名前だったり新しく製造している戦争で使う武器とかだな。情報にも種類があるが恨みがある系は需要が高い。」
「やはりか、なら魔族の情報はどうだ?」
「なるほど、魔族か。正確性には問題もあるが恨みがある人間は多く聞くためには金を惜しまない。魔族にあって生きて帰ってこれる人間も少ない、なるほど良いだろう。」
「魔族の名は、、ガルフォンと知らないかもしれんがビアング。」
「、、、、有名どころと知らん魔族だな。」
「だろうな。話してわかった。あの男は目立ち強い人間を目の前に引きずり出したい、となればある程度出没して有名にならなきゃならない。情報としての価値も高くなる。多くの強者や人を殺しているとなれば恨みも大きくなるし話しっぷりから察するに武勇に優れた貴族なんかも殺されているんじゃないか?貴族からすればコンタクトレンズなどという調べれば必ずと言っていいほど手に入れられるものと出没が誰にも何処かわからないガルフォン達では正確性に問題があっても価値は同じだろう。」
「、、、、でどのくらいの情報がある?」
「魔族にも魔力、異能がある。というのは分かっているようだからまず、ビアングの異能を言おう。」
「ビアングの異能は魔獣を操るというもの。」
「それは新情報だ。ガルフォンが他の魔族といるなど」
「ああ、やつは他人を連れて歩くようなやつじゃない。がビアングの異能は街や村を襲うのに使いやすいと思ったんだろう。実際、弱者を殺して楽しいとは言わなかったしなガルフォンは。」
「では、今回のダイス村大氾濫は、、」
「魔族の仕業だ。、、、、あとの情報といえばビアングの見た目は病的なまでの真っ白い肌、人工物のような金髪、口は裂け、手には口がついていた。」
「なるほど、しっかりと見た目も覚えているんだな。人によっては恐ろしくて顔をあげられなかった、記憶が混濁している、途中で気絶してしまったが多いからな。」
「あれはすごい殺気だったな。最後に一つ最も重要な情報がある。」
「これでも十分に対価はもらったんだがな。」
「聞きたいことは尽きない。対価として多めに払っておく。、、、俺の知り合いがガルフォンから直々にいつか殺しにくると言われた。」
「、、、、そりゃあ、すごいな。殆どのやつが最後に捨て台詞のように「まあどうせそこまで強くはならんだろうがな。」と言われているのに。」
「どうだ?いい情報だろう?」
「ああ、面白い。対価を渡すとしよう。、、、コンタクトレンズを製造しているのは吸血鬼保護団体って言う名の違法組織だ。吸血鬼保護団体は人間が吸血鬼に血を吸われ死ぬと吸血鬼の中で一生、生き続けられるという理念に基づいた連中だ。構成員は人間が主だ。コンタクトレンズを売ってもらうには金と血が必要で金だけなら金貨1枚、血だけなら人間1人分の血が必要だ。吸血鬼保護団体のアジトはこの街にもあって仕事は主に冒険者が吸血鬼を狩るのを妨害している。だから冒険者の多い街には吸血鬼保護団体ありというわけだ。この街の拠点は平民街にあるラルというバーだ。店員は吸血鬼保護団体の組織員、店長は吸血鬼だ。」
(不味い。流石に金貨1枚を出せるほどのお金はない。金貨1枚出せばこの街に最低あと3ヶ月は留まらないといけない。)
「、、、、金がないなら血だけで犯罪者でもなんでもいいらしい。」
(なるほど、犯罪者か、盗賊でもいいな。小悪党くらいなら放っておいていいが妹、ルシアの命がかかっている。生贄になってもらおう。問題はルークがついてくるとやりにくいことだがディオナに頼むしか無いな。)
「お前さんには対価をもらいすぎたからもう少しなにか聞きたいことがあるなら言ってくれ。」
(あと、聞きたいことか。母とフィリアのことは流石に個人情報過ぎて情報として無いだろうしグスマン子爵の弱みでも聞くか?だがそれを俺が知ったところで脅したら牢屋に入れられて口封じに殺すことも考えられる。うーーーーん。どうするべきか。)
「無いなら、次回っていうのでも良い。」そう言って男は自分の回っている街の地図を渡してきて紙にはその街にいつどの場所にいるかが書いてある。
「みんなに渡しているのか?」
「いや、これからも美味そうな情報を持ってきてくれるやつを見出して渡す。お前さんは将来デカくなるかもしれない。となると今から唾をつけておくのもいいしこれからはあなた自身の情報ってのも売れるようになるかもしれない。」
「もちろん俺が聞きに来たことは言わないな。」
「当たり前だ。聞きに来たことは言わないがお前さんが貴族や有名冒険者になれば少しでもお前さんと仲良くなろうとお前さんの趣味、思考、女のタイプなんてのも聞かれるかもな。」
「それはそれで嫌だな。」
「お得意さんになるかも知れないんだ。有名になったら女のタイプくらいだったら安く教えてくれよ。」
「そんな有名人になるか?今なんてただのちっこいガキなのに。」
「そう、今のお前さんはただのちっこいガキだ。だが当たり前のことを当たり前のように自分で分かってるってのは良いことだ。殆どのやつが自分が弱いってのに気づくのに10歳かそこらなのにお前さんはまだ5,6歳だろ?」
「まあ、有名になったら女のタイプくらいは安く教えてやるよ。」
そう行って俺は店を出ていく。
店の中で情報屋の男はつぶやく。
「デカくなるさ、嫌でもな。あの世界のトップクラスに居る魔族に会ったんだ。それだけでも殺し合い100回分にも勝る経験だってのに、、あの持ってる刀の家紋。ありゃどう見ても火の国の物だ。何故このリグシア帝国に火の国の物があるんだ?興味は尽きないな。あのちっこいガキに。」
そう言ってニヤっと笑う。