プロローグ
今回は長期連載、完結を目標とし、頑張ります。
「ピピピピピピピピピピピピ、」
ん?何だ?俺の安眠を妨げるうるさい音は。
あ、、、目覚まし時計か。
うるさいな。
昨日程々にテスト勉強して眠いんだよ。
もう少し寝かしてくれ。
そう思った俺は目覚まし時計を止めにかかる。
俺は腕を伸ばし止めるボタンを押そうとする。
手でベットの上を探していると
「ドン、ドン、ドン、、、、、バコッ」
あ、、、最後に聞こえたバコッ。
もしかして、もしかして、、、
俺は一気に頭の中の靄が取れ意識が一気に覚醒する。
俺はゆっくりと体を上げ、別に眠いわけでもないのに目を擦ってベットの横を見る。
すると案の定、床に落ち止めるボタンの折れた目覚まし時計がある。
時計の針も止まっていて確実に壊れているようだった。
ヤバい、あれは昨日買ったばかりの目覚まし時計だ。
俺は壊した目覚まし時計を隠そうと拾い上げるためしゃがむ。
壊れた目覚まし時計の隣に昨日読みかけで床に落とした異世界転生のライトノベルがふと目に入る。
俺は異世界転生のライトノベルをよく買って読んだりする。
皆が努力し一緒懸命に生きた物語は面白いからだ。
ハーレム、チート、魔法、貴族、一度は憧れる。
(異世界ねえー)
異世界。
行ってみたいとは思う。
だが、絶対にご飯は日本のほうが美味しいし魔法は人殺しの方法として簡単に人が殺せるようになってしまうし身分は王族や貴族に生まれればいいが村人に生まれれば領主から税金で苦しまさせられる。
程々に勉強し程々の会社に入って程々に出世して程々に結婚は、、、しなくてもいいかな一人のほうが楽だしな。
そんな俺がもし異世界なんかに行けば自衛できずにすぐ死ぬか50歳くらいまで税金に悩まされながら生きる姿が目に浮かぶ。
「早く、起きなさい!!」
下の階から母親の怒りを含む怒声が聞こえる。
俺は意識を切り替え、着ていたパジャマを学ランに着替え部屋を出る。
一階につくといつものように新聞を読みながらご飯を食べる父、ニュースを食い入るように見る妹、スマホをいつもはなさず持ち今も友達と連絡をスマホでしている姉、一人忙しそうに家事をする母、いつもの光景だ。
俺はいつもの普通の日常に安心しながらご飯を食べるため食卓につく。
「昨日、勉強したのか?」
朝と夜しか話しかけられない父からいつものように勉強についての話をされる。
「うん、程々にね。」
「また、可でも不可でもない成績を持って帰ってくる気か?」
「いや、一生懸命やった結果だよ。」
「、、、そうだな。」
父は諦めたように新聞に目を戻す。
俺は父の言う通り学校ではいつも可でも不可でもない怒られるわけでもなく褒められるわけでもない成績を取っている。
、、、一生懸命やっているかって?
