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下剋上転生  作者: 社不帝
ギアンの街 冒険者編
15/22

母体

俺達はラノ竹林に近い位置にあるベッカ平原につく。



そこには冒険者協会の依頼ボードにあるバンブール依頼に釣られたのか一般人だと思われる集団がいくつもあり合計で大体60人ほどの人達がいる。と言っている俺達も依頼の報酬が良かったから来たのだが。


10人ほどが盾を持って束になり攻撃のヘイトが1人に向かないように一体のバンブールを囲み徐々に距離を詰めていき皆で袋叩きにしていた。皆が持っている武具の多くが冒険者協会から貸し出されたであろうボロい剣であった。

元々バンブール自体は冒険者依頼で言えばLEVEL2程度の魔物なのだ。だが出現場所がラノ竹林と言う見晴らしが悪く竹とバンブールを見間違えやすいこと、さらにラノ竹林にはバンブールの針の痺れた一瞬を狙い冒険者を殺す魔物もいるからLEVEL3の依頼なのだ。


だからバンブールという竹3本に花がついたような見た目の魔物は防御力でも攻撃力でも単体では確実にLEVEL2程度の実力なのである。


だから一般の人でも複数であればあれほど一方的に戦えるのだ。


一般人の集団を観察していると何故か若者が多い。割合にして言えば10分の8ほどが10代後半から20代前半の若者だ。さらに分類では若者ではない人も20代後半30代に差し掛かる程度だろう。


なぜだか凄く疑問に思う。


バンブール一体の討伐で銅貨一枚。


もし俺がこの街に家族で住んでいたら家族全員で何なら友達、親戚、町中の人と一緒に行くだろう。

銅貨一枚あるだけで大人1人の1食分程は賄える。さっきの若者たちの戦い方を見ている限りバンブール1体を討伐するのにかかっている時間は5分ほど。


討伐する方法は実に効率化されている。

まずラノ竹林から出てきたバンブールの後方に3人ほどが盾を持って立ちラノ竹林に逃げ戻るのを防ぎあとから来た7人が周囲を囲みバンブールが飛ばしてく針を盾で防ぎながエア距離を詰め一斉に叩く。

無駄は殆ど無い。


だから1時間もやれば銅貨12枚、10人グループなら1人銅貨1枚に青銅貨2枚。大儲かりだ。


出現するバンブールの数も減ってくるかと思いきや時間が経つ事に増えてきており若者の集団は

「明日からは豪遊だぜー!!」とか

「仕事なんて辞めてやるぜー!!」とか

「このお金でいい男を探すわー!!」とか

「こんな田舎街出てってやるー!!」

という叫び声が聞こえてくる。


「アル、なんで僕達はここで突っ立っているんだ?急がないと全部あのお兄さんお姉さん達に取られてしまうよ。」

「ルーク、魔物ってなんで生まれるか知ってる?」

「いや、父さんに魔獣の生まれ方は聞いたけど」

「俺が父様から聞いたことを俺なりに考えてこの状況を考えるとかなり不味いんだ。」

「不味い?」

「そう、ここで魔物とはどう生まれるか説明しよう。」

「おお!!アル先生!!」

「この世界にいるどの魔物にも母体となるべきオリジナル魔物がいる。オリジナル魔物は自分の劣化分身体を作って数を増やしていく。そしてその劣化分身体もさらに劣化分身体を作って数を増やしていく。簡単に言えば上級魔物と中級魔物と初級魔物というわけだ。数はもちろん初級魔物が一番多く上級魔物が一番少ない。そこで質問だ。初級魔物が増えたら中級魔物はどうなる?」


「えーーーー?初級魔物が増えたからってなにか変わるの?」

「ああ、初級魔物が増えたってことは劣化分身体を作っている中級魔物も増えたってことだろ?ってことは最初は初級魔物がベッカ平原に出てくるけど時間が経てば中級魔物のバンジールもベッカ平原に出てくるってわけだ。バンジールは正真正銘のLEVEL3の魔物だ。バンブールと違って撃ってくる針の威力もスピードも太さも全然違う。」


「ならアルはこの依頼を放棄するってこと?」

「いいや、そうはいってない。魔物っていうのは基本人を襲うためだけに生きてる。ってことはここに多くに人がいる。だからここに集まってくる。だがバンブールは数が多すぎて皆が皆ここには来れない。だから散らばる。だが生みの親であり数の少ないバンジールはここに集まってくるだろう。」


「というわけでルーク、ラノ竹林の端っこに行くぞ!」

「アル、ここにいる人達に危ないって言ってきたほうがいいかな?」

「意味ないよ。ここにいる人達はみんなお金」


「まあ、よくわからないけど行くよ。」



ラノ竹林の端っこは街の近くとは大きく違い静かであった。近くで見かけたのは最低でもLEVEL3以上はあると思われるしっかりとした装備をした冒険者4人組。それぞれが緊張感を持ちさっきの若者の集団とは訳が違った。


