66. 「ゆうべは おたのしみ でしたね」 ー DEAD or ALIVE ー
第一章最後の話です。長かった……。
ふざけた話かもですが、最初からこの話で第一章が終わるのは、決まっていました。
──さっきの夢は……。
焚き火の灯り、星の仲間たち、あたたかな夜。
──あれは、僕の中に眠る、ボクの記憶。
その残光がまだ、まぶたの裏に焼きついている中、頬にひとつ、ひらりと何かが落ちた。
「……花びら? ……桜の?」
ゆっくりと目を開けると、薄紅の桜の花びらが、頬から鼻先へと滑り落ちていた。
先ほどの夢で、目覚める前の桜の花びらと重なる。
約束と仲間のぬくもり。
そして、その柔らかな感触に驚いて起き上がり、辺りを見回す。
──僕は、外にいる?
静寂が支配する世界。地面には色とりどりの花々が咲き乱れ、夜空には一つも星がなかった。
けれど、ひときわ大きな月が高く浮かび、その月明かりが、空に淡く揺れる【月虹】を浮かび上がらせていた。
見たことのある風景。それも、死んだ時に見た。
──ここは……エデンだ。
胸の奥が、ひゅうっと冷える。
ここは“死後の世界”。
── 僕は、また、死んだのか?
「……嘘、だろ」
突然の寒気、冷や汗。
呆然と立ち尽くす僕の背後から、どこか呑気で、人を小馬鹿にしたような声が響く。
「おやおや、ユーサよ。死んでしまうとは何事か!」
Deja-vu(既視感)。
聞き覚えのある言葉に振り返ると、白銀の髪に微笑を湛えた神。
ジャンヌ・D・アークが、神々しい姿で立っていた。
その目は、いつも通り人をからかうように細められている。
「……え? なんで、神様がここに……? 僕は……死……?」
「うん。死んだよ、君」
あまりにもあっさりと言われて、思わず言葉を失った。
「……なんで、また……」
膝から崩れ落ちる感覚だった。
まだ召命は終わっていない。
家族と過ごすと誓ったばかりなのに。
「何を言っているんだ、君は?
“病み上がり”の復活した身体で、無茶をしすぎたんだよ。
普通の人間だって、風邪から復活してすぐに全力疾走はしないだろう?」
神様の語調には、呆れが滲んでいた。
「でも君は? 死から蘇った直後に、何をした?」
その問いかけに、怒涛の記憶が脳裏を駆け巡る。
──家族の危機。悪魔との連戦。
──異端審問。神秘術の濫用。
──黒冠位悪魔:サキュ・B・アークとの死闘。そして、ザドキ・エルの救済。
……それに加えて、不眠不休の果て、最後には──
「奥さんに血を吸われ、夜の営みで精魂尽き果てただろう? 復活直後にするスケジュールじゃないよ」
「えっ……!?」
顔が熱くなる。言い訳の余地がまったくない。
「死因は……過労と……出血性ショックと……『腹上死』だね」
「エッ!?!?!?」
『腹上死』……性交中に突然死すること。性交死とも言う。
「今頃、君の身体は病院に運ばれてるだろうね。
死因を告げられて、君の奥さんが顔を真っ赤にしてると思うよ。
ぷー! くすくす!!」
──この人。。いや、神様なのに、笑ってる……。
「まあ、生死の境。窮地に立つと生命体は遺伝子を残そうとするから、君の行動は理にかなってる。
……間違っているとすれば──あ、そうか!」
ジャンヌはひとつため息をついたかと思うと、何かに気づいたように、にやりと唇を歪めた。
「 ゆうべは おたのしみ でしたね 」
神様が、何を言いたいのか理解した僕は、言葉を失って天を仰いだ。
そこには、大きな月と、夜空に淡く架かる【月虹】が、静かに浮かんでいた。
召命の途中で力尽きた僕の命は、再び“死”という名の運命に運ばれた。
【月虹】は──呆れ顔で、僕を見下ろしている。……気がした。
第一章を書き始めて、約二年の時を経て、やっと終わりました。
ふざけているような話ですが、大真面目に書いてます。
そして、この作品。
初心者あるあるなのか、無駄に長編にして全7or8章まであります。
できるだけ早く終わらせて
作者の伝えたい事を『伝えたい人』に作品を通してやり遂げたいと思います。
先ず、第一章
「復活しても、慌てないで。とある神は、走らなくちゃ、と言ってますが、『歩きましょう』」
まだまだ一章中に書きたい内容があったのですが、二章でも問題なさそうなので、後ほど書きます。
とりあえず。。やっと書き終えたーー!!!!やったーーーーー!!!!!!
……続きを書きます。第二章のイントロは、本日中に投稿します。