それは一生懸命はやっていない。
というか今まで一度も一生懸命やったことがない。
今の現代社会、一生懸命やり結果を出し目立つということはメリットとデメリットが必ず存在する。
メリットといえば会社に就職するのに有利になったりモテたり皆に尊敬の目で見られたり色んな知り合いができたりかなり多く存在する。
デメリットは俺が思うに一つ。
いじめだ。
目立てば調子に乗っていると思われたりする。
そこからいじめに発展することも少なくないはずだ。
確率にしたらメリットよりもなる確率が少ないがもし、もし、いじめに遭えば心も普通の俺は生きていける自信がない。
だから俺は学校ではモブAで勉強が出来るわけでもなく出来ないわけでもない、運動神経が良いわけでもなく悪いわけでもない、顔が良いわけでもなく悪いわけでもない、ちょっとオタクの学生だ。
ずっと生まれたときからそうだ。
「・・・は頑張ればできる子なのよー。」
母の口癖だ。
いつもやる気のない俺になにかあるたびにやる気が出るように言ってくれている。
「めんどくさがり屋の弟を持つと大変だわ。姉としては。」
姉はいつも俺にちょっかいを出してくるが一番可愛がってもくれる。
「兄ちゃんめんどくさがり屋なの?」
さっきまでテレビに夢中だった妹が一瞬のうちに俺の隣に現れ聞いてくる。
可愛いやつだ。
「それは違うよ。俺はいつでも全力投球さ。」
「嘘ばっかり。」
俺は朝ごはんだった目玉焼きの乗ったパンを食べ今家を出ないと遅刻すると思い急いで皿を片付け俺はリビングから出る。
「行ってきます。」
そう言って俺は家を出て通学路で学校に行く。
いつものように歩いて駅まで行き電車に乗って学校へ向かう。
電車に乗っている途中で
「よ!・・・。」
「ああ、おはよ。」
いつものように親友でもない友達よりは少し上の友達が話しかけてくる。
「昨日のアニメ見たか?」
「ん?ごめん勉強してた。」
「真面目だなー。ってか・・・って成績良かったっけ?」
「ううん。」
「はは、意味ないじゃん。」
「良いのさ、程々で。」
電車がトンネルに入ると自然と会話は止まる。
暇つぶしに俺は朝思った問を問う。
異世界転生という言葉が夢に溢れ、人々が憧れ想像する、そうなったのはいつなのだろうか?
チート、ハーレム、魔法、身分。
そんなことばかりが異世界転生という言葉と一緒に人々に広がっていく。
だが、、、この異世界転生という言葉には必ずついて回るものがある。
法がしっかりしていない。
命の価値が軽い。
身分によって苦しむ。
格差社会。
俺は異世界転生のライトノベルを読むとこんな事をどうしても考えてしまう。
主人公になれるのは努力し諦めない一握りの人間。
一万人に一人、いや一億人に一人きっとそんなレベルだろう。
そして、適当に生きて適当に勉強して上でも下でもない中を常に取ってきた俺は異世界転生しても結局、主人公の隣りにいるモブA、いや村人Aだろう。
そう思っていると電車はトンネルを抜け停車駅に止まる。
「・・・行こーぜ。」
「ああ。」
気づかぬうちにかなり混雑していた電車から出ようとするが混雑のせいで扉の方に近づいていけない。
電車の扉が閉まる音が聞こえ俺は決死の覚悟でジャンプして電車から降りようとするが人の足に引っかかり顔面からホームの地面にぶつかる。
「何やってんだか。」と友達に言われ顔面の痛みに襲われながら鼻を触るとドロッとした感触がある。手を見ると鼻血がベットリと手についている。
「・・・ティッシュくれ。」
「持ってない。」
「鼻血くっつけるぞ。」
そう言って俺は鼻血のベットリついた手で友達の制服を触ろうとする。
「嘘だよ。ティッシュあるよ。」
そう言って友達はバックのポケットからティッシュをくれる。
「ありがと。」
そう言って俺達二人はホームのベンチに座る。
「遅刻しねーかなー?」
「友達が鼻血流してるってのに遅刻の心配か?」
「嘘だよ。心配に思ってます。」
「ホントかよ。でも俺は遅刻のことより誰かに転んだの笑われてないかが気になるよ。」
「転んだ奴のことを一日も覚えてるやつも居ないだろ。」
「分からないぞ。さっきの清楚系美少女女子高生だってクスクス笑ってたし絶対学校行って皆に言うんだ。」
「アホかお前。この世界で一度も転んだことない人間なんているか?」
「居ないだろーね。」
「そうだよ。居ないんだよ。だから皆に転んで一日覚えてもらうには転んで線路に落ちるくらいしか無いんだよ。そしてお前は小心者。線路に落ちるなんて怖くてできない。ってことはお前が転んで一日も覚えてるやつも居ないってこと。」
「確かになー」
そう言って二人でさっきまで乗っていた電車が行った線路の方を見ていると
(え?何があった?)
