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D/L Arc 魔転生 ―召命を越える月虹― D_ / Luna Another world Reincarnation Calling …en Ciel  作者: 桜月 椛(サラ もみじ)
第2章 カーテン・フォール編

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81/88

81[2-15].オレンジ色の悪魔人(デビルマン)

長いので分割しました。



「……いい気になるなよ。雑魚召喚術師が」


 橙の悪魔が嗤う。召喚した黒い獣の影が、神社の床を覆った。

 毛並みは闇そのもの。目は獣のものではない。

 悪魔特有の、歪で、数の合わない形。それが幾つも瞬いていた。


 その瞬間、オトキミは歯を見せて笑った。


「雑魚かどうかは、これからわかるよ」


 軽口で空気を裂きながら、指先を小さく鳴らす。

 ギアドから受け取った、新しい秘術道具に触れていた。


 片隅に座り込んだケイが、息を飲む。

 腕の中には、血に沈んだジルの身体。声にならない声が、喉の奥で震えていた。

 最初は出血が止まらなかったが、少しずつ血の流れは止まり始め、顔色も良くなってきている。

 ディアの薬の効果が、胴体が切れても出血を抑える。と聞いていたのが本当だったと驚く。


 しかし、ジルが絶体絶命の事態であることは変わりない。


 オトキミは一瞬だけ、そちらへ視線をやる。

 守るべきものがあるとき、逃げ道は消える。前を見るしかない。


「アユラ。ガケマル。準備はいいか?」

「オトキミ様。ギアドさんの新しい秘術道具と……自分たちを信じます」

「ま、か、せ、て(鍛錬は、何度もした)」


 アユラは息を整え、弓を握り直した。

 ガケマルは短く頷く。


 ギアドが作った新しい秘術道具。

 それは二段構えだった。

 一つは、オトキミの召喚数を増やす仕掛け。代償は大きい。秘力の消費が激しく、枯渇を起こせば立っていられない。

 もう一つは、アユラとガケマルの武器へ、召喚獣の牙や爪の性質を()()()()仕掛けだった。


 悪魔には、普通の刃も殴打も通らない。

 だから今までは、オトキミの召喚獣が攻撃した箇所を狙うしかなかった。

 その歯がゆさを改良するために、オトキミたちは考えギアドに相談し、武器に召喚獣の秘力を【エンチャント】できる形にした。


 ただし欠点もある。

 一度、召喚獣を現界させ、武器にストックする手間が要る。

 さらに召喚現界時間が短くなる分、ストックの頻度が増える。

 オトキミの負担は、確実に重くなる。


「な!? なんだコイツらの連携は!? 秘術の通らない武器が……何故……GHu!!」


 橙の悪魔は動揺した。

 黒い獣の腹へ、橙の悪魔の体へ、刃と牙が入る。


 秘術の無い武器は効かない。

 そう思い込んでいた。

 その傲慢が、油断を生み。油断が、傷になる。


 黒い獣が咆哮し、闇が逆流するように揺らいで消える。


「UGOッ!!?」


 影が歪む。黒い獣が、崩れた。

 闇の毛皮が霧のように散り、足元へ落ちる前に掻き消えていく。


 オトキミは息を吸い、咳き込みかけて、喉の奥で集中を飲み込んだ。

 魔力の消耗で、本体である人型の橙の悪魔の動きが鈍い。


「よし……本体だ。今なら落とせる!」


 畳を蹴る。

 召喚獣たちが前へ出る。アユラも、ガケマルも同時に動き、三人の噛み合いが増していく。

 悪魔へ猛攻。連打。連携。

 長年積み重ねた失敗と工夫が、ようやく形になった。

 

 ーーその瞬間だった。


 ブルブル……。


 アユラの魔力探知の秘術道具が震えた。


「!? オトキミ様! 離れてください!!」


 アユラの声と同時に、オトキミが動きを止める。


「――!? 痛っ!!」


 橙の光線がオトキミの利き腕に、かすかに触れた。

 服の上から血が滲む。

 悪魔との境界を線引きするように遮った光線。焚き火の火の粉みたいに、視界の端で橙が跳ねた。


 次の瞬間。別の部屋から、橙の影が二つ増える。

 そして、聞こえたのは笑い声だった。


「フンッ! 何やってんだ? こんな光線も避けられねぇ。そんな雑魚にやられるほど俺様の部下は雑魚なのか?」


 声の主は、三体の中で一番偉そうに立っていた。

 人間の体格に、橙が絡みつく。

 だがその橙は、ただの魔力じゃない。何かを、借りている気配。


 オトキミの背筋が、ぞわりと冷えた。

 この感じは、知っている。

 悪魔に取り憑かれた人間。


 ーー悪魔人デビルマン


 部下らしき悪魔が膝をつく。


「……申し訳ございません。◯◯様」


 もう一体が慌てたように笑って取り繕う。


「まぁまぁ、コイツは俺より弱いんで見逃してあげてくださいよ。◯◯様。でも、標的のジルとかいうジジイがくたばってるんで、それはコイツの手柄みたいなんで許してやってください」


