表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
下剋上転生  作者: 社不帝
ギアンの街 冒険者編
16/22

生き方

ギアンの街に帰る道中でルークが質問してくる。

「アル、なんでバンブールの魔石は集めないんだ?勿体ないだろ。」


「ギルドの人の受け売りだとバンブールの魔石って中途半端に希少なんだよ。魔石は主に魔道具に使われるだろ。魔道具っていうのは魔石の大きさ、形が大切なんだ。大きければ大きい位ほど長く使い続けることができるし同じような魔物から取れる形に似ている魔石は連結して持続的に使える。だがバンブールの魔石のように大きさもない、出現地域も狭いから似た形の魔石も取れない、となるとエルフ相手しか売るのがないらしいけど買い取ってくれるかわからない。」


「エルフって見たことないから分かんないや。」



ギアンの街に討伐証明部位を持って帰るといつもより街の中心の方から大きな叫び声や怒声が聞こえるが聞こえる。


「何かあったのか?」


門番の人に何かあったのか聞くと気まずそうに

「あ?あーーー、いやーーーー気の毒なんだがよーーーーバンブールの上位個体のバンジールが出たみたいでなーーー若いやつらがさ、、ほら、、な。分かるだろ。」


ミスった、そう思った瞬間にルークは街の中心の方に走り出していた。


街の中心にはには領地を持つ子爵の領主の家があってそれを囲うように領地のない男爵の家がありさらにそれを囲うように平民の住宅街がありそして一番外側にアウトサイドと呼ばれる貧困層の住宅街がある。アウトサイドの住宅街は2つの高い塀で囲われていて出られないようになっている。実質ギアンの街には3つの高い壁がある。


この街の造りは防衛のためだと思われる。隣国から攻められ街中での戦闘になった際、城門を突破されても余所者である冒険者や商人という人の壁が狙われ次に塀を越えるとアウトサイドがいて前方、後方から無差別に攻撃することが出来、平民の住宅街には寄せ付けないようにしているのだろう。


話がそれてしまったがバンブールの討伐依頼に来ていたのは平民だという予想はあっているだろう。貴族はバンブール一体銅貨1枚のお金などあってもなくても変わらないだろうしアウトサイドの人間は塀の中から出てこれないから冒険者協会で身分証をもらえない、となると裕福でも貧困でもない。銅貨1枚で夕食が一品増えるくらいの平民だろう。


街の中心の方へと進んでいくといつもは余所者に対して厳重な身分証の確認をしてくるが塀の警備員達が見せるだけで通してくれる。


平民の住宅街は中世ヨーロッパのような石造りの2階建ての家が所狭しと並んでいる。住宅街の中心地に走っていくと大きな人だかりができていてなにかを囲うように、皆が下を向いている。


人を掻き分け中に入っていくと60人ほどの人達が横になって顔の上に白い布を被せられ持っていたであろう武器や服には大量の血がついている。仰向けにされている人達の横には涙を流し唇を噛みその、、死んでしまったであろう人の名前を叫んでいる。

見ている人達も気の毒だと思っているのか同情しているのか泣いている人や俯いている人なんでだと喚いている人。


、、、、、、そして俺はそれを見てただ突っ立っているだけで前世の俺となにも変わらなかった。


ルークは俺とは違い死んでしまった人に駆け寄っては本当に死んでいるのかを確認しそしてそばにいる母だと思われる人に危険だと分かっていながらこの人達を見捨ててしまったのだと申し訳無さそうにいっている。


それを見ても俺は動けない。


(動けない理由は自分でもよくわかっている。

家族ではないからだ。言ってしまえば赤の他人。敵でもないし味方でもない。生きていても死んでいても俺の人生に影響のない存在だ。)


目の前でルークは自分の力のない非力さあの時声をかけなかった悔しさ、申し訳ない気持ちを滲ませながら「クソっ、、、あの時僕が、、、、」と言っている。


それを野次馬として見ていると人混みをかき分け冒険者協会ギアン支部の人だと思われる中年の男性、受け付けの人だと思われる2人の若い女性がでてきた。


1人の女性が頭を下げ「この度はLEVELに見合わぬ依頼を出してしまい申し訳ございませんでした。冒険者協会ギアン支部は魔物の母体の存在を認知して危険を承知で依頼を出してしまい申し訳ございません。」

もう一人の女性も頭を下げるが中年の男は頭を下げる気はないようだ。


一人の女性が冒険者協会の女性に駆け寄って「冒険者協会は依頼のLEVELを適切に判断して依頼を出しているのではないんですか?どうしてバンブール討伐に行ってバンジールなどの強い魔物が出てくるんですか?」


