9.幕間 ~街中での救世主達 ユーサの遺志を継ぐ者達~
(・∀・){注意!! 戦闘シーンもあるので、グロテスク表現があります。 あと間話なのにちょい長いかも。
ゲスト回
ユーサの住む地域で都市の中枢を担う場所、中心都市。
和風の街には不釣り合いな、西洋風の巨大な教会がある。
《《 ピィイィィィーー!! ピイイイィィィィィーー!! ピイイイィィィィーーー!!! 》》
避難警報が、教会から街中に向けて響き渡る。
《《 『結界石』破損! 『結界石』破損!! 》》
『結界石』__ダイヤモンドよりも硬く、簡単に壊す事はできない数十メートルはある巨大な結晶石。
《《 『加護』の機能低下!! 『加護』の機能低下!! 》》
教会の信徒達の日々の祈りが『結界石』を通して神に届き『加護』を得る。
その『加護』は、悪魔や魔物達が『結界石』の半径数十キロメートルは近寄る事ができない程の効果を持つとされている。
『結界石』のお陰で、人々は平穏に暮らしていた。
……しかし。
《《 悪魔! 悪魔!! 魔物! 魔物!! 侵入!! 侵入!! 》》
「いやああああぁぁあぁーーーー!!!! 助けてええぇぇーー!!」
「どうしてここに悪魔が!!? 教会は何をしてるんだ!!?」
「死にたくない!! 死にたくない!! 誰かあ!! だ……ああぁぁー!!」
『結界石』が『破壊』されたことにより__人々の平穏は崩れた。
都市内に大量の悪魔が侵入し、市民の断末魔が響きわたる。
悪魔が、魔物の群れを引き連れ、人々を襲い始めた。
殺戮と惨劇を繰り返し、街は混沌と化した。
悪魔__黒いオーラを纏い、人々の内臓と魂を喰う存在。
身体と精神を破壊して生きたまま地獄の苦しみを味あわせる怪物。
そして、悪魔は通常の物理攻撃では死なない。
【特殊な力】でしか祓う事ができない。
【特殊な力】が無い人間に取って、悪魔は絶対的な恐怖。
悪魔に出会う事は……『死』を表す。
その為、市民を守るのは……【特殊な力】を持つ、教会の選ばれた天使や一部の信徒、ギルドの戦闘員達である。
「現在、教会の『結界石』の修復に、多くの信徒達が祈りを捧げている。それまで手の空いた者は『小結界石』のある避難所まで市民を誘導してくれ!!」
「しかし、避難所の『小結界石』がある加護の範囲に悪魔達が侵入して、加護を乗り越えようとしている!! 何故だ!!?」
「神の加護に耐性がある上級悪魔がいるのかもしれん!! そいつを倒せば悪魔達も諦める筈だ!! やむを得ない。【秘術】を持つ戦闘員の手も借りなくては……。 伝令は、ギルドに緊急クエストの要請を!!」
