72[2-6].魔法:復活【スペルマジック リ・バース】
66話 リ・バース編の最後の続きで
66話の最後の文章も、修正してます。
ゆうべはおたのしみ、だったと思うが――今からは本腰を上げて、真面目に話をしよう。
ユーサ。
君には、死んでもらうわけにはいかない。
【復活】してもらう。
分かっていると思うが、ここはエデン。死後の世界だ。
さっき「死んだよ」と言ったのは半分冗談。
君はいま仮死状態なんだ。
理由は簡潔に。
過労、そして秘力と魔力の枯渇だ。
ん?
「……今さらですが、この異世界で秘力の枯渇が死に直結するのは、どうしてですか?」
イメージしやすいように言い換えれば“血液”だね。
人は血液を三割ほど一気に失えば危険域に入る。
それが枯渇したらどうなる? 想像できるよね?
秘力も同じ、魔力も然り。
しかも、どちらも血より回復が遅い。
外では君の肉体が病室のベッドにあり、こちらには《魂としての君》がいる。
肉体だけが整っても、こちらの魂が釣り合わなければ戻れない。
だから、ここで君自身が
秘力と魔力を生み、整え、扱う感覚を取り戻す必要がある。
血は内でも外でも補えるが、秘力と魔力はそう簡単ではない。
ユーサ。
君という車は、普通の人間と違い、特殊な悪魔だからね。
秘力と魔力という、二つの車輪は同時に回らなければならない。
もう一つ、念のために。
仮死中の身体は無防備だ。外で何者かに殺されれば、その時は本当に終わる。
そこは仲間に託すしかない。
さて、その前にまずは労わせてくれ。
君は【召命】どおり、黒冠位悪魔サキュ・B・アークを打ち倒し、【死の灰】をひとつ得た。
特別に【新しい神秘術】をひとつ授ける。
いわゆるレベルアップ、というご褒美だ。よく頑張った。
君の指先に仕込んでおいた。
これで、次の黒冠位悪魔にも対抗できるだろう。
………多分ね。
ん?
「最初から、強い【神秘術】を全部授けてくれれば良いじゃないですか!」
何を言っているんだ君は?
ただ、授けたからといって扱えるわけでもない。
それに、一人の人間が神秘術をたくさんは扱えない。
君が特殊な秘力を持つ魔族。
秘魔だから、複数持てるような器なんだが、いきなりパンパンに詰め込んだ器は、器が割れる。
割れないように、少しずつ授ける。
容量に合った器になってからね。
そのため、少しずつ段階を踏む。
階段をいきなり駆け上がると大怪我をするようにね。
だからまずは、秘力と魔力を生み、整え、扱う感覚を取り戻す必要がある。
あと、黒冠位悪魔サキュ・B・アークを打ち倒し、【死の灰】をひとつ得た、と言っても。
正確には、ザキヤミの最天使長ザドキ・エルの【秘宝石】に封じられていて、君の手元にはない。
けれど、彼女を【地図にない場所へ(ウィル)】でここへ送り、結果として連携は成立している。
彼女にも神から【召命】を授けてある。
契約上、神の側――つまり君の味方だと考えてよい。
……ただし、教会が彼女の【秘宝石】を狙う可能性は高い。留意しておきなさい。
「ザドキ・エル最天使長には、どのような召命を授けられたのですか」
それは言えない契約だ。
君の召命も他の誰かに教えることができないように。
だが先手は打ってある――とだけ伝えておく。
さて、話を戻すが、まずは秘力と魔力のコントロールの話だ。
今までは、秘力の陰で無自覚に魔力を動かしていたのだろう。
今はその両方が底をついている。
内側の衝動が理性を振りほどけば、君は器に呑まれる。
その機会は今後、何度も訪れると思え。
だから、対話だ。
ねじ伏せるのではなく、歩幅を合わせる。
君自身と、器と協働して【生まれ変わる(リ・バース)】必要がある。
「……僕に、できるでしょうか」
それでいい。弱さは方向を示す。
いったん退いても構わない。
準備が整い、振り返れば
そこが《越える壁》じゃなく
《越えられる段差》になる。
あと、覚えておくといい。
《できる・できない》ではない
《やるか・やらないか》
ただ、それだけだよ。
――神様の言葉を聞いた瞬間。右腕が疼く。音ではない“何か”が視界の奥でほどけ、細い線へ変わる。白
い闇に、文字が浮かんだ。
――「行かなくちゃ」――
――喉がかすかに鳴る。声は出ないのに、意味だけが脳に刺さる感覚。
――「皆が 待ってる」――
「……見えます。声ではなく、文字で……まっすぐで、痛いほど胸に刺さります」
それが《器の意思》だ。
受け取ればいい。
いまは一方通行で構わない。
君が歩けば、いつか対話になる。
――胸骨の裏で黒い渦が回り、中心に白い芯が灯る。息を吸うたび芯は膨らみ、吐くたび芯は細く硬くなる。右の掌に“重さ”が宿る。秘力の小さな芽と、魔力の細い糸が触れあい、擦れ、火花の代わりに体温を分け合う。
――「あの場所へ」――
「……怖いです。自分を奪われそうな……夜の暗闇の中みたいに、不安が騒いで……逃げたくなります」
――「ボクは 行く」――
「でも、逃げても……前世のような事には……したくない」
その自覚を忘れるな。
君は沢山の失敗をしてきて、何度も挫けて、そのたび立て直した。
「もう無理、歩けない」と、何度も感じた人生だろう。
だから、また一歩だ。
ここでやることは二つ。
ひとつ、《秘力と魔力を生み、整え、扱う》感覚を、身体に取り戻す。
もうひとつ、《悪魔の器》と歩幅を合わせ、対話できるようにする。
――右腕の疼きが、規則に変わる。手首、肘、肩、背骨、脊柱をのぼった熱が後頭部から落ち、胸の芯へ戻ってくる。車のエンジンが動くように、ゆっくり加速を生み出す感覚。
「……やってみます。ですから、少しだけ……一人にしてください」
いいよ。
神は魔法を教えられない。
鍵は《器》の内側にある。
君の身体が、君に教える。
神はね、ユーサ。
助言や啓示はできても、見届けるだけなんだ。
神が、全てを叶えるわけじゃない。
君は君を手放さない。
《悪魔の器》の望みは、帰ることだ。
それを、最初の対話にするんだ。
怖がっていい。
その疼く手を抑えるんじゃない、掴むんだ。
足は君が出して、リードしてあげなさい。
「……はい。僕も帰りたいから、やってみます」
それでいい。
【走らなくちゃね】……と言いたいが、まずは歩け。
ここまで来たように。
足が動くのであれば……次の一段も、上がれる。
だから、まずは歩け。
走るのはその次だ。
何度も言うが、
《できる・できない》ではない《やるか・やらないか》
ただ、それだけだよ。
これは、君の《試練》だ。
乗り越えて、【復活】するんだ。
皆が、君を待っている。
そして、最後に忠告をひとつ。
走らなくても良いが、早く行動に移して、急ごう。
ユーサ。
君だけ時間がないわけではない。
時間は平等だ。
もし、君が【復活】しても、
大事な人がいなくなったら
後悔するのは君だということを、忘れないことだよ。
YOU GOT RUN(走らなくちゃ)
ですが、先ずは歩く事。
生まれ変わるとは、どういう意味か
ずっと待っているから、あなたの答えを待っている。