 「名前」の部分だけが耳に届かない。音が抜け、空白になる。

 黙秘の術。呼称を奪う魔力が、そこにあった。

 しかも喋り方が人間と大差ない。

 高位の証。


 ケイが小さく震え、唇を噛む。

 オトキミは笑って見せた。笑うしかない。

 笑わなければ手が止まると、自分が一番知っている。


「増えたなぁ……。まぁ、こっちは三人。あっちも三人。お見合い(戦い)にはちょうどいいか」

「オトキミ様。悪魔とのお見合い(セッティング)なんて、レベルが高すぎます」

「帰り、たい(こんな合コン、嫌だ)」


 場違いな言葉で緊張を整える。

 だが喉が鳴り、握る武器に汗が滑る。


 橙の悪魔人が三つ。絶望の形が、こちらへ歩いてくる。


「おい。状況を説明しろ」


 頭の悪魔は、オトキミたちを眼中に無いように顎を上げ、ジルを殺した悪魔へ嗤いかけた。


「……ということで……、ここにユーサ・フォレストはいないみたいです。◯◯様」

「……本当にいないのか?」


 上へ報告する声。

 返ってきたのは、短く、冷たい確認。


 頭の悪魔は考え込むように呟く。

 横で部下が首を傾げる。


「? どういうことです?」

「わざわざ貴重な隠蔽の秘術道具を使って、その娘だけを隠すのか?」


 視線が室内を巡る。ケイとジルの位置。

 そして。


「その娘が聞き分けのない子供ならまだしも、思春期くらいの娘だ。せっかく隠してたのに飛び出してくるバカとは思えん」


 消えたはずの()()を嗅ぎ当てる犬の目。


「逆に、()()が中にいるから、あえて出てきた小賢しさも感じる」


 ケイの肩が跳ねた。わかりやすい動揺。

 その一瞬で、オトキミたちは理解する。


 ――ケイちゃんが出てきた理由。

 ――ディアさんと、ユーサのアニキを守るために。

 ――あえて、わざと。


 三人は目線を交わす。


「……フン。当たりのようだな。その娘を捕らえろ。尋問するぞ」

「「ハッ!!」」


 二体がケイへ踏み出す。月光が橙に飲まれる。


 オトキミが間に割って入った。


「おいおい。無視は良くないな。まだ俺たちがいるぜ」


 アユラが半歩横へ。ガケマルが前へ。

 三人がケイの前に壁を作る。


 頭の悪魔が鼻で笑う。


「虫ケラは眼中に無い。シカトされても仕方ねぇんだよ。雑魚がイキリ立つな。

 ……おい、俺様が手を出す事か? もう一度チャンスをやる。殺せ」

「「ハッ!!」」


 二体が襲いかかる。

 だが三対二。しかも悪魔側は、先ほど戦い、消耗した直後。

 こちらはギアドの道具で流れを作ったばかり。


 オトキミは笑いながら、視線だけを鋭くした。


「まず、さっきのヤツから!」


 狙いを揃える。

 召喚獣が裂き、アユラの矢が動線を潰し、ガケマルの棒が秘力を纏い叩き割る。


「UGOッ!!?」


 最初の一体が倒れた。橙と黒が土に沈むように消える。


 残りの一体が歯噛みする。


「……クソ!! さっき、〇〇様の攻撃を受けておいて、何故動ける!?」


 オトキミは肩をすくめる。


「さぁ? 虫ケラだから、わからねぇや」


 悟られないように、ディアから受け取っていた傷薬をさっきの隙に塗り終えていた。

 腕の痛みは残る。だが動ける。前に出られる。


「!? GUHUッ!!? この雑魚召喚術師なんかに!!??」


「おいおいおい!! どうしたどうした!!」


 怒りで動きが単調になっていることに、悪魔は気づかない。

 速いだけの刃は読みやすい。読みやすい刃は連携の餌。


 最後の一体も倒れた。


「人の不幸を望むような悪魔に、負けるかよ!!」


 橙が途切れ、境内の空気が一瞬だけ軽くなる。


「……はぁ、雑魚共が。しかたねぇなぁ」


 頭の悪魔が、ようやく前へ出た。


 足取りが違う。


 近づいただけで喉が乾く圧に、三人は身構えた。


デビルマン 僕の好きな某バンド名の由来になった作品に関わる、あの有名な漫画

Arcに関わる作品は、色々とリスペクトを込めて登場してきます。

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