教会内で、上層部の信徒達が連携して、市民を悪魔達から解放しようと試みている。
一分、一秒を争う緊張と不安が続いた。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
そして……。
教会の信徒達が市民を誘導している避難所。
教会の近くにあり、そこには数百人分の西洋墓標が建てられている。
幾人もの魂が安らかに眠る場所。
しかし、現在。
そこは、教会の信徒と、悪魔の戦場と化していた。
「悪魔達をこれ以上避難所に近づけさせるな!!」
「一人では街灯レベルの光の【奇跡】でも、数人並んで放てば威力が出る!! 聖なる光を唱えられる者は並べ!! 【奇跡】を詠唱するぞ!!」
《《《 ー 心から 光を輝かせ 闇から守りたまえ ー 》》》
数名の信徒達が悪魔達と対峙し、前に出て呪文を唱える。
《《《 ー 〇 呪文 ●奇跡 ◎聖光 ー 》》》
「「「 AAAAーーーKKKKUUUUーーー!!! 」」」
数名の修道服を着た信徒達が持っていた十字架。
その十字架に埋め込まれた宝石からソーラービームのような光が放たれる。
連携を取り、協力し合い、悪魔達を祓う。
しかし……祓っても、祓っても。
「何故こいつ等は加護の範囲内に入ってこれるんだ!!?」
「いったい、コイツらはどこから現れるんだ!! キリがないぞ!!」
下級悪魔の群れが何処からともなく、墓場に現れる。
終わりの見えない戦闘が続く中。
【特殊な力】である戦闘用の【奇跡】を持った信徒達が消耗したところで、形勢が逆転する。
「「「 AAAAAAーー!!! 」」」
「「「 ぐあああぁぁぁーー!!! 」」」
悪魔達が、信徒達の隙をつき一斉に襲いかかった。
信徒達は、次々と命を落とした。
「「「AAAAーKAッKAッKAッKAッKA!!!」」
___残る邪魔者は、あと少し!!
……と聞こえてきそうな、悪魔達の下卑た笑い声が広がる。
勝利に満ちた雄叫びだった。
その奇声に、瀕死の状態で倒れた信徒達が死を覚悟して、絶望する。
しかし……。
《 ー 〇 呪文 ●秘術 ◎召喚 ー 》
そこへ……一人の修道服を着た少年が悪魔の方へ走り駆け寄る。
《 ー ネコ忍者!! ー 》
少年が、腰につけていた瓢箪を口先につけながら呪文を唱えると、瓢箪から白い煙が現れて、煙が忍び装束を着た大きなネコの形に具現化する。
「やれ!! 三毛蔵!! みだれひっかきだ!! 」
「フシャー!!!!」
白いオーラをまとった、忍び装束を着たネコが、大きな声で威嚇しながら鋭い爪を立てて襲い掛かる。
「ニャニャニャニャニャー!!!」
「「「 AAA!?!? KUUAA--!! 」」」
突如現れたネコの攻撃に驚き、避ける事もできず、悪魔達の体に『白い傷痕』が浮かぶ。
「アユラ!! ガケマル!! 出番だ!! 傷痕の箇所を狙え!! 悪魔達が三毛蔵に意識が向いている今にうちに!!」
「オトキミ様! 承知!! 狙い打ちます!! 」
「ま、か、せ、ろ」
オトキミと呼ばれた修道服を着た少年の後ろから二名。
弓矢を持つ陰陽師の格好をした美青年アユラ。
太鼓を叩く太めのバチを持った片言のマッチョ忍者ガケマル。
その二名が次々と悪魔の『白い傷痕』を弓で射抜き、バチで叩くことで悪魔達は絶命し、灰となっていった。
それを、ひたすら繰り返して、数分が経過した。
「う……嘘だろう……あの少年は確か……【奇跡】を授からず教会から追放された、領主ズー家の落ちこぼれじゃないか?」
「私達、信徒よりも……悪魔討伐数を、上回っている……!?」
先程まで、信徒達の死者が数名出るほどの死闘だった。
しかし、後から現れた少年達の悪魔を倒した数は、あっという間に信徒達の討伐数を上回った。
「おいおいおいおい!! 教会の信徒諸君!! 本業である君達が、ギルドの落ちこぼれ修道者に負けてんじゃないぞーーー!! 立てーーー!! 悔しくフニャフニャフニャフニャ」
「オトキミ様。興奮して最後何言っているのか、わかんないですよ」
「お、ち、つ、い、て」
先程まで死期を悟り戦意を喪失していた信徒達の視線が、オトキミと呼ばれた少年に集まる。
オトキミと呼ばれた頭巾のウィンプルをかぶった、瞳が見えないほどの薄黄色の長い前髪をした少年。
修道服と着物が混ざり合わさったような和服。
百六十センチ程の小柄な身長の教会のシスターのような恰好をしている。
「落ちこぼれ!? あの少年は、希少な獣召喚秘術士ではないかっ!? 教会からギルドの荒くれ者に落ちこぼれた奴が、何故!??」
「なんだなんだ!? 教会側が呼んだんだろうがよ!! 普段ギルドを下に見てて、都合の良い時だけ猫の手でも借りたくなりやがって!! 猫の手の方が、教会側より役に立ってるぞ!! どうしたどうした!!」
両腕を組み、大きな態度で信徒達を見下ろし叫ぶ少年。オトキミ。
召喚した忍者の猫が、悪魔のヘイト稼ぎを終えて、オトキミの肩に乗るように戻ってきた。
忍者の猫も、オトキミの肩で器用にも二足歩行で立ち、飼い主の真似をしていた。
「落ちこぼれて腐っていた俺は、ユーサのアニキに救われた……。信じていた教会の神ですら、救ってくれなかった俺を!」
オトキミが何処からか、お祓い棒を取り出し悪魔達に向ける。
「だから今、俺にできる事は! ユーサのアニキの代わりに市民を守る! アニキがいなくても! 意志を継いで! 強くなると誓ったんだ!!」
お祓い棒の紙垂が、稲妻のようにジグザグに揺れる。
「だから信徒達よ!! 諦めるな!! 生きろ!! そして!! 戦え!! 教会側が死んだら誰が市民を守るんだ!!?」
オトキミの鼓舞に震えたのか、諦めて倒れていた信徒達が顔を上げる。
「オトキミ様。流石です。実際に戦っているのは召喚猫と俺達なのに」
「え、ら、そ、う(偉そう)」
「偉そうで何が悪い! 軍師や司令塔が強い必要はない! 自分を強くするのではなく、周りを強くするのも、また強さ! ステータスなのだ!!」
「オトキミ様。その言葉も自分のではなく、ユーサのアニキのセリフですよね?」
「パ、ク、リ(真似)」
「うるさい!! 偉大な人の言葉はなぁ! 語り継がれるものなのにゃんフニャフニャ」
悪魔達を前に、あーだ、こーだと緊張感のない会話を続ける三人。
悪魔達が三人に気を取られている中、信徒達は気を取り直したのか。
(倒れている自分達が、こんなふざけた連中に__負けているのか?)