俺達もラノ竹林に近づいていくと予想通りバンブールが3体ほど出てくる。

バンブールは真ん中の太い80センチメートル竹に真っ赤な花が頭部?と思わしき部分についていて2本の茎の先にそれぞれ30センチメートル程の細い竹がついている。


俺達との距離が5メートルほどになると茎の先についている竹から3本ほど20センチメートルの竹の針が飛んでくる。6本の針を盾で防ぎ2本を刀で弾き1本は的はずれなとこへと飛んでいく。

(針の速さは一般人の高校生が野球ボールを投げたくらいか?目で見えないような速さではないし、なによりも狙いが首元に集中していて守りやすい。)


針は木でできた5センチメートルほどの盾を半分ほど貫通して止まる。針の先端はいかにも毒っぽく紫色になっており異臭がする。俺がバンブール3体の攻撃を盾で受け切るとルークが後ろから一気に前に出てきてバンブールを斬ろうとする。だがバンブールの針のリロードの方が早かったのか竹から針を9本ほど発射する。


ルークは盾で3本、剣で3本弾くが針が3本首下の肩の部分に刺さる。出血量は少ないながらも貫通力は針にしっかりとあるので致命傷にはならないが危険ではある。


(不味い)


咄嗟に持っていた盾をルークに一番近い右に居たバンブールに投げつけ体に流点気を流して走り出し一瞬で真ん中に居たバンブールの首元だと思われる部分を刀で横薙ぎに切断する。


左に居たバンブールと右に居た盾を投げつけられ態勢を崩していたバンブールも態勢を戻して盾を持っていない俺を侮ったのか俺にヘイトを向け竹の針を撃ってくる。

針はさっきと一緒でやはり首元周辺を狙ってきており咄嗟にしゃがんでより近くに居た左のバンブールを真上から一閃で真っ二つに斬る。


「ギャギャ!!」

と言って危機を感じ取りラノ竹林に逃げようとしたバンブールに向け持っていた刀を投げつけ、それが後頭部に刺さり絶命したのか前方に力なく倒れピクリとも動かなくなる。


魔物を倒したのを確認した俺はルークに駆け寄る。


「ルーク大丈夫か?」必死に聞くと

「大袈裟だなー。体は痺れるけど痛みはそこまでないし出血量もそこまでないからさ。」



ルークをよく見ると刺さった針のところからの出血は少量であり部位的にも死に至るような危険な箇所に刺さったわけではない。


「はあ、よかった。」

「アルは大袈裟だよ。如何に針って言っても僕のこの鍛えた筋肉にとってはたいしたことないからね。」

「、、、、ルーク。前から思ってたんだけど毎朝筋トレしながら腕に向かってレオニス、フレメンスって語りかけてるのって夢じゃないんだな?」

「うん!!もちろん!!父さんから筋肉にも名前をつけたほうが筋肉がつきやすいって言ってたから。」

「、、、、、よし。この話はあとだ。針を抜くぞ。」


針を一気に3本とも抜くとルークの体から出てくる出血量が増える。


「バンブールの針は痺れ毒が塗ってあるって言ってたけどどれくらい体が痺れた?」

そうして聞いているルークは未だに地面に突っ伏している。


「撃たれた瞬間からアルが戦っている間も今もずっとだよ 

。だから30秒くらい?」

と言いながら立ち始める。


「30秒動けなくなるって痺れ毒って強いな!」

「だね。あの人達大丈夫かなー?」

「大丈夫だろ。ギルドの人達も魔物の生態系なんて一番わかっているんだし何かしらの考えがあるんだよ。」

「ならいいけどさ。」


俺の認識の甘さ。この世界での権力者の足の引っ張り合いに気づくのはこのときではなかった。


俺達はどうしても1分間の痺れというものに警戒心を大きく抱いたため朝7時から8時間討伐に時間をかけてやっとバンブール20体の討伐に成功したのだった。


その頃には俺とルークが冒険者協会から借りていた盾は穴だらけになっており俺の持っていた盾は線上に針を受けたからか上の部分が欠けてしまい使い物にならなくなってしまっていた。


討伐した20体のバンブールの死体を一箇所に集め頭部だと思われる部分にある花を採取しながら雑談する。


「アルの持ってるその、、、かたな?、、刀かっこいいよね。」

「これか?」

そう言って持ち上げるのは俺が5歳の時に父から貰った白い鞘に金の線が2本入った鞘。鞘の中心部には家紋なのか金色の5枚の桜の花びらのようなものが中心に向け集まっている。


「そう。刀ってかっこよくていいよね。」

「かっこいいのは同意だ。何故父様が刀をくれたのかは謎だけど。」

「アルの一族の火の国出身の人っていたっけ?」

「火の国ってなんだ?」

「えーーー。火の国知らないの?火の国っていうのはね極東にある国のことだよ。詳しくは知らないけど刀を使うのは火の国の人だし、あと火の国で有名なのは忍者とか有名だね!」


地球にいた頃によく聞いた、アメリカ人に日本というとなんですかと聞くと忍者、侍しかでてこないのはこの世界でも一緒のようだ。


「あ!あとは巫女とかね。よくは知らないけど。」


「ま!火の国に血縁の人がいるって言うなら会ってみたいな。」

「だね。僕も行っていいでしょ?」

「そのためにも手を動かして金を貯めるぞ。」

「はーーーい。」


俺達はその後も1時間かけ討伐証明部位を集めるのだった。

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