一瞬俺の頭は思考停止した。
、、、、、そう女子高生が線路に落ちたんだ。
俺は立ち上がり線路の方を覗くと落ちた女子高生は今すぐにでも立ち上がろうとしている。どうやら落ちた女子高生に怪我はないようだ。
なんで落ちたんだ?と思って女子高生が並んでいた電車に乗る順番の列の方を見ると黒の帽子に黒い服を来た男が
「ざまーみろ!!人のこと馬鹿にしやがって!!」
と大声で言って男は走り去る。
(誰か線路に落ちた女子高生を助けないのか?)と思い終わりを見ると
自分は関係ないとスマホをいじっている奴
何だ?何だ?と野次馬のように騒ぎ立てるだけで女子高生を助けない奴
周りを見て誰か助けないのか?と人に頼ってビビって動けない奴
そしてこの俺も誰かが助けるのを期待してビビって動けなかった。
俺もチキン野郎なのだ。
いつもの俺なら後から何故助けなかったのかという罪悪感に苛まれ自分に言い訳をして三日もすれば罪悪感も薄れ一ヶ月もすれば忘れていく。
そんな人間だったはずだ。
俺という人間は。
でも何故かこのとき俺の体は反射的に女子高生を助けるためか線路に向かって動いていた。
「え?・・・。何してんだ?」
(俺も、え?だよ。
なんで動いてんだよ俺の体。
俺は生まれてから死ぬまでずっと普通の人生だろ。
アニメやドラマみたいな紆余曲折なんかない、まっ平らな人生のはずだろ。
俺はヒーローなんかに憧れてない。
止まれ!!止まれ!!俺の体!!)
そんな俺の思いとは裏腹に線路に向かって俺の足は走り出す。
(こんな普通の俺が人助け?出来るわけ無いだろ。)
「二番電車参りまーす!!」
二番電車は女子高生が落ちた線路だ。
線路を見るとさっきは女子高生に怪我はないと思ったが足を怪我しているのか泣きながら落ちた場所でそのままでいる。
(間に合わない。引き返せ俺。こんなとこで死ぬ俺じゃないだろ!!)
だが俺の体は言うことを聞かず線路に飛び込む。
線路に降りて女子高生の方を見る。
どうやら線路に落ちたのはさっき俺が転んだのを笑った清楚系美少女女子高生だった。
(まさか俺はさっきこの女子高生と顔を合わせたから助けに来たのか?もしくはこの女子高生がモデルみたいに可愛いからか?)
だとしたら俺は本物の馬鹿だな。
こんなにも普通を大切に生きてきたくせに最後は電車に引かれて死ぬ?
あり得ない!!
俺は線路に飛び降りて痛い体を動かし女子高生の腕を引っ張り線路から上がろうとする。
だが
「ブーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!」
という電車の音と
そしてめちゃくちゃ眩しいライトがもう目の前に来ている。
線路の方から叫び声や好奇の視線、撮影しているのかカメラを向けている人も居る。
(は?
ここで死ぬの?
無駄死に?
何してんだか俺は。
こんなとこで死ぬくらいならもっと一生懸命生きればよかった。)
なんて思うが俺は絶対、異世界転生なんかしても普通を大切にするだろう。
きっと俺がこんな事になったのは女子高生を勝手に見た目で清楚系美少女女子高生とか思ったのが悪かったんだな。
俺は死に際でもうしないと誓うのだった。
(死にたくない、いっそ行きたくない異世界でも良いですから
あ、鼻血が出て鼻にティッシュ詰めて死ぬ俺とかまじ恥ずかしいじゃん、いや電車にぶつかるんだからもう原形残んないか)
(神様、もし俺を転生させるなら今度こそ普通の普通の人生をお願いします。)
その願いとともに俺の体は強い衝撃に襲われ意識がなくなる。