……と負けじと立ち上がる信徒が増えてきた。
「オトキミ様……。墓場の方に強い魔力反応があります。俺達は、そっちに行った方が良いかもです……」
「お。本当か、アユラ。もう、避難所の悪魔は、三毛蔵が傷をつけている残り僅かの下級ばかりだし……どうしよう……」
「ま、か、せ、る」
ボディービルダーのような男らしい腕をしたガケマルが、立ち上がった教会の信徒達を指さした。
「なるほど。そうか! おい、教会側!! 立ち上がったなら、ココは任せるぞ!! 【奇跡】の力が尽きても『白い傷跡』を叩けば、悪魔を倒せるからな! じゃあな!!」
「__っ!!? おい! 小僧共!! 止めておけ!! そっちは今……!!」
何かを言いかけた一人の信徒を無視して、オトキミ達は教会の信徒達に残りの下級悪魔の処理を任せ、別の場所へ急いで移動した。
。。。。。。。。。。。。。。。
三人が走る事、数分が経過した。
「アユラ。魔力の反応が高くなっている場所っていうのはどこだ?」
魔力探知をしながら、先頭を走るアユラに向かってオトキミが確認をする。
「オトキミ様。多分……こっちは……避難所の近くの奥。 墓場……? ……の……奥?」
「な、ん、で、? (そ、ん、な、ト、コ、に?)」
「わからない……。とにかく行ってみよう。もの凄い魔力反応だ……」
先頭を走るアユラと並走するように並ぶ三人。
「どのぐらいのレベルなんだ。アユラ? ……ん?」
「ど、う、し、た、?」
横から顔を覗き込むオトキミ。
質問に対して返答がない、様子のおかしいアユラ。
オトキミの質問から1分以上の沈黙が続き、アユラが答えた。
「オトキミ様。詳しくは、わからないですが……、コレは……今まで見たこともない。感じたこともない魔力です……」
口にする事も恐ろしいのか、声が震えている。冷や汗も出ている。
帰ったら叱られるかもしれない。
……とおびえて、家に帰りたくない子供のように足取りが遅くなるアユラ。
「もしかしたら……ユーサのアニキを……」
__その時だった。
「あああああぁぁぁーーーー!!!!!」
オトキミ達の前方。
遠くの方から大きな声と、何か大きな物体が三人を通り抜ける強風を感じた。
そして……。
グシャッ!!
通り過ぎた物体が、三人の後方で、実がたっぷりと入った果実が潰されたような音を立てた。
そして、前方の数百メートル先。
四メートル以上の巨大な悪魔が現れ、奥にいる数人の信徒達を次々と惨殺していった。
「__っ!? ぶ、き、の、か、ず!」
「おいおいおい、あの悪魔、腕が四つあるぞ! あれではフニャフニャ」
「オトキミ様、落ち着いてください。あれでは……接近されたら、攻撃を防げない……。しかも……動きが速い!!」
大きな悪魔の攻撃を避けようとした信徒が、大きな槌により果実のように潰された。
潰されただけではない。
別の信徒は、頭を真っ二つに切り裂かれた。
また別の信徒は、体を切り刻まれた。
心臓を貫かれた者もいた。
大きな悪魔の四つの腕には、武器がそれぞれ四つ。
大きな剣、槍、斧、槌。
その四つの武器が、血で真っ赤な色の武器に変わった。
「で、か、い」
「おいおい、噓でしょ。嘘でしょ。アレって、上級悪魔より強そうな、もっと上の……ふにゃふにゃふにゃ」
「オトキミ様。ユーサのアニキを、倒したかもしれない……という魔力反応。噂の階位悪魔。……かもしれません」
アユラの言葉に、全員が同時に動きを止めた。
「だ……だからって! ここで逃げていられるかよ!!」
固まった三人の内。
__リーダーである自分が動かなくては!!
っと思ったのか、一目散に大きな悪魔へとオトキミは立ち向かった。
「AAAAAAAーーーーーー!!!!!」
数分後、そこには瀕死状態のオトキミ達が、絶体絶命のピンチを迎えていた。
(・∀・){オトキミ、アユラ、ガケマルは。某ABCの曲をカバーされた、稲妻のようなジグザグしてる人達がモデルです。