冒険者協会の女性がどう言おうか迷っていると中年の男が「依頼を受けるかの判断はあくまで本人次第だ。危険を察知できなかった自己責任だ。」

そこでルークが「人だ死んでいるんだぞ!!」と叫ぶ。

「いいか小僧。これはこの街の冒険者に必要なことなんだ。今回バイスの森で魔獣大氾濫が起きた。この街の危険性は一気に上がっていると言って良い。そんな中冒険者にこの街を離れられたらどーする?今回の依頼で普段は冒険者稼業をしなかった強者が見つかり狩りに参加した冒険者はいつも以上の報酬で喜び、またこういう依頼があるかもしれないとこの街にとどまってくれる。全部この街のためだ。」


「ふざけるな!!この街のためと言ってこの街の人が死んでしまっているんだぞ!!」

ルークは怒ると口調が荒くなるな。


「多少の犠牲は仕方がない。」


俺は男とルークの言い合いをよそに人だかりから出ていく。

(やはりこの世界は頭を使って常に裏を読まないと駄目だな。ルークとオッサンの言っていることはどちらも間違っていないと思う。命1つ1つを大切にするルーク、将来のために多少の犠牲は仕方ないというオッサン。俺がどちらよりか?と聞かれたら)


そう考えながら平民の住宅街を歩いていると裏路地の方から

「ダイス村って知っているか?」という声が聞こえてくる。

反射的に盗み聞きのような形で会話を聞く。


「知らねーよ。どこだ?それ」

「俺等ドールズ子爵領の隣のグスマン子爵領の村だよ。」

「で、それがどうかしたのか?」

「魔獣大氾濫があったの知ってるだろ。」

「ああ。」

「村人はみんな魔獣からネアンの街に逃げようと山越えをしたらしいんだ。」

「それで?そういう時動く貴族騎士団はどうしたんだよ?助けたのか?」

「それがよー、グスマン子爵は最初騎士団を動かさないでいたんだ。だけど途中で考えを変えたのか騎士団を動かしたんだよ。グスマン子爵は騎士団をどこに配置したと思う?」

「まあ、多く村人が助かるように山の中だろ。」

「不正解。グスマン子爵は山を越え森を抜けるっていう所に騎士団を配置して村人もろとも魔獣を殺したらしい。」

「すっげー。そんな人が血を流して倒れるとこ見てみてー!!。」

「そお言えばお前貴族騎士団に入りたいんだったな。」

「そうだよ!!人が血を流して倒れていくのを見るんだぜ絶対刺激があるに決まってる。こんななんもないクソ田舎の街よりな。」

「そうか?俺はそんな村の人とか街の人とか死んだってどうでもいいな。グスマン子爵のやることは面白いから聞いたりするけどな。」


それを聞いた瞬間、俺は刀の柄に手をかけ刀を抜いていた。

一瞬で男2人の口を十字に切り裂き耳を切り取った。

「お、おま、おまえ、な、何だよ。」

口と耳から出血している男が言う。

俺の顔は暗くなってきた街の影で見えなくなっている。


俺は無言で立ち去り泊まっている宿に戻り力なく地面に横たわる。ディオナがなにか言ってっているが聞こえない。


(俺はあの男二人と一緒だ。他人だから知らない人だからどうでもいいと俺に関係ないと。なのにダイス村の事になったら同族のアイツラを傷つけた。やっていることは俺も一緒なのに。

前世、俺は敵でも味方でもない人間には興味がなかった。家族も命を懸けて守るというほどの気持ちはなかった。だが今世では家族であり妹であるルシアのために命を懸けている。さっきまでは家族や身内になにかなければ関係ないと思っていたがそうではいけないようだ。


小さい頃に習う簡単なようで難しい意味の言葉。

自分のされて嫌なことは相手にもしてはいけない。


俺は今日この瞬間からこの世界での生き方を決める。


1、敵でも味方でもない人間はなるべく助ける。

2、敵として俺の前に立ちはだかった場合すべて殺す。

3、なるべく味方には幸せに生きてもらう。

3、基本人に期待せず人を当てにしない。

4、家族を助けるためならすべての俺の生き方を破棄し命を掛ける。


これくらい緩さと厳しさが混じっている方が良いだろう。

途中から増えることあるかもしれないが減ることはないだろう。)



翌日、1人で冒険者協会に行くと依頼のボードに大きな木板に【この度は街の皆様、ご遺族の皆様にご迷惑と失敗をしてしまい申し訳ございません。先日の不手際の補償はしっかりと行い適切に依頼のLEVELを精査してまいります。今回は副長と一部の受け付けの者が危険を承知で依頼した物でした。領主様と話し合い副長は3ヶ月謹慎処分、受け付けは解雇として対応することになりました。副長の考えは冒険者協会としての方針ではなくあくまで個人の考えであります。これからはこのようなことがないように誠心誠意取り組んでまいります。】


どうやら副長と冒険者協会の間にあった考えの違いのしわ寄せが平民に危険をもたらしたのだろう。


これからどうしようかというのはバイスの森を抜けてから考えていなかったがドールズ子爵の領地でこの状況だ。グスマン子爵の領地などろくでもない事になっているに違いない。


母とフィリアに会いに行かないといけない。

だがその前にルシアが外に出ても安全なようにコンタクトのよなものを探さなくてはならない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